オフィスの移転は思ったよりも費用がかかるものです。必ずかかる費用を合計すると大きな負担となるため、切り詰められるところは切り詰め、可能な限り節約したほうがいいでしょう。そこで本稿では、移転にかかる費用をシミュレーションしたうえで、節約する方法について解説いたします。

1.オフィスの移転にかかる費用

意外にかかるオフィス移転費用、節約する方法はあるのか?
(画像=Nattakorn/stock.adobe.com)

オフィスの移転にかかる費用には、必ずかかる費用とケースによってかかる費用があります。

必ずかかる費用

それでは、必ずかかる費用にはどのようなものがあるのでしょうか。さっそく見ていきましょう。

1.引っ越し費用
自分たちで全て引っ越し作業ができれば引っ越し費用はかかりませんが、社員の人数が増えてくるとそうはいきません。引っ越し業者に頼む必要がでてきます。

引っ越し業者に依頼する際の引っ越し費用には、「時間制」と「距離制」の2つがあり、基礎時間は「4時間」と「8時間」の2種類あります。国土交通省がモデル料金を提示しているので、多くの引っ越し業者はその金額を踏襲しています。

社員数が多ければ、デスクや椅子など持ち出すオフィス家具も多いので時間がかかることになり、1時間超過ごとに追加料金が発生します。距離制では100㎞が基準で、超過距離によって追加料金が発生します。そのほか、休日や深夜に依頼すると割増料金が発生するなど、条件によって引っ越し費用は変わります。

2.新オフィスの費用
新しいオフィスを借りる際には、敷金、礼金、補償金、仲介手数料、前賃料などの「不動産(物件)取得費用」がかかります。この不動産(物件)取得費が最も大きい割合を占めるといっていいでしょう。続いて「内装工事費用」「ネットワーク工事費用」「什器購入費用」などがかかります。

3.原状回復工事費
旧オフィスを引き払うときに発生する費用です。入居者の故意・過失・善管注意義務違反によって生じた損耗・毀損部分の修繕費を支払う必要があります。経年劣化や通常損耗によるものに支払義務はありませんが、例外もあるので不動産管理会社との話し合いで確認することになります。

4.諸経費・その他
旧オフィスを退去する際は、水道料金や電気料金などの清算が必要です。新オフィスへの移転では名刺や封筒を新しくする、挨拶状を作成するなどの諸経費がかかります。

必ずではないが、かかるかもしれない費用

続いては、必ずかかるわけではないものの、出費が予想される費用を解説します。

1.廃棄物の処理費用
一般的なオフィスから発生する廃棄物は事業活動によって生じたことから、「事業系一般廃棄物」なります。ただ種類によっては「産業廃棄物」として処理すべきものがあるので注意が必要です。分別や処理を専門業者に依頼した場合には費用がかかります。

2.移転に関する広告費
移転を機に顧客の拡大を図るケースもあるでしょう。自社制作のWebサイトで移転を周知する分にはとくに広告費はかかりませんが、チラシやパンフレットの作成、新聞広告を行う場合などは費用がかかります。

移転費用シミュレーション

それでは、「移転コスト計算式」をもとに移転費用をオフィス面積の異なる3つの物件でシミュレーションしてみましょう。なお、費用はあくまで概算になります。

【移転コスト計算式】

原状回復費用単価(現賃借面積坪あたり)×居中ビルの賃借面積
内装工事費用単価(移転先賃借面積坪あたり)×移転先ビルの賃借面積
什器購入費用単価(現賃借面積坪あたり)× 引っ越す人数
IT・ネットワーク等移設費用単価(PC端末1台あたり)×引っ越す人数
引っ越し費用単価(人数あたり)×引っ越す人数

1.オフィス50坪(社員10名)のシミュレーション(1万円以下四捨五入、以下同)
【例】移転先がVORT半蔵門Ⅱ(48.57坪)の場合

原状回復費用10万円×50坪=500万円
内装工事費用15万円×48.57坪=729万円
什器購入費用18万円×10名=180万円
ITネットワーク等移設費用3万円×10名=30万円
引越費用3万円×10名=30万円
総費用1,469万円

2.オフィス100坪(社員25名)のシミュレーション
【例】移転先が新宿国際ビルディング新館(122.66坪)の場合

原状回復費用10万円×100坪=1,000万円
内装工事費用15万円×122.66坪=1,840万円
什器購入費用18万円×25名=450万円
ITネットワーク等移設費用3万円×25名=75万円
引越費用3万円×25名=75万円
総費用3,440万円

3.オフィス150坪(社員50名)のシミュレーション
【例】移転先がVORT麻布maxim(151.96坪)の場合

原状回復費用10万円×150坪=1,500万円
内装工事費用15万円×151.96坪=2,279万円
什器購入費用18万円×50名=900万円
ITネットワーク等移設費用3万円×50名=150万円
引越費用3万円×50名=150万円
総費用4,979万円

2.オフィスの移転費用を節約する方法

ご覧のようにオフィスの規模が大きいほど移転費用は高額になります。そこで以下のようなオフィス移転費用の節約方法を使って、少しでも費用負担を減らすようにしましょう。

原状回復費用の節約

オフィスも住宅と同様に退去時に原状回復義務があります。オフィスは自社の業務に合わせてレイアウトを大きく変えて使っている場合があるため、工事の前に原状回復の範囲を不動産管理会社に確認することが大事です。

