(本記事は、久慈直登の著書『「売れる営業」のマインドセット』株式会社CCCメディアハウス2019年5月1日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

マイナスな出来事をどう受け止めるか

ビジネスNo.1理論
(画像=SFIO CRACHO/Shutterstock.com)

自分のマイナス(短所)をプラス(長所)に変えることで、私はトップセールスとなる基礎を築いてきたと述べました。

「マイナス」も考え方ひとつで「プラス」に変えられる――それは、日々の営業活動においても常に心がけてきたことです。

たとえば、準備万端整えていたのに、面会のお約束が先方の都合でキャンセルされたとします。それは、いいように避けられているのかもしれない。また、契約寸前までお話が進んでいたのに、突然断られることもあります。ライバル他社に契約を奪われることだってあるかもしれません。

このように、目の前で起きたマイナスな出来事をどう捉えるのか。それもまた、営業を続けていくうえで重要なポイントです。

もしかしたら、避けている方だって「申し訳ないな」と思っているかもしれない。また、「今回は断ったけれど、次の機会があればあの人と契約を結んでもいいかな」と思ってくださっている可能性もあります。

要は、ピンチをピンチとだけ捉えずに、その状況を受け入れて、「これはチャンスかもしれない」と心を切り替えることです。

ご親戚の関係などで他社の保険に加入されているお客さまなどは、いくらお願いしても無理なものですが、ご親戚の方が退職されると、急にこちらの提案内容を前向きに検討してくださることもありました。

このように、一度断られても、時間がピンチをチャンスに変えてくれることだってあります。地道で息の長い営業を続けていれば、いつか思わぬ実を結ぶことがあるのです。

ピンチをチャンスと捉えるために

逆に、なにもしないうちに突然目の前にハッキリと現れるチャンスは、はかないもののように思います。初対面でポンと契約をいただいたお客さまほど、あっという間に解約されることが多いからです。

タナボタのような成果を、私はあまり歓迎しません。たしかに喜ばしいことではありますが、保険という商品は長く続けていただくことに意味があるからです。

ピンチからの逆転で得たチャンスほど、後々、大きな果実となって返ってきます。それを実現させるためには、「ピンチこそチャンスだ」と気づく力を養うことが重要です。

ピンチをチャンスと捉えるためにはどうすればいいのか。そこには営業職としてのマインド維持が大きくかかわってくると、私は思うのです。

まずは、自分を肯定することから始めなければなりません。新人時代、会社からアテにもされず、契約を取れないままスゴスゴと帰る道すがら、落ち込むことがよくありました。

でも、そのとき「自分が自分を信じてあげなくて、誰が信じてくれるのだ」と思うようにしたのです。矢野恒太の生き方に感銘し、好きで始めた営業です。「私は辞めませんから」と、お目にかかる方、一人ひとりに伝えてきたのです。些細な失敗が続いたくらいで、投げ出すわけにはいきません。

「小事細事に大事は宿る」と言います。日々のなかで味わう挫折を克服していくことは、私の営業人生にとってかけがえのない財産となっていきました。

1年半で営業主任となり、2年目からはキャンペーンで入賞し始め、3年目には「首里に玉城あり」というフレーズまで頂戴するようになったのですが、その間にも数々の「マイナス」が襲いかかってきました。

しかし、私はそのたびにこう自分に言い聞かせてきたのです。

「私は成長株である」

「だから、経験したことはすべて勉強だと思え」

「勉強は自分への投資であり、成長するための推進力なのだ」

物事をポジティブに捉えることの大切さは、多くの心理学者が科学的な根拠をもとに語っています。まさにそのとおりだと私も思います。

「前向きな言葉」のすごい力

たとえば、来る日も来る日も契約が取れなかったとき、私は前向きな言葉を自分にかけてあげました。それだけで、カラダのなかの小人さんたちが活気づいて、力を発揮してくれるからです。

