2月以降、世界の株式市場は大波乱となりましたが、4月に入り、ようやく落ち着きを取り戻しつつあります。波乱の引き金となった新型コロナウイルスの感染拡大にピークアウトの兆しが出てきたことがおもな要因です。

そこで、今回の「日本株投資戦略」では、仮に新型コロナウイルスの感染拡大を背景とする波乱相場が一巡し、底入れから反発に向かうと想定した場合、大幅反発が期待できそうな銘柄をスクリーニングにより、抽出してみました。

20万円未満で買え、「ポスト・コロナ」で大幅反発が期待される銘柄はコチラ!?

日本株投資戦略
(画像=PIXTA)

世界的に株価が落ち着きを取り戻し、底入れの様相を呈しています。4/9(木)のNYダウは前日比285ドル高と続伸しましたが、3/23(月)の取引時間中に付けた安値からの上昇率は30%超に達しています。東京市場でも日経平均株価の4/9(木)終値は3/19(木)安値から18%超の反発になっています。

株価が底入れの様相を強めている背景には、(1)世界的に新型コロナウイルスの新規感染者数が頭打ちになりつつあること、(2)米国で民主党のサンダース氏が米大統領選における民主党の候補者争いから撤退を表明したこと、(3)原油生産について産油国の間で協調減産の方向となったこと、(4)FRB(米連邦準備制度理事会)が企業向け資金支援策を打ち出したこと等の動きがあると指摘されます。特に4/8(水)~4/9(木)に米国株が大幅続伸した背景には(2)~(4)も大きく影響していると考えられますが、これらについては機会を改めてご説明したいと思います。

(1)については、世界の新規感染者数が4/3(金)の9万人弱で頭打ちになっていた可能性が指摘されます。このデータは毎日のように修正されるため、確定した訳ではありませんが、その後はおおむね日次で7~8万人の増加数で推移しています。国別に激しい流行国のひとつとなったイタリアでも、日次の新規感染者数は、3/22(日)の6,557人がピークでその後はおおむね3~4千人で推移しています。米国も最新データでは4/3(金)が日次の新規感染者数のピークになった模様です。NY州では重症患者の入院数が減り始めており、現在はピーク更新中の死者数も先行きは減少に転じる可能性が出ています。

新型コロナウイルスの潜伏期間は5日前後との研究があります。その新規感染者増加「数」は新規感染者増加「率」がピークを付けた後1~2週間後にピークを付ける傾向があります。残念ながら我が国では、3/28(土)以降に新規感染者増加率が10%超に上昇し、4/3(金)に14.9%でピークになり、その後も4/8(水)まで高めの伸び率が続いています。緊急事態宣言の効果を勘案しても、新規感染数のピークは4月中~下旬に後ずれしそうです。ただ、世界的に新規感染者数がピークアウトしてくれば、世界的に株価が落ち着きやすくなるため、基本的には日本株も底入れ確認の展開にシフトし、物色的には「ポスト・コロナ」が中心になってきそうです。

一般的に、下落相場が「底入れ」から「反発」に転じる時、もっとも反発率が大きくなりやすい銘柄は、下落相場でもっとも大きく下げた銘柄群の中に見つけることができると考えられます。そこで、「日本株投資戦略」では、以下のスクリーニングを行ってみました。

(1)東証1部または2部の上場銘柄であること
(2)時価総額100億円以上の銘柄であること
(3)広義の金融(銀行、保険、証券・商品先物、その他金融)を除く銘柄であること
(4)直近四半期(または通期)まで経常黒字で、今期会社予想経常利益(4/9時点)も黒字見通しの銘柄であること
(5)当座比率(当座資産/流動負債)が150%以上の銘柄であること
(6)最低投資単位(100株)における投資金額が20万円未満の銘柄であること
(7)年初来高値からの株価下落率が50%超の銘柄であること

上記のすべての条件を満たす全銘柄について、(7)の株価下落率の大きい順に並べたものが表1になります。これらの銘柄は、20万円未満で買え、「ポスト・コロナ」で大幅反発が期待される銘柄と「日本株投資戦略」では考えています。

