「安全性の向上」や「BCP(事業継続計画)対策」、「社内の風通しをよくする」、「業務の効率化」、「資産活用」など、さまざまなニーズで発生するオフィス移転。いずれにせよ、オフィス移転はコストと時間をかけて実施する全社事業であり、成功裏に終わることが求められます。今回は、成功するオフィス移転に向けた戦略のポイントを見ていきましょう。
オフィスの「老朽化」はどう判断する?
まず、オフィス移転を計画する前に、現行のオフィスの問題点を洗い出す必要があります。例えば「老朽化」が問題だとすると、具体的にはどのような弊害が考えられるかを考えなくてはなりません。
まずは、耐震基準の問題です。1981年6月1日に建築基準法の改正が行われたため、現役のオフィスビルの中には「新基準」と「旧基準」の建物が混在しています。
東日本大震災を受けてのBCP強化により、オフィスビル選びの基準として「耐震性」を挙げる企業は少なくありません。旧耐震基準は「震度5強程度の地震でも建物の崩壊を免れ、一部破損しても修繕によって継続使用できる」としています。震度5は、東日本大震災の際に東京23区内で観測された揺れの程度です。今後発生するといわれる首都圏での大型地震への対策とすると、少し心もとないかもしれません。
一方で、エレベーターや空調などの共用設備の老朽化が課題であれば、各種設備の入れ替え時期を考慮することになります。入れ替えが老朽化対策につながることもあるからです。 ただ、老朽化したオフィスにかかる維持・修理費の増加、IT機器への対応、企業イメージやブランドに与える影響なども、オフィス移転を検討する材料になるでしょう。
「拠点の集約」がトレンドに
次に、「オフィス移転に伴い拠点を分散するか、それとも集約化を図るか」という問題があります。東日本大震災以降、BCPの観点からオフィスを分散する企業が増えました。 また、近年はデジタル化の進展により、在宅勤務やリモートワーク、サテライトオフィスなどの広がりもみられます。
一方で、昨今のオフィス移転事例を見ると、「拠点の集約化」を理由に挙げる企業があります。オフィスビルの事情やBCPからオフィスを分散したものの、コスト抑制や業務効率、社内の風通しの向上などを理由に、本社機能を1カ所に集約したいという意向があるようです。 昨今、フロア面積の広いオフィスの供給が続いているものの、そうした企業の意識を反映しているといえるでしょう。
しかし、大規模なオフィスレイアウト変更を伴う場合、オーナー側からの制約を受けやすい賃貸オフィスでは、理想のオフィス作りが叶わないこともあります。そのような場合は、ビル一棟を貸し切るか、もしくは自社ビルの購入に踏み切ることになるでしょう。昨今のトレンドである企業内保育所や社内カフェといった福利厚生施設も、自社ビルのほうが設置しやすいこともあり、自社ビルを選ぶ企業もあるようです。
「賃貸オフィスか自社ビルか」という問題
「賃貸オフィスか自社ビルか」というのは企業にとって悩ましい問題です。自社ビルのほうが長期的な目で見てコスト抑制につながる場合も多いものの、土地や建物の購入に伴う一時的なキャッシュ減少や借入金の増加は免れないでしょう。 また、将来的な人員削減や人員増強があった場合に、賃貸オフィスのほうがフレキシブルに対応できるのは確かです。
そうした点から、市場が成熟せず、企業自体もまだ成長段階という場合は賃貸オフィスで柔軟性を重視し、ある程度成熟段階にあるという企業は、資産としての価値を求めて自社ビルを購入するという傾向がみられます。
計画的な戦略立案で成功するオフィス移転を
オフィス移転を含むCRE戦略は、経営戦略、ひいては会社の将来像と密接につながっています。今後さらに社員が増えていく可能性を考慮すると同時に、今現在のオフィスの耐震性や老朽化などを踏まえた上で、新たなオフィスへの移転を検討していくとよいでしょう。
また、「賃貸オフィスか自社ビルか」という点は判断が難しい部分かもしれませんが、企業の発展を長期的な視点で考えた場合、より自社への「信頼」を厚くするのは自社ビルといえます。「耐震性」「老朽化」「社員の増加」といった点からオフィス移転を検討する際には、「ブランディング」にも大きな影響を与える自社ビルの購入も一つの手段として考えてみてはいかがでしょうか。(提供:自社ビルのススメ)
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