(本記事は、岩下 智の著書『面白い!のつくり方』CCCメディアハウスの中から一部を抜粋・編集しています)

面白さの「多様性」について

多様性
(画像=PIXTA)

「個」の重要性について考える上では、昨今さまざまな分野で注目されている「多様性」に関しても、少し触れておきたいと思います。これは主に、生物そのものや、人種や性別などに使われる言葉です。しかし、もう少しだけミクロに見るならば、「面白さ」ということについても、もっと多様であるべきだと考えています。

最初の方に「面白さコンプレックス」という話をしました。例えば、自分の面白さに自信がないので、会議で思い切った意見やアイデアを通すことができない、という人もいるでしょう。SNSでも、積極的にコミュニケーションすることに苦手意識を感じてしまう、という悩みを持っている人も多いのではないでしょうか。こうしたことは、おそらく多くの人が抱えている悩みです。

しかし、「面白さ」の「正解」は無限にあるわけですから、他人から「面白くない」と言われたとしても、正直あまり気にする必要はないのです。それは単に、相手と「面白さのツボ」が違うだけかもしれませんし、世界のどこかには、自分と同じ感性を持った人が必ずいるはずです。

そしていま、世の中のあらゆる分野で「分散化」が進んでいく中、個人の「面白さ」にもチャンスがどんどん広がっています。例えば、TikTokです。

TikTokが流行っている理由としてよく言われているのは、「基本、口パク動画だからネタを考える必要がなく、気軽に投稿しやすい」ということと、「初心者でも、投稿すれば最初はトップの方に表示される」ということです。他にもいろいろ理由はありますが、少なくともこの2つは、YouTubeなど他のメディアと異なる点です。言うなれば「多様なユーザーに平等に開かれたメディア」であるということがわかります。

その他にも、例えば漫画やイラストなどの投稿サイトも、多様な「面白さ」に開かれたメディアであると言えます。私も、実際に漫画を描いて投稿してみるまではあまり知らなかったのですが、実はいろんなアプリやサイトがあります。作品さえあれば、誰でもすぐに投稿できるようなプラットフォームが、たくさん用意されているのです。これもまた、分散化したコミュニティです。

いまや「面白い表現をする」ということにおいて、世の中に向けて発表するチャンスは、いくらでもあるのです。こうした仕組みがもっと広がっていけば、あらゆる分野の趣味や学問、職業などにも応用されるかもしれません。コミュニティが分散化して多様化すればするほど、あらゆる人に、その人なりの「面白さ」を活かすチャンスが開かれるのです。

面白い!のつくり方
岩下 智(いわした・さとる)
1979年東京生まれ。筑波大学芸術専門学群視覚伝達デザイン専攻を卒業後、2002年電通に入社。以来、アートディレクターとしてグラフィック広告のみならず、TVCM、Webサイト、アプリ開発、プロダクトデザイン、サービスデザイン、ゲームデザインなど様々な仕事に携わりながら、自らイラストやマンガも描く。
主な仕事に「Honda FIT」「KIRIN のどごし夢のドリーム」「bayfm SAZAE RADIO」など。国内・海外の広告賞受賞多数。筑波大学非常勤講師。
著書に「EXPERIENCE DESIGN」「IDEATION FACTORY」(どちらも共著/中国伝媒大学出版社)。
https://s-iwashita.myportfolio.com

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