(本記事は、長倉 顕太の著書『GIG WORK(ギグワーク)』すばる舎の中から一部を抜粋・編集しています)

変化した資本主義

ウーバー
(画像=Getty Images)

デジタル・ノマド、ギグワーカーなど働き方/生き方が大きく変わりつつあるわけだが、そもそも資本主義そのもののルールも変わってきているんじゃないか。ここにオレたちのチャンスがあるんじゃないか。再三書いているように、従来は資本家がいて労働者がいるという図式であったが、オレも含めていまやこれに当てはまらない人も増えてきた。その理由は、事業をはじめるにあたり資本をあまり必要としなくなったことがあげられる。

たとえば、オレの場合も会社を所有しているので資本家ではあるが、その資本金は100万円程度だ。それも別に理由はなく、株式会社にするのでとりあえず100万円にしたというだけ。今の法律では資本金1円でも株式会社を設立できるわけで資本はそこまで問題にならない。実際、ユーチューバーやブロガーといった形であれば資本金どころか、1円もかけずに事業をスタートすることが可能だ。このような世の中においては、もはや資本家、労働者という対立構造すらどうでもいいとも言える。

もちろん、従来の資本家、労働者という構造で成り立つ産業も数多く存在し続けることは確かではあるが、オレはこの構造から抜け出す働き方/生き方を模索することを勧めている。

なぜなら旧来の資本主義の構造に取り込まれる限り資本家になるか、資本家に気に入られないと、豊かな人生は望めないからだ。簡単に言えば起業家としてIPO(株式公開)までやって成功するか、大企業の幹部社員になるか、キャリア官僚になるしかない。それも起業家以外は豊かになると言っても、中高年以降だ。そもそも、起業家も株主や同僚からのプレッシャーも相当きついはずで、豊かだけどなかなかストレスフルな人生になるだろう。

2014年末に日本語版も発売された世界的ベストセラーである『21世紀の資本』(トマ・ピケティ著、山形浩生訳、守岡桜訳、森本正史訳、みすず書房)にもあるように、財産の成長率は、労働によって得られる賃金の成長率を上回るからだ。つまり、賃金を貯めても、株とか不動産を持っている人に勝るような財産を持つことができないということ。

正直、なんでこの本が世界的なベストセラーになるのか不思議なくらい当たり前のことを言っている。だって、昔から不動産や株を持っている人のほうがお金持ちというイメージは誰しもが持っていたはずだ。おそらく、ピケティの本が売れたのは、多くの人が思っていたことを歴史的なデータに基づいて数字的に証明したからだろう。

ところがインターネットの出現も含めたテクノロジーの発達によって、資本家と労働者という枠から外れた人たちが増えてきた。前述したデジタル・ノマドやギグワーカーと言われるような人たちだ。彼らの大半はギグのように仕事をしているので、資本家でも労働者でもないと言える。

このように会社を持つか持たないかは別として、資本家でも労働者でもない存在が活躍できるようになったのが今の資本主義だ。インターネットの発達によりどこにいても仕事ができ、多くの資金を必要としないビジネスが増えてきた結果、この資本家でも労働者でもない人たちがどんどん増えていくことだろう。

もちろん、従来はフリーエージェントやインディペンデントワーカーと言われていて一部の職業では存在していたが、あらゆる職業で増加していくことになる。これがまさに本書で提唱するギグワーカーだ。

昔からあったギグエコノミー

あらためてギグワーカーを定義すると、プロジェクトごとに参加したり、空き時間を使って参加したり、などさまざまな形で、会社員という形でなく労働することを指す。「ギグ」とはもともとジャズミュージシャンの間で使われていた言葉で、ライブハウスなどでの単発の演奏のことだとすでに書いた。たとえば、ライターとしてあるプロジェクトに参加したり、看護師が空き時間を使ってウーバーのドライバーをしたりだ。

ここでギグワーカーを説明する上で重要なウーバーについて知らない方向けに説明しておく。2019年5月にIPO(株式公開)し、株価は当初の期待を下回ったものの時価総額8兆円にもなった2009年に設立されたウーバー・テクノロジーズが運営する、自動車配車ウェブサイトおよび配車アプリのことを指す。2018年の時点で売上112億ドルを超え、71カ国で展開している。彼らが提供しているサービスはいわゆる「ライドシェア」と呼ばれるもので、アプリにドライバーとして登録した人が空き時間を利用して、移動したい人を迎えに行き目的地まで届けるというもの。利用者とドライバーはウーバーのアプリ上でマッチングすることになるわけで、簡単に言えばタクシーみたいなもの。

ただし、タクシーと違うのは、ドライバーはウーバーに雇われているのではなく、あくまでも個人としてウーバーアプリに登録しているだけだということ。ウーバーのドライバーは、自分の空き時間だけ働くので、ほかの仕事を持っている者も多い。

このように、ウーバー以外でも、同じライドシェアの「リフト」、アメリカ最大の便利屋サイト「タスクラビット」、海外の優秀な人材を集める「アップワーク」などといったマッチングサイトがどんどん出てきて、ギグで仕事をする人たちが増えてきている。

一方、日本では、「ランサーズ」「クラウドワークス」というサイトがあらゆる仕事もマッチングをしており、家事代行、ベビーシッターなどをマッチングする「キッズライン」など日本でも徐々にギグワークは浸透してきている。