日々の営業活動のなかでも、「30軒も断られたのだから、31軒目にはいい人とめぐりあえるわよ」などと、声に出して話しかけていました。そうやって、実際に契約が取れたことだってあります。「やっぱり、言葉の力ってすごいな」と思ったものです。

日本には「言霊信仰」というものがありますね。言葉には霊力が宿っていて、口に出すことが実現するという考え方です。私はその信者だと言ってはばかりません。

その「信仰」は、行動にも反映されていきます。私は、前向きに仕事に取り組んでいる人以外とは、なるべく距離を置いていこうと決めました。

契約が取れないと、どうしても弱気な言葉が口をついて出てしまい、愚痴っぽくなってしまいます。そういう人たちの輪の中に入ってお付き合いしていると、自然と自分も同調してしまいそうになるからです。

私はけっして、そういう後ろ向きの仲間とは行動を共にしない、前向きな人とだけ一緒にいることにしたのです。

言葉選びは本当に大事です。元気の出る言葉を発して、自分の細胞に言霊のパワーを注入すれば、目の前の世界が変わっていくような感覚になるのですから。

落ち込んだときこそ本を読もう

「あなたは営業には向いていない」――この仕事を始めるときに周囲からさんざん忠告された私は、思いどおりに契約が取れない日々のなかで「やっぱりそうなのかな」と悩んだこともありました。自分の性格は自分がいちばんよくわかっている……そう考えれば考えるほど、「無理かもしれない」と弱気になったものです。

でも、果たしてそうなのか。頭のなかでそう思い込んでいるだけで、本当は自分にとって営業は天職かもしれない。この仕事を続ける決意をしたときのことを思い出しては、私はこのように自分を説得してきました。

落ち込んでストレスがたまり、精神的にどうしようもなくなることも多々ありました。でも、営業という職種は、ある意味「ハイな状態」を維持しなければなりません。いくら気分が乗らないからといって、暗い顔をしてお客さまと対面していては、取れる契約も取れなくなってしまいます。

人間誰しも、ハイの状態を続けられるわけがありません。だから、「ちょっと憂鬱になってきたな」と感じたら、私は気持ちを落ち着かせ、バタバタせずにじっとしておこうと割り切ることにしていました。

営業をやっていると、「人にはバイオリズムがある」ということを思い知らされます。うまくいかないときは、何をやってもダメです。

そんなときは、怠けることも大事な軌道修正になると思うのです。ただ、漫然と公園のベンチに座ったり、喫茶店で時間をつぶしたりしていては、本当の修正にはなりません。音楽を聴いたり、映画を鑑賞したりする人もいるでしょうが、それは気分転換にはなるかもしれないけれど、根本的な解決にはならないと思います。

そんな、迷いや困惑に支配されているときこそ、知識や情報を吸収する絶好の機会です。私は落ち込んだとき、決まって書店に立ち寄り、成功した経営者たちの伝記や人生の指針になるような啓蒙書を買いあさり、むさぼるように読みました。

好不調の波が下降しているときこそ、読書は深く自分を見つめ直す最適の処方箋になります。偉大な先人の逸話には、自分の現状と照らして参考になる言葉がちりばめられています。

バイオリズムが最底辺にあるときこそ、自分を成功に導いてくれるヒントを得るための絶好の機会であり、読書は長くそこにとどまらないようにするための起爆剤にもなるのです。

読書の有効性については、第3章でさらに詳しく述べることにします。

「心は自分自身の力で変えられる」

私は本章で数多く「マインド」という言葉を使ってきました。営業にとって最も大切な要素がこのマインドであると、私は信じています。

では、それは何を指す言葉なのか。同じような意味の「メンタル」や「スピリット」という言葉もありますが、「マインド」は少しニュアンスが異なります。

メンタルやスピリットという表現は、よく「精神」とか「魂」という日本語に置き換えられます。そこには、人間が生来持っている自然発生的なものという意味合いがあるのではないでしょうか。

