(本記事は、岩下 智の著書『面白い!のつくり方』CCCメディアハウスの中から一部を抜粋・編集しています)
面白い表現をするためのステップ
おいしい料理を作ろうと思ったら、まずはメニューを考えたり、レシピを調べたり、いい素材を揃えたりしなければいけません。
スポーツで良い結果を出そうと思ったら、何の準備もなく試合に臨むわけにはいきません。まずは普段の練習が必須であり、それ以前に準備運動が必要であり、さらに遡れば普段のコンディション作りから必要になります。
どんなことでも、物事には然るべき手順というものが必要なのです。これは、「面白い表現」も同じです。では、「面白い表現」に必要な手順とは、どんなものでしょうか。
「面白い表現」ということに限らず、何かを表現する際には「インプット」と「アウトプット」という段階が必要になります。人間は、自分が過去に経験したことや、それまでに得た知識や情報などをつむぎ合わせることでしか、新しいものを生み出すことはできないからです。つまり、無から有を生み出すことはできないのです。
アイデア発想のメソッドとして有名な『アイデアのつくり方』の中で、著者のジェームス・W・ヤング氏はこう言っています。
「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」
この本の原著が書かれたのは1940年ですが、この考え方は、今でもアイデア発想の定説として不動のものとなっています。この言葉からもわかるように、「インプット」なき「アウトプット」は、存在しないのです。
しかし、普段から意識してインプットしていない人がいきなり「インプットしよう」と思っても、なかなか簡単にできるものではないでしょう。とにかくインプットしようと躍起になったところで、闇雲に取り組むのは効率的ではありません。
いいインプットをするためには、そのための準備が必要なのです。この準備を意識して行うかどうかで、インプットの効果・効率は大きく変わってきます。
そんなことを踏まえながら、面白い表現をするために必要なプロセスというものを、私なりに考えてみました。インプットの準備段階から考えて、次の5つのステップに分けられます。
①「余裕」を持つ
②「よそ見」をする
③「観察」する
④「法則化」する
⑤「表現」する
何ということもないプロセスのようにも思えますが、メソッドというものは、できるだけシンプルに、実生活で応用できるものでないと意味がありません。世の中の多くの方法論は、より実践的な「手法」を提示しているものがほとんどです。しかし、「手法」ももちろん大事なのですが、まずはそのための「心構え」から入らないことには、実践にたどり着くことすらできないのではないかと、私は考えています。
④の「法則化」以降は、面白い表現のための重要なステップになりますので、次の章でページを割いて説明したいと思います。まずは、その前段階となる3つのステップについて説明していきたいと思います。
主な仕事に「Honda FIT」「KIRIN のどごし夢のドリーム」「bayfm SAZAE RADIO」など。国内・海外の広告賞受賞多数。筑波大学非常勤講師。
著書に「EXPERIENCE DESIGN」「IDEATION FACTORY」(どちらも共著/中国伝媒大学出版社)。
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