東京株式市場は乱高下の展開です。日経平均株価は本年高値から、一時32%も下げた後、3/23(月)から3/25(水)にかけては、3,000円弱も値を戻しました。その後、3/26(木)は再び大きく売りが先行し、前日比882円安で取引を終えましたが、3/27(金)は再び買いが先行するなど、値動きの展開はまるでジェットコースターのように乱高下しています。
新型コロナウイルスは、世界的に流行が加速し、3/27(金)には感染者数が50万人に達しました。イタリアでは医療崩壊を起こしながら、流行拡大が続いているほか、米国でも感染拡大が深刻化し、NY州では医療崩壊の危機が迫っています。これらを背景に、世界の主要国では、生産・サービス活動はマヒ状態になっています。もはや、不況の到来は避けられないようにも思われます。
そこで、今回の「日本株投資戦略」では、不況に強いと思われる「キャッシュリッチ銘柄」にスポットを当ててみました。現金を豊富に持ち、財務安定性が高く、割安感の強い銘柄は、今後の株式市場で注目度が上がる可能性が大きそうです。
不況に強い!?「キャッシュリッチ銘柄」を抽出
東京株式市場は乱高下の展開です。日経平均株価は本年高値(取引時間中)の24,115円(1/17)から、本年安値16,358円(3/19)まで32%も下げた後、3/23(月)から3/25(水)にかけては、3,000円弱も値を戻しました。その後、3/26(木)は再び大きく売りが先行し、前日比882円安で取引を終えましたが、3/27(金)は再び買いが先行するなど、値動きの展開はまるでジェットコースターのように乱高下しています。
投資家にとって最大の関心事である新型コロナウイルスについては、世界的に流行が加速しています。世界における累計感染者数について、10万人に達するまでは2ヵ月を要しましたが、足元では10万人増えるのに、3~4日しか要していないのが現実です。3/27(金)には感染者数が50万人に達しました。イタリアでは医療崩壊を起こしながら、流行拡大が続いているほか、世界最大の経済大国である米国でも感染拡大が深刻化し、経済の中心であるNY州では医療崩壊の危機が迫っています。これらを背景に、世界の主要国は国外とのヒトの往来のみならず、国内の往来も制限しており、生産・サービス活動はマヒ状態になっています。
株価は当面、乱高下を繰り返し、一進一退の展開が続くのではないでしょうか。株式市場は「リーマンショック並みの下落相場」はおおむね織り込みつつありますが、今後は経済の悪化を示した驚くような数字を目にすることが増えると想定されます。世界経済の「V字回復」を望むことは難しく、世界経済の「L字回復」を織り込むことになりそうです。3/26(木)に米国で発表された新規失業保険申請件数(3/21までの1週間)は約328万件でした。これまでは20万件を少し超える程度の歴史的に低い水準で推移してきましたが、一気に過去最高(1982年10月の69.5万件)を4.7倍も上回る驚異的な数字となりました。
もはや、不況は避けられないようにも思われます。そうした中、「日本株投資戦略」では、不況に強いと思われる「キャッシュリッチ銘柄」にスポットを当ててみました。現金を豊富に持ち、財務安定性が高いのみならず、割安感の強い銘柄を抽出しています。
スクリーニング条件は以下の通りです。
(1)東証1部上場銘柄であること
(2)銀行、証券・商品先物、保険、その他金融に属さない銘柄であること(実質的にこれらに属す銘柄も除外)
(3)時価総額1,000憶円以上(3/25時点)の銘柄であること
(4)総資産に対するネットキャッシュ(現金等-長短借入金)の比率が30%以上あること
上記の全条件を満たす銘柄を、時価総額に対するネットキャッシュの比率が高い順に10銘柄並べたものが表1となります。
表1 不況に強い!?「キャッシュリッチ銘柄」はコチラ
コード / 銘柄 / 株価(3/26) / ネットキャッシュ比率時価総額 / ネットキャッシュ比率総資産
<1766> / 東建コーポレーション / 7,410 / 100.0% / 58.3%
<1963> / 日揮ホールディングス / 863 / 86.5% / 32.3%
<7313> / テイ・エス テック / 2,590 / 78.6% / 38.0%
