こんにちは。行政書士のS.Kです。

今回から2回にわけて株式を利用した資金調達の方法として活用できるプットオプションとコールオプションについて述べていきます。
会社の資金調達方法として活用可能性がある株式ですので、ぜひお読みいただければと存じます。

【参考 オーナー企業のための事業承継】

オーナー企業のための事業承継vol1「事業承継の必要性と円滑化のための法制度とは?」
オーナー企業のための事業承継vol2「後継者選びのポイントとは?」
オーナー企業のための事業承継vol3「後継者選びのポイントは?その2」
オーナー企業のための事業承継vol4「建設業界に学ぶ許認可事業の事業承継って?」
オーナー企業のための事業承継vol5「会社の現状を把握するポイントとは?」
オーナー企業のための事業承継vol6「企業の事業承継の際の法律上の問題点とは?
オーナー企業のための事業承継vol7「家族の絆を守る後継者以外への配慮とは?」

【参考:種類株式シリーズ】

オーナー企業のための種類株式活用戦略vol1「種類株式とはどのようなものか?」
オーナー企業のための種類株式活用戦略vol2「ヒーロー株など属人的株式の活用」


◉非公開会社の場合の資金調達の難しさ


会社の株式を公開されていない場合(ここでは、公開とは、上場とほぼ同義と考えてご理解ください。)会社の資金調達の方法として新株発行による資金調達は非常に困難となります。このことに関しては経営者様の経験からご理解を賜ることができるかと存じます。
上場の株式とは異なり、非公開会社の場合株には株価の算定が非常に難しいため、縁故者を通じてのような場合を除いては株式の引き受け手を探すのが非常に難しくなります。

株式会社の本来の理想的なあり方としては、会社は株式発行によって資金調達をするという方法が求められています。そのための具体的な手続きも会社法の第199条以降に詳しく定められていますが、実際問題としては非公開会社の場合、株式発行による資金調達は難しいというのが現状です。
しかし、新会社法においては、種類株式を活用することによって非上場の会社のであっても新株発行によって資金調達をすることができる可能性があります。


◉非公開会社でも資金調達に利用できるプットオプション付き種類株式


非公開会社において新株発行によって資金調達の可能性がある種類株式は、法律上の用語では取得請求権付き株式と取得条項付き株式が代表的です。前者をプットオプション付き株式、後者をコールオプション付き種類株式といいます。
なお、今回はプットオプション付き種類株式をご説明します。

プットオプション付き種類株式とは、会社に対して取得(買取)を請求することができる内容の種類株式をいいます。つまり、株主の一方的な意向によって、株主が株式を会社に対して買い取ることを請求することができるのです。
これは、株式の引き受け手にとっては非常に有利となります。一般の投資をイメージしていただければわかりやすいと思うのですが、株式の引き受け手にとってもっとも心配な点は、株価が下落して損を出してしまうこと(また損失の最たるものとして会社の倒産により、株式が紙切れとなってしまうこと)です。

また、非公開会社の場合には、この株価下落の心配に加えて、株式を第三者に譲渡することにより最低限度の資金回収ができなくなるという心配も負うこととなります。上場株式であれば、証券取引所で株式を売買することで、最低限度、市場価格で株式を譲渡することができますが、非公開会社の場合には、たとえどれほど会社の規模自体が大きくとも(会社の規模の大小にかかわらず、経営方針などから上場していない会社は多数あります)株価算定が難しいので買い手が見つかりません。
このように非公開会社の株式の場合、引き受け手には①株価下落のリスク②第三者への譲渡による資金回収ができないというリスクが併存することとなります。

しかし、株式に取得条項を付けて、株主の一方的な意向により会社に対して株式の取得(買取)を請求することができるとすれば、株式引受人は、最低限度、会社が定めた対価は回収することができることとなり、リスクを大きく軽減することが可能となります。このため、プットオプション付き株式の場合には引き受け手を探しやすくなることになります。
一方で会社にとっても、プットオプションをつけることで株式の価値を高く設定しても、上記のようなメリットがあるため引き受け手が現れる可能性が増えます。
つまり、取得請求権という特別な権利を株式に付することで、株式非公開の会社であっても新株発行をして資金調達の可能性が生じることとなります。これがプットオプション・取得請求権がついた種類株式を利用した資金調達の方法です。