(本記事は、horishinの著書『ズボラでも絶対できる 不労所得生活!』ぱる出版の中から一部を抜粋・編集しています)

不動産投資の本質は、節税ではないことをまずは知る!

不動産投資
(画像=Pachai Leknettip/Shutterstock.com)

不動産会社の営業トークとして「節税で投資用不動産を買いませんか?」と言われた経験はありませんか?実際、この営業トークを使う営業マンは非常に多いです。

このトークの具体的なメリットは「税金還付」です。

結論から言えば、税金還付を受けても、売却時に支払う税金がその分増えるだけで、あなたがトータルで支払う税金はほとんど変わらないのです。

つまり、後でしっぺ返しを受けるわけですね。その理由を、今から説明していこうと思います。

オーナー側で、節税額を調整できる大きな項目は、「減価償却」です。「今、節税したい!」と思うなら、節税テクニックとして「減価償却を大きくする」のが王道です。

まず、減価償却の考え方を、簡単に説明しましょう。

次の図を見てください。

図1
(画像=ズボラでも絶対できる 不労所得生活!)

例えば、物件の建物を500万円の融資で購入したとします。仮に償却年数が5年と仮定した場合、500万円の5分の1ずつ、つまり100万円を、減価償却費として5年間毎年経費計上できます。

この毎年定額で経費計上できる方法は「定額法」と呼ばれており、平成28年4月1日以降に取得した不動産(建物)については、「定額法」でしか償却できないようになっています

しかも、この500万円は融資で調達しているので、自己負担なく経費計上できる「魔法の経費項目」なのです。

不動産投資の場合、土地と建物を一緒に購入するケースが多いと思いますが、土地は償却できず、建物部分を償却していくことになります。

そうすると、購入した不動産のうち、建物部分の金額を大きくすれば、償却できる金額が大きくなります。建物部分を大きくするためには、総体的に土地部分を小さくすればいいわけですね。その方法を説明しましょう。

例えば、次のような物件を購入したとしましょう。

・購入物件:東京都港区表参道の新築RCワンルームマンション
・価格:3000万円
・土地面積:200平米
・総戸数:20部屋

土地と建物を合わせて3000万円。このうち土地部分の価額を計算してみましょう。

土地の価額評価には色々ありますが、ここでは「固定資産路線価」「相続税路線価」を採用してみましょう(各評価の説明は、ここでは割愛します。分からない場合はGoogle先生に聞いてみてください)。

表参道でこれらの価額を調べてみると、次のような値になります。

・固定資産路線価:120万円/平米
・相続税路線価:160万円/平米

土地価格を小さくしたいので、単価が小さいほうを採用します。そうすると、土地の時価は、次のように計算できます。

・土地の時価=120万円×地積×持分=120万円×200平米×(1/20)=1200万円

全体価格から土地の時価を差し引くと、建物の時価が算出できます。

・建物の時価=3000万円-1200万円=1800万円

一方、相続税路線価を採用した場合は、建物の時価は1400万円となります。

つまり、減価償却できる金額に400万円の差がでてくるわけです。その分、より節税できるようになりますよね。

さらに、建物は「建物本体」と「建物附属設備」に分解できます。償却期間=法定耐用年数と定められていますが、RC構造の建物の法定耐用年数は47年、建物附属設備は15年となっています。

建物を「本体」だけとみなして償却することもできますし、「本体」と「附属設備」に分解して償却することもできます。

親切な業者さんであれば、不動産を購入した際の明細に、本体と附属設備の価額を記載しています。が、記載していない場合も結構あります。

では、記載していない場合にどうすればいいか?

顧問税理士に確認したところ、「本体:附属設備=7:3」以下であれば、経験則的に認められるケースが多いようです。

先ほどの表参道のマンションを事例に、この比率を採用して「本体だけの場合」vs「本体+附属設備」で減価償却費を比較してみましょう。

【本体だけの場合】
・減価償却費:1800万円÷47年=38.3万円

【本体+附属設備の場合】
・本体部分の価額:1800万円×(7/10)=1260万円 ・本体部分の原価償却費:1260万円÷47年=26.8万円 ・附属設備部分の価額:1800万円×(3/10)=540万円 ・附属設備部分の原価償却費:540万円÷15年=36万円

以上より、

・建物全体の原価償却費=26.8万円+36万円=62.8万円

両者で、約25万円の差です。附属設備の償却期間は本体と比べてかなり短く、その分単年の償却費が大きくなるからです。

ただ、15年を過ぎると、附属設備部分の償却が終わってしまうので、反対に16年目以降は、単年の償却額は本体部分だけになってしまいます。

つまり、節税効果が小さくなってしまうわけです。

さて、ここまで節税の方法ばかり書いてきましたが、冒頭のしっぺ返しの話(本論)に入っていきましょう。

ちなみに、このしっぺ返しの話は、節税を謳う営業マンは絶対に言ってきません。節税を売り文句にできなくなるからですね。

しっぺ返しは、売却時にやってきます。初心者によくあることですが、売却の利益について勘違いされている方が結構います。

というより、営業マンの売却シミュレーションも、同じような記載になっているときがあります(笑)。あなたも、次のように考えていませんか?

・売却の利益=売却額-残債(残りの借金額)

これ、完全な誤りです。

税務上の売却益(譲渡所得金額)は、ざっくり次のように計算されます(論点を分かりやすくするため、簡略化しています)。

・譲渡所得金額=売却額-簿価

売却額から引かれるのは、「残債」ではなく「簿価」なのです。

では、簿価とは、何でしょうか?

ズバリ、「購入額から原価償却した分を差し引いた金額」です。つまり、減価償却すればするほど、簿価が減っていくというわけです。

そうすると、節税のために減価償却を大きくしていくと、売却しようと思ったときに、簿価が大きく下がってしまっていることになります。

その結果、「残債はそれほど減っていないのに、売却益がとんでもなく大きくなってしまった!」という事態を招いてしまうことは、容易に想像できますよね。

したがって、売却を想定している方は、「今、本当に節税すべきか?」を考えて、節税していく必要があります。

個人的な考えとして、年収900万円以上であれば税率が高くなるため、売却時に支払う税金を考慮してもトータルで支払う税金額が少なくなり、今節税するメリットは大きいと思います。

一方、年収が900万円以下の人であれば、今節税することによるしっぺ返しを考えながら、節税していく必要があるでしょう。

ただし、保有し続けて売却を想定していないということであれば、話は別です。

そもそも売却しないので、売却益を考える必要がないからです。そういうオーナーさんは、思いっきり節税しちゃいましょう(笑)。

ズボラでも絶対できる 不労所得生活!
horishin(ホリシン)
「The Cash Academy」代表。1980年、和歌山県生まれ。大学院修了後、日系大手シンクタンクに入社。数回の転職を経て独立し、現在に至る。2014年より、区分不動産投資をスタートし、2015年からは1棟不動産投資へシフト。2018年現在、8棟106戸+区分5戸=計111戸の物件(約10億円の資産)を所有するに至る。「精神的にも物質的にも豊かな人生」を目指し、不動産を中心とする複数のストックビジネスを実現・拡大すべく活動している。
【投資ポートフォリオ】国内区分不動産、国内1棟不動産、海外積立、ヘッジファンド、仮想通貨、ベンチャー事業など。
【保有資格】弁理士、中小企業診断士。

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