オフィスを単なる「働く場」から「コミュニケーションの場」としてとらえるトレンドが広がる中、広い空間を活用した「オープンフロア・レイアウト」を導入する企業が増えています。一方で、パーテーションなどがない「オープン・フロアオフィス」は、他人の話し声やキーパンチの音、人の出入りが気になるという人もいるようです。そうした中、オフィスにBGMを取り入れる企業が増えているのをご存知でしょうか。今回は、オフィスBGMがもたらす効果についてご紹介していきます。

音楽が「仕事にプラス」効果をもたらす一方で、選曲に不満も

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(写真=wavebreakmedia/Shutterstock.com)

高音質デジタル放送を提供しているi-dioの調査チームが音楽の流れる職場で働く20代〜50代の男女400人に実施した調査では、仕事中に音楽を聴けることを「良いこと」ととらえている人は、全世代を通じて80%を超えています。
職場のBGMが「仕事にプラスになる」と答えた人は同じく80%以上で、その理由としてもっとも多く挙がったのが「気分転換になる」、次いで「集中できる」「やる気が出る」「仕事のスピードが上がる」「他人とのコミュニケーションにつながる」の順でした。

学生時代、静まり返った図書館や自宅で勉強したい派と、多少のざわめきがあるカフェやファストフード店のほうが集中できる派と分かれていたかもしれません。オフィスのBGMで「集中できる」という人も、同じ理由かもしれません。
一方で、オフィスBGMへの不満は「選曲がいつも同じで飽きる」「好きなジャンルがかからない」といった選曲への不満が目立ちました。有料の有線放送に加入していない職場では「会社にあるCDしかかけられない」「経営者の好みで選曲される」など、音楽への選択権がない場合があるようです。

オフィスBGMの医学的根拠示し導入数急増

有線放送サービスUSEN-NEXT GROUPの株式会社 USENでは、オフィス向けBGMを配信しています。「集中力向上」「リラックス」「リフレッシュ」「気づき」の4つの機能別に選曲。当初はオフィス向けBGMを提案しても好感触を得られなかったといいますが、切り口を変えたところ、導入企業が右肩上がりに伸びたそうです。

同社では、精神科医や免疫音楽医療学、産業医らの協力を得て、職場で音楽を流すことによる独自のエビデンス(医科学的な根拠)を収集。音楽によって副交感神経が刺激され、「血行がよくなる」「唾液中の免疫物質の増加」「ストレスホルモンの減少」といった医学的な効果がみられたそうです。

また、音楽はセキュリティー面でも効果が認められています。人の声と周波数が同じ音楽を流すことで会議の声や接客の声などをマスキングできるのです。そのため、プライバシー保護に役立つとして、オフィス内だけでなく公共施設など人の集まる場所で導入する動きもあります。さらにBGMを流すだけでなく、BGMを活用した「働き方改革」に取り組む動きもあります。

長時間労働の撲滅が叫ばれる中、「ノー残業デー」を設ける企業が増えています。USENでは、アニメ『タッチ』のヒロインを演じた有名声優日高のり子さんを起用した「ノー残業デー」のアナウンスを配信したところ好評を得て、導入企業が増えているそうです。
また、定時に決まった音楽を流すことで時間にメリハリをつけ帰宅を促し、残業時間の大幅削減につながった企業も出ています。

オフィスで働く意味が問われる時代、環境づくりの意識高まる

オフィスBGM導入急増の背景には、2015年から企業に義務付けられた社員のストレスチェックなど、職場でのメンタルヘルス対策への意識の高まりがあると考えられます。
静まり返った職場では同僚に話しかけにくかったという人も、音楽をきっかけにコミュニケーションがとりやすくなったという声も上がっています。

一日のうちの大半をすごすオフィスの環境に配慮する動きのひとつとして、「オフィスBGMによるストレス軽減」は今後も注目されそうです。(提供:自社ビルのススメ

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