オレは最初、ギグワーカーについて知ったときに、まさに編集者だなと思った。まえがきにも書いたように編集者が現在活躍しているのも、こういった流れに合っていることが間違いなく関係している。

選択肢が増えるギグワーク

たしかにギグワーカーとして生きるのは、今の時代には合っている。そこまで大きく稼ぐことはないかもしれないが、時間、場所に縛られずに働けるというのは大きな魅力だろう。ただし、注意しなくてはならないのは、ギグワーカーになったとしても働き方によっては、選択肢の少ない人生になることがあるからだ。

マリオン・マクガバン著『ギグ・エコノミー襲来新しい市場・人材・ビジネスモデル』(斉藤裕一訳、CCCメディアハウス)によると、ギグワーカーの頂点にいるのは弁護士、コンサルタント、データ・サイエンティスト、臨時の経営人材(新規部門の立ち上げなどで期間限定で独立コンサルタントを雇う)などの「専門職」で、高い専門性、重い責任、高額の報酬が特徴だ。その下が「技能労働者」で、ドライバー、修繕工事人、料理人、ウェブ開発者、編集者、ライターなどが挙げられている。一定の専門性を必要とするものの、発注者の指示に従い、責任が限定されているかわりに報酬もそこそこだ。ギグワーカーの最下層は「非熟練労働者」で、イヌの散歩人、便利屋、駐車係、食品・雑貨の宅配、配送アシスタント、レストランの接客係など、専門性を必要としない(誰でもできる)仕事で、マニュアルに従っていれば責任はなく、そのぶん報酬は最低賃金プラスアルファだ。

ただ、こうしたギグワークを組み合わせることもできるのが面白い。普段はライターの仕事をしながら、空き時間を利用してウーバーのドライバーをしたりもできる。もしオレがギグワークの最大化を考えるなら、どこでもいつでもできるライターのような仕事をクラウドソーシングでゲットし、まず京都あたりに2部屋ある賃貸住宅を借りて一つの部屋はエアービーアンドビーで旅行者に貸し、空き時間を利用してドライバーなんかをやるのもいいだろう。まあ、まだ日本ではウーバーが広まっていないから、ウーバーイーツの配達をするかも。こんな感じでいろんな働き方ができるようになったんだから、単なる労働者として生きるのはまじで人生の無駄。もっと自由に時間、場所、人も選べるようになったんだから。どんどん選択肢を拡げていこうぜ!

生殺与奪権を奪われるな!

こんな数字もある。2012年に安倍晋三政権になってから6年間で実質賃金は16万円減少し、非正規雇用は300万人以上増えて非正規雇用比率は38%になっているという。しかも、大企業の役員報酬は3倍増。このことからも再三書いているように大企業・資本家側にいく人はどんどん豊かになり、労働者は非正規雇用が増え、賃金も下がっていっているのがわかるだろう。でも、この本の読者のほとんどは大企業・資本家側にまわるのは無理なはずだ。だから、オレは資本家でも労働者でもないギグワーカーになれとしつこく書いているんだ。

ギグワーカーも非正規だから「非正規でいいじゃないか」ってのがオレの態度だから、搾取されるだけでは意味がない。それはどんどん賃金が低下していく労働者でしかないからだ。

当たり前だがギグワーカーで狙うのは最上位層なわけだ。ここで人生の基本戦略で重要なことを書く。それは「下請けになってはいけない」ということだ。オレは出版社にいたわけだけど不思議に思っていたことがあった。それは多くの編集者が出版社を辞めて独立すると下請けになってしまうという現実。どんなに偉い編集長だったような人ですら、結局は出版社から仕事をもらわなきゃいけないわけだから下請けだ。これって夢がないなって思ってたから、オレは独立してから「絶対に下請けにはならない」って決めたわけだ。

なぜなら、人生戦略において下請けになるということは生殺与奪権を他人に握られることを意味するわけで、独立とは名ばかりの不安定な奴隷でしかないわけだ。どうせ奴隷なら安定くらいしたいだろ。そこでオレが考えたのが、出版社との力関係上、上位にくるベストセラー著者側の人間として仕事することにしたわけだ。本当にオレは人に恵まれているから、オレと一緒にやってくれるベストセラー著者たちが多くいたからできたが、もしそうじゃなければ独立していなかっただろう。何度も言うけど、下請けになったら人生は終わりだ。

ということで、次章ではギグワーカーの中でもどういう存在になるべきかについて書いていく。すべてがコンテンツ化されていく世界の中でどう選択肢を最大化させるべきかを書いている。オレたちは究極にコンテンツ化された世界に生きているわけだから、もう物理空間に足を引っ張られるような生き方とはおさらばだ。そうしないと、ギグワーカーとして面白おかしくできないからね。

GIG WORK(ギグワーク)
長倉 顕太(ながくら・けんた)
1973年東京生まれ、学習院大学卒。28歳のときに出版社に拾われ、編集者としてベストセラーを連発。その後、10年間で手がけた書籍は1000万部以上に。現在は独立し、サンフランシスコと東京を拠点に、コンテンツ(書籍、電子書籍、オウンドメディア)のプロデュースおよび、これらを活用したマーケティングを個人や企業にコンサルティングのほか、教育事業(若者コミュニティ運営、インターナショナルスクール事業、人財育成会社経営)に携わる。
ベストセラー作家から上場企業まで手がける。著者に『親は100%間違っている』(光文社)、『超一流の二流をめざせ!』(サンマーク出版)など多数。

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