不動産を保有する場合の代表的なリスクは「天災リスク」「金利上昇リスク」「建築リスク」などです。不動産の中でも収益不動産の場合は、「空室リスク」「賃料下落リスク」「賃料滞納リスク」「入居者信用リスク」などが加わります。さらに不動産をすぐに資金化できない「流動性リスク」もリスクの一つです。

不動産の運用において流動性リスクは意外と見落とされがちなため、正しく理解して対策しておくことが重要です。本記事では不動産における流動性リスク、その回避方法について解説します。

流動性リスクとは?

不動産売却
(画像=vittaya-25/stock.adobe.com)

「流動性リスク」とは金融・投資専門用語で「リクイディティリスク(Liquidity risk)」とも呼ばれています。主に資金が必要なときに資金化できず、高金利で資金調達をせざるを得ない状況に陥り損失を被るリスクのことです。また「市場で思うように取引できない」「不利な価格で取引せざるを得ない」といったリスクのことも指します。

例えば、資金が必要なのにもかかわらず市場規模や取引量が小さい場合、すぐに売れず損失を被るケースです。保有している不動産が自社ビルだった場合で考えてみましょう。事業規模拡大につき自社ビルを売却して資金化し、新しいビル購入の費用に充てたいといったケースが考えられますが、都市部から離れた場所にある流動性の低い物件だと売却しようとしても買い手がつかず、そもそも資金化することができません。

また、株式や債券などの場合、売却しようと思ってもすぐに売れず損失を被る場合があります。不動産取引における流動性リスクを知るためには、株式など他の投資商品との違いを明確にしておく必要があります。投資商品の代表格は株式ですが、株を買う行為は証券会社を通して上場された個別銘柄株式を購入するのが一般的です。

日本には4ヵ所の証券取引所(東京、名古屋、福岡、札幌)があります。東京証券取引所の中には大きく分けると4種類の市場(東証1部、東証2部、マザーズ、JASDAQ)があり、株式の売買が行われるわけです。このような取引所を介した取引を「取引所取引」といいます。

<株式取引のフロー>

不動産売却
(画像=自社ビルのススメ編集部)

「なぜ取引所が必要なのか」といえば、膨大な数の株式の需要と供給をバランスさせ公平な価格の形成とともに公正な流通を図るためです。取引所取引が行われているのは、株式・債券・ファンドなどの金融商品のほか穀物、貴金属、原油、卸電力などのコモディティ(商品)があります。

不動産取引の仕組みはどうなっているのか

取引所取引ではなく売り買いの当事者が直接交渉して行う取引を「相対取引」といいます。不動産の取引は取引所が存在しないため、すべて相対取引によって行われているのが特徴です。不動産は金融商品ではなく実物資産ですが、穀物や金属のように代替可能性を持っていないため取引所取引は成立しません。「不動産はまったく同一のもの」ということはありえないため、「一物一価の法則」が成り立ちません。

同じ面積、同じ間取りの区分マンションでも階数や場所などで別物になってしまうためです。それでは、不動産はどのように取引されているのでしょうか。まず不動産を売りたい売主は、不動産仲介会社(宅地建物取引業者)に依頼し不動産会社が買主を探します。逆に不動産を買いたい買主は不動産仲介会社を通じて不動産を探すのが一般的です。

このような不動産会社同士をマッチングさせるのが、国土交通大臣の指定を受けた「指定流通機構(レインズ)」です。もちろん不動産仲介会社に頼らず個人同士が売買することもできますが、現実的には困難なことも多いため、実際上は不動産仲介会社に依頼することになります。

〈不動産取引のフロー〉

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(画像=自社ビルのススメ編集部)

不動産取引のフローは工程数が多くなるため、取引時間中に価格がマッチすれば瞬時に売買できる株式のようには資金化することができません。そのため売却するまでに数週間から数ヵ月、場合によっては数年かかる可能性があるのです。もう一つ流動性に大きな影響を与えているのが不動産の価格です。

2018年10月1日から上場株式の最低売買単位は100株へ統一されたため、銘柄によって異なりますが株式は数万円から取引可能です。しかし実物不動産の場合は最低でも数百万円、一般的には数千万円から数億円の価格になることがあります。具体的には都市部の自社ビル1棟の価格は一般的には数十億円という金額になることが少なくありません。不動産は株式やコモディティなど売買市場がある金融商品に比べると流動性リスクが高いことが分かります。

流動性リスクをヘッジするには

企業にとって保有する不動産は「資産」です。また、いざというときに資金に変えて経営を支えてくれる存在ともいえます。しかし必要なときに不動産をすぐに換金できないのでは、企業経営にとって逆に「重荷」となりかねません。そのため以下の3つの点に注意しながら不動産の持つ流動性リスクをなるべくヘッジさせる必要があるでしょう。

  • 需要の高い物件を選択すること
  • 立地が最重要
  • 流通しやすい価格帯

1.需要の高い物件を選択すること

事業用のオフィスビルであれば実需用、収益用のいずれにしても事業に適した物件でなければなりません。具体的には以下のようなポイントを押さえておきましょう。

  • 外観が美観
  • 一定以上の面積が確保されている
  • 管理が充実している
  • 共用部が衛生的で整備されているなど

一言でいうと「入居する企業のブランディングに役立つ物件」ということが重要になります。

2.立地が最重要

1の条件を成立させる最重要項目は「立地」です。どんなに立派な建物でもビジネス展開において将来性の見込めないエリアに建っていれば需要は低くなるため、売却も難しくなります。地名を聞いてもピンとこないエリアではなく、東京都心の商業地や誰もが知っている地名に狙いを定めるのが賢明です。

3.流通しやすい価格帯

1と2の条件と矛盾するようですが、ブランド化されたエリアに建っている高品質なビルでも数十億円、数百億円という金額になると、買い手はどうしても「機関投資家」「ファンド」「超大手企業」などに限られてしまいます。これが数億円という価格帯であれば買い手は個人も含めて広がるため、流動性リスクを下げることが期待できるのです。

以上のように、「テナントのニーズに合う物件」「立地がいい」「求めやすい価格帯」という条件をクリアできる不動産のひとつに「区分所有オフィス®」という商品があります。「区分所有オフィス」は、賃貸需要の高い立地に建てられた高品質な中規模ビルを1棟まるごとではなく「フロアごと」「部屋ごと」に区分して分譲した不動産商品です。価格も中心価格帯が数億円で、同クラスのオフィスビル1棟が数十億円の価格帯であることと比べると、イニシャルコストは10分の1程度に収まります。

「区分所有オフィス」は都心部の物件ということで資産としての価値が高く、かつ下がりにくいという面から仮に売却することになったとしても安心です。以上のことから、不動産売却の際の流動性リスクを回避するためにも「区分所有オフィスを保有する」という手段は賢い選択の一つといえるのではないでしょうか。

※「区分所有オフィス®」は株式会社ボルテックスの登録商標です(提供:自社ビルのススメ


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