「座って仕事をする」という当たり前の行動も、度が過ぎると健康を損なうリスクを高めてしまいます。では、デスクワークを行う人の健康を維持するには、どのような対策を練れば良いのでしょうか。
今回は、近年注目されている「座り過ぎ」の問題について、最近の研究結果から考えてみましょう。

座り過ぎで死亡リスク40%上昇 心筋梗塞、脳梗塞、がんを誘発

(写真=Monkey Business Images/Shutterstock.com)
(写真=Monkey Business Images/Shutterstock.com)

「座る時間が1日に11時間以上の人は、4時間未満の人より死亡リスクが約40%高くなる」。この衝撃的な研究結果が、2012年にオーストラリアで発表されました。調査をしたのは、シドニー大学のネヴィル・オーウェン博士のチームです。国内45歳以上の男女22万人を対象に3年近く追跡調査をし、この間に死亡した人の生活スタイルを調べたところ、座る時間と死亡率が大きく関係していることが分ったのです。

一体なぜ「座る」という行為が健康リスクを高めてしまうのでしょうか。長く座ったままでいると、身体の中で一番大きな筋肉の太ももや、足に下りた血液を心臓まで押し上る機能のあるふくらはぎを動かすことが少なくなります。それにより血流が悪くなり、血液中の中性脂肪が増えて生活習慣病のリスクを高めてしまうのです。

こうした習慣が長期にわたると、肥満、高血圧、動脈硬化などが進み、糖尿病や心筋梗塞、脳梗塞などの疾病を引き起こしやすくします。とくに日本は、世界で最も座る時間が長い国とされているため、注意しなければなりません。前出のシドニー大学によると、世界20ヶ国の成人を対象に平日の座位時間について調べた結果、日本人が最長で1日7時間となっています。
そのため、日本こそ「座り過ぎ」対策を早急に進めていかなければいけないのです。

(参照:座位行動の化学―行動疫学の枠組みの行動―

「立って働く」先進的企業の取り組み

欧米豪では、国を挙げての対策が進んでいます。企業では、デスクを立ち机(スタンディングデスク)に変える、椅子をバランスボールに変えるなどの対策が一般的です。グーグルやフェイスブックなどの有名企業でも、多くの従業員がデスクを立ち机に変えています。

こうした動きは日本でも始まっています。たとえば、楽天株式会社では、本社が新社屋に移転するのを機に従業員の机を一新。昇降式のデスクを約1万2,000台導入しています。
また、アイリスオーヤマ株式会社は、一部の拠点で「座った姿勢でのパソコン使用禁止」を決定。パソコンを使用する際は、専用のスタンディングデスクへの移動をルール化しています。

求められる経営者の意識変革

「座り過ぎ」問題については、日本でも少しずつ認知度が上がってきていますが、さらなる改善のためには経営者の意識変革が必要といえます。

コクヨ株式会社がビジネスパーソン1,012名を対象に行った調査(2018年9月28日~9月30日実施)によると、「座り過ぎを問題だと思う」と回答したのは従業員(経営者を除く正社員、契約社員、派遣社員などの合計)が80.0%だったに対し、経営者が53.8%と26.2ポイントの開きが見られました。

こういった調査結果からも、現場で働く従業員が問題解決を望んでいるのに対して、経営の側の意識が追いついていない図式が見て取れます。「働き方改革」「健康経営」が叫ばれている昨今、「座り過ぎ」問題解消を視点に入れた経営者の行動が求められているのではないでしょうか。

(参照:コクヨ株式会社 「『座り過ぎ問題』に関する調査」

(提供:自社ビルのススメ

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