通常原状回復工事は管理会社やビルオーナーが業者を指定する場合が多いので、知り合いの業者があるのであれば、知人に依頼したい旨を早めに交渉したほうがよいでしょう。

新オフィスの費用の節約

新しいオフィスは、内装工事や環境の整備が必要になることから、遅くとも2ヵ月前には契約している必要があります。そうでないと引っ越し後スムーズに仕事を行うことができません。したがって、旧オフィスと新オフィスの両方の賃料を払う期間が発生することになります。

これはなかなか大きな出費となります。そこで利用したいのがフリーレントという方法です。フリーレントとは、入居後1~3ヵ月程度の賃料を無料とする契約形態です。不動産会社と交渉して最初の数ヵ月だけでもフリーレントにしてもらえれば、片方の賃料を節約することができます。

賃料の値下げはほかのテナントと不公平になるため応じるオーナーは少ないですが、フリーレントであれば賃料は同じなので、応じてくれる可能性もあるでしょう。

賃料、仲介手数料の節約

賃料を値下げしてもらえればその分仲介手数料を節約できますが、手数料そのものを節約する方法もあります。賃貸契約の仲介手数料は宅建業法第46条によって、上限が「賃料の1ヵ月分+消費税」と定められています。

さらに国土交通省の告示第四として、当該依頼者の承諾を得ている場合を除き、借主・貸主双方から徴収する手数料は賃料の0.5ヵ月分以内とすることが明示されています。借主または貸主が1ヵ月分の手数料を払うのは承諾している場合のみということになります。
したがって、もし賃料1ヵ月分の手数料を提示されても、借主が承諾をしなければ不動産仲介業者は賃料の0.5ヵ月分に値下げをしなければなりません。

また、賃貸借契約は貸主と借主からいただく仲介手数料の合計が賃料の1ヵ月分まで、と宅建業法で定められているので、貸主から1ヵ月分徴収し、借主からは仲介手数料を取らない会社もあります。いろいろなケースがありますので、可能な限り交渉して節約につなげるようにしましょう。

【仲介手数料1ヵ月分と0.5ヵ月分の比較】

賃料手数料1ヵ月分手数料0.5ヵ月分節約額
10万円10万円5万円5万円
20万円20万円10万円10万円
30万円30万円15万円15万円

3.オフィスの移転に際しての注意点

新しいオフィスへの移転に際しては注意すべき点があります。現在入居しているビルの解約を連絡するにあたっては、管理会社には一般的に6ヵ月前に伝えておく必要があります。ただ、契約にもよりますので、事前に契約書を確認しておきましょう。

また、新オフィスの契約が終わらないと内装工事もできないので、新オフィスは早めに決定して契約を完了させておくことが重要になります。契約が終わったら内装・電気・空調など必要な工事のスケジュールを重複しないように組み立てます。オフィス移転後は関係省庁に必要書類の提出を行います。おもな届け出書類は以下の通りです。

・本店移転登記(法務省)
・異動届出書、給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出(税務署)
・事業開始等申告書(都道府県税事務所)
・健康保険、厚生年金保険適用事業所所在地、名称変更届(年金事務所)
・労働保険名称、所在地等変更届(労働基準監督署)
・雇用保険事業主事業所各種変更届(職業安定所)
・防火対象物使用開始届出書(消防署)

4.オフィスの移転費用を会計的に節約する方法

オフィスの移転費用について発想を変えて節約する方法もあります。ビルを借りるということは毎月賃料が発生します。そこで同じお金をかけるなら買ってしまおうという発想です。ローンの返済は賃料が浮いた分で相殺できます。購入費用はビルの耐用年数によって減価償却費として毎年利益から差し引くことができるので、会計的にも大変有利になります。

また、賃貸だと移転が容易なため、数年ごとに移転して余分なコストが発生するリスクがあります。その点自社ビルを持つと頻繁にと移転できなくなり、「地域に根差した経営を行おう」と意識が変わっていきます。移転そのものがなくなるので、これこそ最高の節約方法といえるのではないでしょうか。

おすすめは区分所有オフィス®

しかしながら、テレワークが普及して出勤する社員が減っている現在においては、ビルを一棟まるごと購入するのは高いリスクがあります。そこで検討をおすすめしたいのがビルをフロア単位で購入できる「区分所有オフィス®」です。

たとえば10階建てビルの1フロアを購入する場合は10分の1程度の費用で購入できます(物件により異なります)。また、テナントではなく自己所有なのでレイアウトはどのようにでも変更でき、効率的な使い方ができるのがメリットです。ボルテックスでも取り扱っていますので、下記リンクの物件ページを参考にぜひご検討ください。

Vortex (vortex-net.com)
※「区分所有オフィス®」は株式会社ボルテックスの登録商標です。

オフィス移転費用は節約して負担を減らす短期的な方法と、自社ビルを持って移転自体をなくす長期的な方法があります。少しでも余分な費用をかけず会社を運営していくためには、日ごろから検討しておきましょう。

(提供:自社ビルのススメ



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