②機関投資家は証券会社にいくらで買えるか聞く〜複数の証券会社に引き合う〜
複数の証券会社からオファーシートをもらい、その中に投資家が買ってみたい銘柄があった場合、その証券会社に実際の売り値をヒアリングします。それで投資家の買いたい値段と一致すれば売買成立となるのですが、投資家は「出来るだけ安く買いたい」というのが本音です。
債券なんて銘柄さえ同じであればどこの証券会社で買っても値段以外に付加価値はないのですから、当然と言えば当然です。
なので、複数の証券会社に「この銘柄お持ちですか?いくらで売ってくれますか?」とヒアリングをかけていきます。
マーケットは常に動いているので、証券会社の在庫も刻一刻と変動していて、前日もしくは朝一にもらったオファーシートに在庫として載っていなくても数分前に投資家から買ったというケースもあるためです。
③数量と価格がマッチする証券会社から買う〜ネゴシエーションができる〜
そうして、複数の証券会社を天秤にかけながら、一番売り値が低かった証券会社から債券を買うのです。また、このときに業者をあおるような投資家もいるようです。
「もう一つの証券会社は0.65%で売ると言っていますが、御社は0.63%までで限界ですか?」こうやって競争心をあおったりネゴシエーションしたりしながら、できるだけ安い値段まで売り値を下げさせようとしているのです。
株のような電子的な世界ではなく、対人のネゴシエーションから売買が生まれていくのが日本の証券会社対投資家の取引現場なのです。最近では国債取引などでは円債ドットコムといったBtoCの電子取引プラットフォームも出来つつあるようですが、まだまだ大部分は電話でのネゴシエーションです。
ちょっと難しい話になりますが、機関投資家は場合によってはその銘柄の発行額の2割とか3割とかを一気に買うなんてこともそれなりの頻度で存在していて、これを「発行額の3割買います」なんて、電子取引プラットフォームに晒そうものなら、「じゃあ値段をつり上げてしまえ!」とみんな売らなくなってしまったりする可能性があるため、大きなロットでの取引は電子取引には不向きだからです。
というわけで、電話での取引というと前時代的に聞こえますが、当面は電話取引が続くことでしょう。
次回は「証券会社」の立場から債券市場を眺めてみたいと思います。
【債券投資の教室シリーズ】
債券投資の教室vol1〜証券会社の債券ビジネスのカラクリ〜
債券投資の教室vol2〜預金?国債?社債?個人投資家が知っておくべき債券の比較法〜
債券投資の教室vol3〜個人投資家にとって債券市場が身近でない3つのワケ〜
債券投資の教室vol4〜孫正義氏の辣腕とソフトバンクが発行した4000億円の「個人向け社債」〜
債券投資の教室vol5〜変動型個人向け国債が圧倒的に有利な3つのワケ〜
債券投資の教室vol6〜債券取引の現場、機関投資家が債券を売買するとき〜
債券投資の教室vol7〜債券取引の現場、証券会社が債券を売買するとき〜
BY gel