株式市場はまさに乱高下の展開となっています。2020年に入り、イランと米国の緊張が高まったことに加え、中国を中心に新型コロナウイルスを病原体とする新型肺炎の感染が拡大し、それらを警戒して、株価が大きく下げる場面もみられました。しかし、緩和的金融政策を背景に、好需給が指摘される米国株式市場が再び高値更新の動きとなり、それを追い風として日経平均株価も再び昨年来高値に接近する動きとなっています。

そうした中、2月相場もはや半ばとなり、決算発表もピーク通過しました。2月末に株主優待や配当の権利が確定する銘柄にとっても、権利確定まで残すところほぼ10営業日になっています。

そこで、今回の「日本株投資戦略」では2月末に権利が確定する株主優待銘柄をご紹介したいと思います。投資家の関心が深い上に、業績下方修正リスクが相対的に小さく、配当も期待できる10銘柄を選んでみました。

30万円以下で買える2月の株主優待銘柄

日本株投資戦略,
(画像=PIXTA)

冒頭でご説明した通り、今回の「日本株投資戦略」では2月末に権利が確定する株主優待銘柄をご紹介したいと思います。投資家の関心が深い上に、業績下方修正リスクが相対的に小さく、配当も期待できる10銘柄を選んでみました。スクリーニング条件は以下の通りです。

(1)東証1部上場銘柄であること
(2)2月末に株主優待の権利が確定(権利付最終日は2/26)する銘柄であること
(3)2月に配当金を受け取る権利も確定する銘柄であること(無配予想ではないこと)
(4)四半期累計営業増益率が、通期会社予想営業増益率を上回っている銘柄であること
(5)四半期累計営業利益の進捗率が2月決算銘柄の場合75%以上、8月決算銘柄の場合25%以上の銘柄であること
(6)最低投資単位である100株の保有で株主優待の権利が享受できること
(7)最低投資単位での投資に必要な売買金額が30万円以下であること

上記の全条件を満たした銘柄を、当社株主優待検索サイトにおいて、2月に権利が確定する銘柄に絞った後、閲覧回数で上位に並ぶ銘柄から順番に10銘柄掲載したものが表1・表2になっています。ただし、(4)と(5)については、いずれかの条件を満たしていればよしとします。また、一般的にインバウンド需要の比率が高いと理解されている銘柄は除くことにしました。

これらの銘柄をご覧になれば、おわかりいただけるように、業種的には小売業や外食サービスに属す企業が多くなっています。これらの企業の株主優待内容については、当該企業の店舗で使い、その商品やサービスを体験できるような内容のものが多いように思われます。10月に消費税が上昇したこともあり、外食サービスを中心に業績が悪化しやすい環境でしたが、その荒波を乗り越えている企業も少なくありません。

なお、結果的に10銘柄すべてが2月決算銘柄となりました。したがって、「四半期累計」の対象は2019年3月~11月の9ヵ月であり、月単位で計算すれば年間(12ヵ月)の75%の期間に相当するため、(5)では進捗率75%以上が条件となります。

1銘柄当たりの投資金額を30万円以下に抑えているため、10銘柄すべてに100株ずつ投資しても180万円弱(諸コスト未考慮)で済む計算です。もともと、業績面も考慮しておりますが、分散投資をしやすくなることで、個別銘柄へのリスクを分散することが可能になっています。

表1 12月に権利が確定する好業績の株主優待銘柄(1)
(画像=SBI証券)

表1 12月に権利が確定する好業績の株主優待銘柄(1)~株主優待の内容は?
コード / 銘柄 / 株価(2/7) / 2月末に100株以上保有で贈呈される予定の株主優待内容概要
<8905> / イオンモール / 1,900 / 3,000相当のイオンギフトカード等
<3546> / アレンザホールディングス / 1,010 / 1,000円相当のJCBギフトカード
<9861> / 吉野家ホールディングス / 2,578 / 飲食券(300円)10枚
<3087> / ドトール・日レスホールディングス / 2,115 / 「ドトール」他で使える株主優待カード1,000円相当
<8200> / リンガーハット / 2,490 / 食事優待券(550円)3枚
<2337> / いちご / 423 / 抽選でJリーグ観戦チケット(全株主)
<3543> / コメダホールディングス / 2,213 / 1,000円相当の自社電子マネー
<3050> / DCMホールディングス / 1,063 / 買物優待券500円相当
<2918> / わらべや日洋ホールディングス / 1,949 / オリジナル・クオカード1,000円相当
<2685> / アダストリア / 2,136 / 株主優待券3,000円相当

表2 12月権利確定の好配当・好業績期待銘柄(2)
(画像=SBI証券)

表2 12月権利確定の好配当・好業績期待銘柄(2)~配当データ
コード / 銘柄 / 株価(2/7) / 予想1株配当金(会社)期末 / 予想1株配当金(会社)通期(B) / 予想配当利回り(B)/(A)
<8905> / イオンモール / 1,900 / 20.00 / 40.00 / 2.11%
<3546> / アレンザホールディングス / 1,010 / 13.00 / 26.00 / 2.57%
<9861> / 吉野家ホールディングス / 2,578 / 10.00 / 20.00 / 0.78%
<3087> / ドトール・日レスホールディングス / 2,115 / 17.00 / 34.00 / 1.61%
<8200> / リンガーハット / 2,490 / 7.00 / 12.00 / 0.48%
<2337> / いちご / 423 / 7.00 / 7.00 / 1.65%
<3543> / コメダホールディングス / 2,213 / 26.00 / 51.00 / 2.30%
<3050> / DCMホールディングス / 1,063 / 14.00 / 28.00 / 2.63%
<2918> / わらべや日洋ホールディングス / 1,949 / 40.00 / 40.00 / 2.05%
<2685> / アダストリア / 2,136 / 26.00 / 50.00 / 2.34%

※会社公表データ、各種資料をもとにSBI証券が作成。株主優待は権利付最終日(すべての掲載銘柄が2/26)時点に100株保有している場合の株主優待の内容について、その概要を記載したものです。詳細は各社の公式発表をご覧ください。また、予想配当利回りは、当該年度のすべての配当を受け取ったと仮定した場合に得られる利回りになりますので、期末配当を受け取っただけで得る利回りとは異なります。

抽出銘柄の優待・投資ポイント

株主優待の魅力とは何でしょうか。改めて、考えてみました。株式投資には、値上がり益を期待できることや、株主として配当金等をもらえる魅力があること等については、すでにご存知だと思います。そして、その魅力と反対にリスクがあることも。

株主優待は、値上がり益でもなく、配当金でもなく、第3の魅力と言えるかもしれません。そして、株主優待が他の魅力と大きく異なるのは、その会社を実感できる可能性がある点ではないでしょうか。

私たちは、ある会社への投資を検討するとき、その会社の決算資料を読んだり、チャートを眺めたり、新聞や雑誌の記事を読んだりして、その会社のことを知ろうとします。しかし、それらは結局、頭の中に知識として残すことが中心です。しかし、株主優待はその会社の商品やサービスの提供を受けることにより、その会社を実感することができるかもしれないのです。

今回ご紹介した銘柄は、当該企業の店舗で使い、その商品やサービスを体験できるような内容のものが多いように思われます。その意味で、投資対象企業を「実感できる」チャンスは大きいように思われます。最後に掲載銘柄のいくつかについて、事業や株主優待のポイント、投資の注意点等をご紹介したいと思います。

●イオンモール(8905)

大手流通企業であるイオン(8267)が55.8%の株式を保有し、イオンのショッピングセンターを開発・運営しています。国内中心の収益構造ですが、セグメント利益の1割弱程度が中国であり、新型肺炎の影響が残るかもしれません。

2/26(水)時点で100株以上保有する株主にイオンギフトカードまたはカタログギフト3,000円相当が贈呈されます。500株以上では5,000円相当、1,000株以上では10,000円相当となります。優待品に代えてカーボンオフセットサービスの購入も可能です。また、3年以上継続保有した場合、上記優待品をさらに多く受け取ることができます。

図1 イオンモール(8905)・日足
(画像=当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。)

●アレンザホールディングス(3546)

スーパーマーケットや食品加工業・卸売業、ドラッグストア、ホームセンター等を展開するバローホールディングス(9956)が50.6%を保有する企業で、ほぼ全国にホームセンターやペットショップを展開しています。2/26(水)時点で100株以上保有する株主にJCBギフトカード1,000円相当が贈呈されます。500株以上保有では3,000円相当、1,000株以上保有で5,000円相当、3,000株以上保有で10,000円相当が贈呈されます。

●吉野家ホールディングス(9861)

吉野家、はなまる、京樽等を展開する外食チェーンです。第3四半期累計の営業利益は29億円弱と、前年同期(5.6億円の赤字)から大きく改善しています。店舗数は昨年末時点で3,485店舗ですが、海外のうち中国は605店舗を占めています。上半期の社内取引等消去前利益に占める海外の比率も約10%程度あり、新型肺炎の影響については、一応の注意が必要とみられます。

2/26(水)時点で100株以上保有する株主に飲食券(300円)10枚が贈呈されます。1,000株以上保有では20枚、2,000株以上保有では40枚贈呈されます。飲食券10枚を自社の定めた期限までに返送した場合、自社グループ会社製品詰合せセットと交換することが可能です。なお、8月の権利確定でも、同様の優待サービスがあります。

図2 吉野家ホールディングス(9861)・日足
(画像=当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。)

●ドトール・日レスホールディングス(3087)

傘下に喫茶ドトールや、「星乃珈琲店」を展開する日レス等を要しています。第3四半期累計の営業利益は83億円(前年同期比3.0%増)で、通期計画に対する進捗率は77.5%となっています。

2/26(水)時点で100株以上保有する株主に、「ドトールコーヒーショップ」、「エクセルシオール カフェ」で利用可能な株主優待カード1,000円相当が贈呈されます。300株以上保有で3,000円相当、500株以上保有で5,000円相当が贈呈されます。

図3 ドトール・日レスホールディングス(3087)・日足
(画像=当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。)

●リンガーハット(8200)

長崎ちゃんぽん「リンガーハット」を中心に展開する外食チェーンです。2/26(水)時点で100株以上保有する株主に食事優待券(550円)3枚が贈呈されます。300株以上保有では7枚、500株以上保有では12枚、1,000株以上保有では25枚、2,000株以上保有では50枚贈呈されます。8月も同様の優待サービスがありますが、2月のみ3年以上継続保有の株主には上積みの贈呈があります。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
※NISA口座で上場株式等の配当金を非課税で受け取るためには、配当金の受領方法を「株式数比例配分方式」に事前にご登録いただく必要があります。

鈴木英之
SBI証券 投資調査部

【関連記事 SBI証券より】
新型肺炎の感染拡大が加速!~株式市場・関連銘柄の見通しを探る
3Q決算発表開始!~業績予想上方修正に期待したい3月決算銘柄は!?
業績好調で株価上昇企業も目立つAI関連銘柄はコチラ!?~2020年の注目テーマ(2)
20万円未満で買える好配当・好業績銘柄~2020年の「NISA」はコチラで!?
「5G」で飛躍する半導体関連銘柄?~2020年の注目テーマ(1)