こんにちは。行政書士のS.Kです。

今日は種類株式の戦略的活用法の第2回目として、属人的株式の意味や利用の仕方についてご説明していきたいと思います。

【参考 オーナー企業のための事業承継】

オーナー企業のための事業承継vol1「事業承継の必要性と円滑化のための法制度とは?」
オーナー企業のための事業承継vol2「後継者選びのポイントとは?」
オーナー企業のための事業承継vol3「後継者選びのポイントは?その2」
オーナー企業のための事業承継vol4「建設業界に学ぶ許認可事業の事業承継って?」
オーナー企業のための事業承継vol5「会社の現状を把握するポイントとは?」
オーナー企業のための事業承継vol6「企業の事業承継の際の法律上の問題点とは?
オーナー企業のための事業承継vol7「家族の絆を守る後継者以外への配慮とは?」

【参考:種類株式シリーズ】

オーナー企業のための種類株式活用戦略vol1「種類株式とはどのようなものか?」


◉株主平等原則


属人的株式についてご理解いただくにあたっては、まず、会社法が掲げる株主平等原則からご説明する必要があります。
株主平等原則とは、株主は法律上持ち株数に応じて平等に取り扱わなければならないという原則をいいます。法律的には会社法第109条第1項に書かれている原則です。

株主平等原則は会社制度を成り立たせるために、どうしても必要な根本的な原理です。
自由な社会のために民主主義が必要なように、株主平等原則が会社制度の維持のためには不可欠となります。といいますのは、会社は出資者を募ってその資金で運営・利益を出すことを目的として作られる団体ですので、出資に応じて発言権(議決権)や利益配当請求権(剰余金の配当請求権)が認められなければ、会社制度に魅力を感じず、会社に対して出資する人がいなくなってしまう可能性があるためです。

つまり、資本多数決という、出資が多い人の方が発言権や利益を受けることができるという仕組みが会社制度を成り立たせる根幹になっています。


◉例外としての属人的株式


ところが、会社法の第109条第2項は、株主平等原則の例外を認めています。つまり、株式を公開していない会社は、定款で定めることにより、出資の数にかかわらず、株主を人によって特別扱いをすることを許容しています。
(なお、株式を公開していないとは、会社の承認がなければ部外者に株式を譲渡することができない会社をいいます。会社の定款や登記事項証明書に「当会社の株式の譲渡については、会社の承認を必要とする」などの記載があれば、公開していない会社です。日本の会社の99%は非公開の会社です。)

特別扱いとは、例えば、「当会社の社長は1株につき議決権100個を持つ」などを定款で定めることにより、1株しか保有していなくとも法律上は100個の議決権を認めるのです。
このような、保有株式数にかかわらず、個人的に異なった取り扱いを認めるものを属人的株式といいます。属人的株式は株主平等原則の例外ということになります。