国税庁は2020年4月6日、新型コロナウイルス感染症の拡大状況に鑑み、延長された確定申告期限の4月16日までに申告ができなかった場合、期限を区切らずに4月17日以降であっても柔軟に確定申告書を受け付けると発表しました。

確定申告会場の混雑緩和を徹底する観点から、感染拡大により外出を控えるなど期限内に申告することが困難な方を対象に、税務署に行けるようになった時点で申し出れば申告期限の延長の取り扱いをするといった内容です。

確定申告の義務がある人は、必ず行わなくてはなりません。国民には納税の義務がありますが、確定申告もその1つなのです。

「確定申告は面倒くさい」「この時期になると憂鬱になる」との声も聞こえてきます。既に大半の方が確定申告を終えているかとは思いますが、確定申告の意義を知り、上手に付き合っていきましょう。

そもそも確定申告とは?

確定申告,付き合い
(画像=PIXTA)

確定申告とは、1年間の所得税と復興特別所得税の額を確定させ、申告・納税する手続きのことを指します。

通常、給与所得者は確定申告をしていないケースが多いです。給与所得者の場合、前年分の所得をもとにその年の所得税を概算し、その概算に基づく税額を事業所が給与から代行徴収・納付する源泉徴収が行われています。

ただし、概算では本来支払うべき税額と異なるケースもあるため、年末調整によって源泉徴収額と正しい税額の差額を計算し、精算を行うわけです。

それでは、どのような人に確定申告の義務があるのでしょうか。以下のようなケースに該当した場合、申告の必要があります。

〈給与所得者の場合〉
・年間給与が2,000万円を超える人
・1ヶ所から給与をもらっている人で、その他(退職所得以外)の所得が20万円を超える人
・2ヶ所以上から給与をもらっている人で、サブの給与やその他の所得が20万円を超える人
・源泉徴収されない給与をもらった人
・同族会社の役員等で、その同族会社から貸付金の利子や資産の賃料をもらっている人
・災害減免法によって源泉徴収の猶予などを受けている人

〈年金生活者の場合〉
・厚生年金や国民年金など公的年金収入が400万円を超える人
・公的年金以外の所得が20万円を超える人

〈退職所得がある場合〉
・外国企業から受け取った退職金など源泉徴収されないものがある人

〈事業所得や不動産所得などがある場合〉
・所得から差し引ける金額(所得控除)や税金から差し引ける金額(配当控除)を差し引いてもまだ税金が残る人

2020年(令和2年)で変更になった点

税制は毎年改正されますので、確定申告の手続も変更になっている点があります。実際に申告される方は注意が必要です。

1.確定申告書への源泉徴収票の添付が不要に

これまでは給与所得者が確定申告をする際に、給与の支払総額や源泉徴収額などを確定申告書に記載するとともに、証明するための源泉徴収票を添付しなければなりませんでした。

しかし、2020年の確定申告(期としては2019年分)からは不要になります。また、5年間保存も不要になりました。

源泉徴収票と同じように不要になった書類としては、以下のようなものが挙げられます。

・オープン型証券投資信託の収益の分配の支払通知書
・配当等とみなす金額に関する支払通知書
・上場株式配当等の支払通知書
・特定口座年間取引報告書
・未成年者口座等につき契約不履行等事由が生じた場合の報告書
・特定割引債の償還金の支払通知書

2.「平成」を「令和」と読み替える新元号への読み替え措置

読んで字の如く、「平成」と記載されているものを「令和」と読み替える必要があります。

3.消費税の複数税率化にともなう手続き

昨年10月1日からの消費税増税にともない、8%と10%の複数税率制度が導入されました。消費税課税事業者は消費税の申告も必要ですが、その際、区分経理と区分記載請求書等保存方式が必要になります。

4.基礎控除引き上げと青色申告特別控除の引き下げ

これは期が2020年(令和2年)分、つまり2021年に確定申告をするときの話ですが、給与所得者や個人事業主などに関係なく、誰でも所得から差し引くことができる基礎控除が38万円から48万円に引き上げられます。

一方、青色申告特別控除の65万円の控除については55万円に引き下げられます。これまで65万円の青色申告特別控除を受けるためには、次の条件を満たす必要がありました。

・不動産所得か事業所得のいずれかがある
・事業を開始した際に「開業届」と「青色申告承認申請書」を提出している
・日々の取引を複式簿記で記帳している
・確定申告時に貸借対照表と損益計算書を添付する
・期限内に申告すること

ただし、2020年分以降は上記の条件に加えて次のどちらかをクリアすることで、控除額が10万円上乗せされ、65万円の青色申告特別控除とすることができるようになります。

①その年分の事業にかかる仕訳帳及び総勘定元帳について、電子帳簿保存を行っていること
②その年分の所得税の確定申告書、貸借対照表、損益計算書の提出を確定申告書の提出期限までにe-Taxを使用して行うこと

つまり、2020年分以降も65万円の青色申告特別控除を継続するためには、電子帳簿保存かe-Taxのどちらかを導入する必要があるということです。65万円の控除というのは大きな額になりますので、電子帳簿保存またはe-Taxを採用するメリットは大きいでしょう。

5.申告期限が4月16日まで延長

新型コロナウィルスの影響により、2020年は申告期限が4月16日まで延長されました。

※感染拡大により外出を控えるなど4月16日の申告期限内に申告ができなかった場合、期限を区切らずに4月17日以降であっても柔軟に確定申告書を受け付けられます。(参照:国税庁「確定申告期限の柔軟な取扱いについて

確定申告の意義

冒頭にも書きましたが、「確定申告は面倒くさい」と感じられる人もいらっしゃるかもしれません。また「面倒」と感じられる方もいらっしゃるでしょう。しかし、確定申告のような申告納税の歴史をひもとくと、別の姿が見えてきます。

税金の納め方には、「申告納税」と「賦課課税」があります。申告納税というのは、納税者自ら申告し、納税する仕組みです。賦課課税は、国や自治体などの当局が徴収する仕組みです。

日本で申告納税が導入されたのは1947年(昭和22年)で、経済の民主化の一環として採用されたものです。当局が税金を徴収する賦課課税方式は、納税者は楽ですが国家権力に依存する方式とも言えます。それに対して申告納税方式は、納税者自身が税金の法律や制度を知り、それを遵守することが必須になります。それは、民主主義という制度が、「権利が守られる」とともに「責任が発生する」ことに対応しているものです。

「確定申告は民主主義を実現する一階梯なのだ」と思えば、精神的負担も軽くなるのではないでしょうか。(提供:自社ビルのススメ


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