「給与明細」どこを見ればいいの?
給与明細で引かれるのは、「厚生年金」だけではない。その他に「健康保険」、「介護保険」、「雇用保険」、「所得税」、「住民税」などがある。給与は「全額支払いの原則」があるので、勝手に天引きすることは許されないが、税金や社会保険料という国の財政にとって重要な財源を取り損なうことがないよう例外的に、法律で源泉徴収することが定められているのだ。
給与明細の様式は会社によって異なるが、概ね内容に違いはない。支給項目としては、「基本給」と「時間外給与」があって、その他「役職手当」や「家族手当」「住宅手当」「通勤手当」などの各種手当があればそれが加算される。支給項目から、控除科目を差し引いたものが手取りとなる。次に控除項目の内容について見ていこう。
1. 厚生年金保険
厚生年金保険の保険料率、標準報酬月額によって決まる。標準報酬月額とは、4月、5月、6月の給与の平均額によって決まる。たとえば、4月が22万円、5月が24万円、6月23万円ならば、(22万円+24万円+23万円)÷3=23万円で、標準報酬月額の16等級になり、24万円となる。
保険料は労使折半になるので、このケースでは、24万円×18.3%÷2=21,960円となる。なお、所得税の計算における所得には通勤手当は含まれないが、標準報酬月額には通勤手当も含まれるので、通勤手当の額が高い人は社会保険料の控除額も多くなる。
2. 健康保険
健康保険料の額も厚生年金と同様標準報酬月額により決まる。なお、保険料率は、健康保険組合によって異なるため、同じ給料でも会社が違うと異なる。
3. 介護保険
介護保険は、40歳以上の人のみが払う保険になる。今年8月から「総報酬制」が導入されており、収入の高い人が多い会社に属している場合には保険料も高くなる。
4. 雇用保険
雇用保険は、失業した場合などに、一定の期間生活に必要な給付を行うものだ。保険料の計算は、一般の事業の場合、労働者が支払う保険料率は1000分の3となる。
5. 所得税
所得税は、年間の所得に対して税率を乗じて計算する。しかし、年間の所得は年末以降にならないとわからないので、とりあえず概算で税額を計算しておいて、毎月給与から天引きする。そして、年末に金額が確定したら、多く取り過ぎた分については返還する(年末調整)というしくみになっている。
毎月の概算税額がどのようにして決まるかというと、国税庁から「給与所得の源泉徴収税額表」というのが公表されていて、その月の給与から社会保険料を控除した金額毎に源泉徴収すべき税額が決められている。
6. 住民税
住民税は、地方自治体に納める税金である。所得税が毎月の給料によって決まるのに対し、住民税は前年の給料によって決まる。所得金額に応じて課税される「所得割」と所得金額にかかわらず定額で課税される「均等割」がある。所得割は一律10%になるが、均等割は自治体により異なる。
普段は「給与から控除されるものが多いな」位で給与明細をしっかり見ていない人も多いと思うが、これを機会に中身を確認してみてはいかがだろうか。(ZUU online 編集部)
【お詫びと訂正】
掲載当初、平成28年9月からの厚生年金保険の保険料率を「17.828%」と記載しておりましたが、正しくは「18.182%」でした。また「15等級」を「16等級」、「23万円」を「24万円」、1.厚生年金保険の計算式をそれぞれ訂正致しました。読者、関係者の皆様には適切な確認がなされないまま記事を公開したことをお詫びいたします。