20万円未満で買え、「ポスト・コロナ」で大幅反発が期待される銘柄
(画像=SBI証券)

表1 20万円未満で買え、「ポスト・コロナ」で大幅反発が期待される銘柄
コード / 銘柄 / 株価(A)(4/9) / 年初来高値比 / 決算発表予定日
<2146> / UTグループ / 1,204 / -63.9% / 5/8
<9416> / ビジョン / 705 / -62.4% / 5/12
<4420> / イーソル / 1,007 / -62.4% / 5/14
<8920> / 東祥 / 945 / -61.9% / 5/8
<6464> / ツバキ・ナカシマ / 610 / -61.1% / 5/15
<3415> / TOKYO BASE / 266 / -57.2% / 4/14
<4848> / フルキャストHD / 1,226 / -55.0% / -
<3978> / マクロミル / 592 / -51.8% / 5/13
<4595> / ミズホメディー / 1,432 / -51.7% / 5/11
<4433> / ヒト・コミュニケーションズHD / 901 / -50.9% / 4/13

※当社スクリーニングツール、各社株価データ、各社公表データ等をもとにSBI証券が作成。

「ポスト・コロナ」銘柄の考え方

一般的に「ポスト・コロナ」銘柄というと、どのような銘柄が想像されるでしょうか。百貨店や家電量販店など、インバウンド需要が大きな収益源になってきた銘柄、外出自粛で打撃を受けるカラオケ店、陸運・海運各社等が代表例と言えるかもしれません。これらの銘柄は多くの投資情報で扱われるため、足元ではすでに反発基調になっている銘柄が散見されます。

表1で選んだ銘柄は、そうした業種や・業態で抽出した銘柄ではなく、値下がり率等を使って抽出したため、一見「ポスト・コロナ」と捉えにくいかもしれません。しかし、人手不足から一転、失業者数増加という逆風が吹きやすくなったUTグループ(2146)や、フルキャストHD(4848)、ヒト・コミュニケーションズHD(4433)などの人材関連銘柄、旅行需要の縮小が直撃しやすいビジョン(9416)、自粛ムードが逆風の東祥(8920)など、事業内容的に、新型コロナウイルスの感染拡大がマイナスになりやすい銘柄が揃っています。

図1 UTグループ(2146)・日足

図1 UTグループ(2146)・日足
(画像=当社チャートツールを用いてSBI証券が作成)

図2 ビジョン(9416)・日足

図2 ビジョン(9416)・日足
(画像=当社チャートツールを用いてSBI証券が作成)

図3 イーソル(4420)・日足

図3 イーソル(4420)・日足
(画像=当社チャートツールを用いてSBI証券が作成)

株式投資では、深押しした銘柄を狙うことは有効な戦略のひとつですが、なぜ下がったのかよくわからない場合は、やはり要注意です。しかし、下がっている理由がおもに投資環境等、明確に説明できるものであれば、十分投資対象になると考えられます。

無論、現在のような投資環境下で、選んだ銘柄でさえも、業績が順調に拡大するとは期待しにくいのが現実です。中には業績悪化が表面化し、決算発表や業績修正等の直後に、株価が下落するリスクはありますので、表に示した決算発表等のタイミングには注意が必要です。中には、決算発表予定日が接近している銘柄もありますが、そうした銘柄は決算発表の内容を確認してから投資を検討しても良いかもしれません。

なお、スクリーニング項目として(5)がありますので、抽出された銘柄の財務安定性は高めになっています。また、(6)の条件がありますので、少ない金額で複数の銘柄に分散投資がしやすくなっています。個別銘柄のリスクが高くなりやすい局面ですので、複数銘柄に投資し、全体のリスクを下げることが重要とみられます。

最初の項でご説明したように、新型コロナウイルスの新規感染者数は、世界的にはピークアウトが期待されますが、国内的には少し先になりそうです。このため、ニュースフロー的には暗めの状態が続く可能性があります。また、仮に国内の新規感染者数がピークアウトした場合も、明確に報道されないケースも想定されます。国内の感染者数の現状についてはメディアや公的機関から出される実数で判断した方が良さそうです。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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鈴木英之
SBI証券 投資調査部

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