いっぽうマインドとは、「人が意識的に形作る心であり、そこには実践が伴う」と私は解釈しています。言語学的に正しいかどうかはわかりませんが、本書で言う「マインド」はそういう意味だとご理解ください。

米国の心理学者、ウィリアム・ジェームズ博士は次のような名言を残しています。

「心が変われば行動が変わる。行動が変われば習慣が変わる。習慣が変われば人格が変わる。人格が変われば運命が変わる」

営業で思い悩んでいた頃に出会ったこの言葉は、私を大いに勇気づけ、育ててくれました。

心は自分自身の力で変えられる――私が飛び込み営業を克服し、そこから多くのことを学び、成長できたのは、まさにこの言葉を日々反芻しながら生きてきたからにほかなりません。

では、どうやったら心を変えられるのか。私の経験から、そこにはまず「気づき」がなければならないと考えています。気づくことができれば、「思考」が生まれ、初めて心を変えられるのだ、と。

そのためには、自分の意識のなかの「アンテナ」を磨いておかなければなりません。マイナスをプラスに転化するためのきっかけに気づき、ピンチをチャンスだと思えるようにするスイッチにいつも手をかけておく感性がなければ、自身に起きた出来事や目の前にある現象を見過ごしてしまうことになります。

成功の秘訣はマインドにあり

営業職なら一度は聞かされたことのある有名な「たとえ話」がありますね。

「アフリカに行った靴屋さん」のお話です。私はこれ、大好きなんです。

ご存じない方のためにご紹介しましょう。

ライバル同士の靴店、A社とB社の営業がアフリカへ靴を売りに行き、そこで見た光景に2人とも啞然とします。

なぜなら、そこで暮らす人々は誰もが裸足だったからです。

A社の営業は「誰も靴を履いていないのだから、ここには市場はない」と判断して引き揚げます。いっぽう、B社の営業は「誰も靴を履いていないのだから、靴の良さを知れば必ず売れる」と考え、セールスを開始するのです。

同じ光景を見ても、人によってその捉え方はまちまちです。一見、マイナスと思える状況も、ちょっとした「気づき」によってプラスに転換できる――それが営業の成否を決め、会社の業績をも左右するのです。

事なかれや否定的な発想に慣れてしまうと、負のマインドが形成されてしまい、人間はどうしても思い切った行動がとれなくなってしまいます。

マインドづくりがしっかりできている営業ならば、必ずB社のような決断をするはずです。

「ピンチをチャンスへ」「マイナスをプラスへ」――私は仕事を通じて、常にその意識づけだけは忘れないようにしてきました。そうして、「成功へのプロセス」を見出してきたのです。

「売れる営業」のマインドセット
玉城 美紀子(たまき・みきこ)
第一生命保険株式会社安里営業オフィス・シニアエキスパートデザイナー。
全世界の生命保険営業職トップ6%のメンバーで構成されるMDRT(Million Dollar Round Table)終身会員、CFPファイナンシャルプランナー。
沖縄県那覇市出身。幼少期に父を亡くし、小さな雑貨店を営む母親に女手ひとつで育てられる。中学生で母の元を離れ、牛乳屋を営む叔父の家で毎朝牛乳配達をし、従妹たちの子守をする生活に。高校卒業後、地元の銀行に就職(事務職)するが、結婚・出産を機に退職。
再就職活動中の26歳のとき、第一生命のセミナーに参加。創業者・矢野恒太の志に共感して、コミュニケーション下手のため避けていた「営業職」として入社することを決意。営業経験なし、ゼロからのスタートで、入社直後はまったく結果が出なかったものの、独自のマインドと方法を確立しながら3年後には頭角を現し、5年目にはトップセールスに。以来、営業一筋38年。2001年にMDRTに初選出(沖縄では初)されて以来、これまでに通算17回選出されている(10回以上の選出で終身会員)。
「営業とは一生懸命、人の話を聞くこと」が信条。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます