生命保険会社の明日を占う

こんにちは。毎週木曜日に「富裕層のための保険講座」を連載しているNADです。
普段はFP法人を経営し、主に富裕層の方達向けのコンサルティングを行っています。

10週間に及んだこの連載も、いよいよ今回で最終回となります。
これまでおつき合い頂きありがとうございました。

連載最後の今回は生命保険会社や保険業界の今後について述べさせて頂きたいと思います。
銀行、証券そして生保と言えば3大金融機関と位置づけられています。とりわけ生命保険会社は戦後、紆余曲折しながら大きく発展進化してきました。また、これからも時代の流れに沿いながら進化していくのでしょう。

では生命保険会社には今後どのような展望があるのでしょうか?

【富裕層のための保険講座】

富裕層のための保険講座vol1『3大オーナーの生命保険と税金』
富裕層のための保険講座vol2『主な生命保険とその特徴』
富裕層のための保険講座vol3『法人における保険加入の方法とメリット』
富裕層のための保険講座vol4『事業と家族を守るために富裕層の加入すべき保険の考え方』
富裕層のための保険講座vol5『3大オーナーの一角、ドクター保険の世界』
富裕層のための保険講座vol6「個人年金保険の種類と活用方法」
富裕層のための保険講座vol7「同じような保障でも保険会社で違う保険料金の仕組み」
富裕層のための保険講座vol8「生命保険の加入(販売)チャネルの比較とまとめ」
富裕層のための保険講座vol9「超優秀な営業マンの見分け方」


◉内勤社員と営業マンの間の格差


生命保険業界程、営業マンと内勤社員の社会的な格差がある業界はないと思います。
例えば、某大手国内生保の大学生就職人気企業ランキングの上位に位置しています。それはあくまでも営業マン(保険募集外交職員)ではなく、いわゆる内勤職員ということです。これは、外資系生保の参入により営業スタイルが進化してきたとはいえ、まだまだ営業マンの仕事は厳しく、収入の殆どがコミッション制ということから、全く別物ということなのでしょう。

また、生命保険会社自体は、1997年〜2001年にかけて7社が破綻し、多くの契約者が被害をこうむりました。
しかし、以来、各保険会社はソルベンシーマージン比率(予測を超えるリスクに対してどの程度支払い余力を有するかを示す比率で200%を下回ると金融庁が是正措置を命令)の改善や「生命保険契約者保護機構」を設けて契約者を保護するシステムが出来上がっており、少なくとも契約者にとっては保険会社はより安心な金融機関となりました。むしろ、銀行の「ペイオフ」の方が不利なような気さえします。


◉現状の問題点


生命保険業界の、その営業マンの質はまだまだ低いと思います。それは、やはり仕事が厳しく定着率が低く、よい営業マンが育たないといったことがあります。
そういった中において、というか、だからこそ生命保険の営業マンは、富裕層に限らず多くの顧客にとっては少々強引とも思われる営業手法もとらざるを得ないことがあります。

そのため、生命保険の営業マンに対する世間の評判が低下し、結果、営業マンの質が改善されないということに繋がっています。生命保険会社も、当然のことながら(より富裕層顧客を開拓する為にも)良い人材を探しています。今の状態が必ずしも良いとは思っていません。当然、営業マンの質を上げることは顧客の利益になることはわかっています。
現在の状況でそれを改善しようと思えば、コミッション率を大きく上げるか固定給を一般の金融機関並みに引き上げるかして、まずは定着率をあげることです。そしてじっくりと営業マンの質を上げていくしかないのではないでしょうか。
しかし、これには生命保険会社の多額の投資が必要になってくることは火を見るより明らかです。

現状を見る限り、多額の投資をするより現状に甘んじているということでしょう。要するに、内勤社員的には一流、営業マン的には三流という特異な業界体質は従来からであって「それが生命保険業界である」と頑なな考え方が経営陣にあるのではと思わざるを得ない、ということでしょうね。