◉種類株式の具体例


抽象的な説明だけではわかりにくくなりますので、典型的な種類株式の例を提示します。

例えば、会社経営に対してあまり興味はないものの、会社が生み出す利益に興味がある投資家がいた場合、その株主に対しては、議決権を制限しつつも、利益配当を優先する内容の種類株式を発行します。
投資家としては、会社の経営に興味がないので議決権がなくともあまり気にすることはないと思われます。一方、会社にとっては、議決権制限株式とすることで会社の経営に口出しをされないというメリット、利益で優先する分、株価を高く設定することができるなどのメリットがあります。

このように種類株式は、権利内容を特殊なものとすることによって、会社にとっては資金調達をしやすくし、投資家にとってはそれぞれのニーズに合わせた魅力的な株式を得ることができるものとなります。投資家は日本の会社の99%を占める非上場の会社の場合には、銀行や身内の方になるかと思われますが、これら身内の方に株式を引き受けてもらう場合にも、議決権制限株式(兼配当優先株式)を発行することで、会社経営権に影響なくして出資を募ることができるなどの使い方が期待できます。


◉種類株式は登記される


種類株式の内容は法務局(登記所)で登記されます。具体的には、以下のような形で登記されることとなります。
(ご参考: 法務省ホームページ

種類株式としてどのような株式を発行することが会社の経営にとって有利であるかは、経営コンサルタント・税理士・あるいは私たち行政書士と縁が深い建設会社様などであれば、行政書士に相談していただくことでアドバイスを差し上げることも可能です。
また登記申請の代理手続きは、司法書士に業務独占権がありますので登記申請の手続きは司法書士に代理を依頼することもできますが、必要書類自体は簡易ですので、法務局で一度打ち合わせる程度で自社処理として申請することが可能です。

また、種類株式を登記する際に最も重要なことは、登記の手続きではなく、資金調達の必要性や議決権割合の維持、税金、種類株式の意味内容や引き受け手のニーズにあった種類株式などをアドバイスしてくれる専門家です。


◉種類株式は多様な使い方がある


今回は種類株式の意味や典型的な利用方法の例を出してご説明しましたが、新聞などでよく聞く、三角合併や100パーセント減資などといった、複雑な手続きにも種類株式は利用されることがあります。
他にも、プットオプションやコールオプション・VIP株やヒーロー株などといったユニークな名称の種類株式もあります。そして、このような種類株式を戦略的に使用することで、会社経営をより効率的に行うことが可能となります。

次回以降はより具体的な種類株式の使用方法を説明していきたいと思います。

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BY S.K

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