<3765> / ガンホー・オンライン・エンターテイメント / 1,507 / 58.2% / 81.9%
<3668> / コロプラ / 795 / 55.3% / 77.6%
<6592> / マブチモーター / 3,225 / 49.6% / 40.9%
<8066> / 三谷商事 / 5,500 / 48.3% / 33.5%
<4694> / ビー・エム・エル / 2,840 / 46.3% / 45.0%
<2432> / ディー・エヌ・エー / 1,212 / 45.6% / 32.8%
<7276> / 小糸製作所 / 3,490 / 43.6% / 33.0%
※会社公表データ、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。時価総額は3/25(水)現在です。財務データは直近四半期末現在。ネットキャッシュは現金預金残高から短期借入金、1年以内に返済予定の長期借入金(社債)、長期借入金、社債等の残高を引いたものです。
なぜ今、「キャッシュリッチ銘柄」なのか?
「日本株投資戦略」ではなぜ今、「キャッシュリッチ銘柄」に注目するのでしょうか。理由は明快で、世界経済全般に不況色が強まる可能性が強く、財務の安定性が、今より重視されるようになると考えているためです。
「キャッシュリッチ銘柄」については、現金預金の絶対額が多いということにとどまらず、長短借入金等を差し引いた「ネットキャッシュ」が豊富な銘柄を抽出しました。単純に現金預金残高が多くても、長短借入金が多いようでは必ずしも、財務体質が強固とは言い難いからです。
無論、株式市場は必ずしも、財務体質が強固な銘柄に高い評価を付けるとは限りません。むしろ、資産を効率的に活用して利益に結び付け、高いROE(株主資本利益率)を実現している銘柄の方が高い評価を得ているように思われます。現金を多く抱えていてもうまく活用できないようでは、投資家から厳しい批判を浴びかねないのが現実です。
ただ、そうした流れに大きな変化が生じたことを印象付けたのが、3月中旬以降のソフトバンクグループ(9984)株式の値動きです。図1は、同社に関するおもな出来事を日足チャートの上に記載したものです。3/13(金)の取引開始時に、自己株式取得(最大5,000億円)を発表したものの、株価は下落し、途中、米格付け会社が格付け見通しを「ネガティブ」にしたことも手伝い、3/19(木)の安値まで3割以上も急落してしまいました。無論、この時期は日経平均株価が波乱の動きになっていた時期と重なっていますので、投資環境も厳しかったと考えられます。こうした中、同社は3/23(月)の午後(取引時間中)に最大4.5兆円の資産売却と自己株式取得の追加(2兆円)を発表し、株価はようやく、落ち着きを取り戻し始めました。
これまでの「平時」の株式市場であれば、3/13(金)の自己株式取得のニュースだけで、株価は上昇したかもしれません。しかし、世界で新型コロナウイルスの流行が深刻化し、歴史的な不況が来ようかという局面で、株式市場はソフトバンク株に財務体質安定への配慮も求めたと考えることができます。
「ネットキャッシュ」が豊富で、財務体質が強固な銘柄は、自己株式の取得計画発表が素直に、株価の上昇につながると期待されます。その意味で、表1にあげた銘柄の多くは、将来自己株式の取得等が期待できる銘柄と考えることができます。なお、財務体質の傾向は、業界または提供する製品・サービスによって異なる場合があります。ここでご紹介したスクリーニング手法が最も適切とは言い切れませんので、ご注意ください。
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実質4月相場入りへ(2020/3/27更新)
図1 ソフトバンクグループ(9984)・日足チャート
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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鈴木英之
SBI証券 投資調査部
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