一般的に企業の業績が順調に成長していくと人員が増えていきオフィスが手狭になるため、新しいオフィスへの移転を検討する可能性が出てきます。オフィスの移転は企業が成長している証でもあるため、客観的には喜ばしいことに感じる人も多いでしょう。しかしオフィスが大きくなればその分賃料も高額になることを忘れてはなりません。
また賃料は、固定費として毎月そのままキャッシュアウト(資金の流出)し続けるだけのお金の流れになります。そこで今回は、オフィスを移転し場合にキャッシュアウトし続けない方法について確認していきましょう。
賃貸オフィスと自社ビルとキャッシュフローの比較
賃貸オフィスビルの場合と自社ビルを購入した場合のキャッシュフローを比較してみましょう。オフィスを賃借した場合の賃料やその他費用を以下のように想定してみます。
項目 | 金額 |
---|---|
年間賃料 | 1,800万円(共益費・消費税込み) |
礼金 | 300万円(2ヵ月分) |
不動産会社仲介手数料 | 150万円(1ヵ月分) |
更新料 | 150万円(2年に1回、1ヵ月分) |
本来はほかに敷金(保証金)が6~12ヵ月分かかりますが、敷金はキャッシュアウトせず返金される(償却なしの場合)性質のため含みません。次にほぼ同格のビルを購入した場合のキャッシュフローです。物件価格の算出方法の一つに「収益還元法」というものがあります。収益還元法は、対象不動産が将来生み出すと考えられる収益に着目して不動産の価格を求める手法です。
「1年間の純利益(ここでは賃料)」を「還元利回り」で割って賃貸オフィスの年間賃料1,800万円で計算します。例えば還元利回りを4%とすると、以下の計算式の通り年間賃料1,800万円のオフィスビルは物件価格4億5,000万円のビルとほぼ同格と考えることができるでしょう。
●賃貸オフィス年間賃料 1,800万円 ÷ 還元利回り 0.04 = 賃貸オフィス年間純利益 4億5,000万円
購入のシミュレーションでは、頭金5,000万円、金融機関からの借入金4億円、返済期間25年、金利1%、取得時の諸費用700万円と仮定します。(不動産会社が自ら売り主なので仲介手数料はかからない設定)
・賃借シミュレーション
項目 | 金額 |
---|---|
年間賃料 | 1,800万円(共益費・消費税込み) |
初期費用 | 450万円(礼金300万円+不動産会社仲介手数料150万円) |
12回の更新料 | 1,800万円 |
25年後の総支出額 | 4億7,250万円 |
・購入シミュレーション
項目 | 金額 | |
---|---|---|
年間支出額 | 年間返済額 | 約1,809万円 |
管理費・修繕積立金ほか | 約150万円 | |
固定資産税・都市計画税 | 約100万円 | |
合計 | 約2,059万円(25年で約5億1,475万円) | |
初期費用 | 5,700万円(頭金5,000万円+諸費用700万円) | |
25年後の総支出額 | 約5億7,175万円 |
25年後の総支出額だけを見ると購入シミュレーションのほうが高額ですが25年で借入金を完済しているため、資産としての不動産が残っています。不動産価格が購入時と変わらず4億5,000万円と仮定するとキャッシュアウトした総額は以下の計算式の通りです。
●購入時の総支出額約5億7,175万円-不動産価格4億5,000円=キャッシュアウト総額約1億2,175万円
一方、賃借シミュレーションでは4億7,250万円全額がキャッシュアウトします。その差は4億7,250万円-1億2,175万円=約3億5,075万円です。(あくまでも一つのシミュレーションであり実際のお金の動きは状況によって変動します)これは「不動産を購入すれば借入金返済のうち元本分はキャッシュアウトせず資産化する」という事実に基づきます。
オフィス移転を考慮すると
上記のシミュレーションは「賃借でも購入でも移転せずに25年間固定」という前提で算出したものでした。では、企業の成長に伴いオフィス移転を行う場合はどうでしょうか。賃借の場合は、次の項目が移転のたびにキャッシュアウトする費用として付け加わります。
<賃貸の場合のキャッシュアウトする費用>
- 不動産会社への仲介手数料(賃料1ヵ月分)
- 貸主への礼金(賃料1~2ヵ月分)
- 敷金の中の償却分(賃料1~2ヵ月分)
- 新オフィスの内装工事費
- 引っ越し費用
- 旧オフィスの原状回復費
一方、購入の場合は以下の項目がキャッシュアウトする費用なります。
<購入の場合のキャッシュアウトする費用>
- 新オフィスの内装工事費
- 物件取得時の諸費用(仲介の場合は不動産会社の仲介手数料を含む)
- 引っ越し費用
物件取得時に用意する頭金は自己資本のため、キャッシュアウトはしません。また新オフィスの内装工事や旧オフィスの原状回復費は「修繕費」としてキャッシュアウトと見なすこともできますが、「資本的支出」としてキャッシュアウトしない見方もできます。(その代わり減価償却ができます)すでにオフィスとして不動産を保有していて、新たにオフィスを購入して移転するケースでは、旧オフィスを賃貸に出して運用しましょう。
立地と物件のクオリティさえ間違えなければ本業以外に安定的にインカムゲインを得られることになります。新しいオフィスも不動産購入のため、賃料という形でキャッシュアウトせずに済むでしょう。
「区分所有オフィス®」という選択
このように中長期の視点に立てば賃料を払い続けてキャッシュアウトし続けるよりも、「自社ビルを購入して資産化したほうが有利」ということが分かります。また企業の成長に伴いオフィス移転を繰り返すほど、賃借の場合はキャッシュアウトする費用がかさんでいくのが特徴です。一方自社ビル保有の場合はキャッシュアウトする項目が比較的少なく、むしろ不動産という資産が増えていきます。
しかしオフィスビルのような不動産の購入には数億~数十億円もの金額が必要です。金融機関からの借り入れを当てにしたとしても審査はかなり厳しいものになるでしょう。そのため成長途上の企業にとっては現実的に難しいと言わざるを得ません。ただし「区分所有オフィス®」という手法であればイニシャルコストの負担を回避することができます。
「区分所有オフィス」は、東京都心の一等地に建つオフィスビルをフロアごと、または部屋ごとに区分し販売している不動産商品です。一般的なオフィスビルの10分の1程度の価格で取得することができるため、不動産購入時の費用負担を軽減できます。賃料はキャッシュアウトがいつまでも続きますが自社ビルであればそれを終わらせることが可能です。
選択肢の一つとして「区分所有オフィス」という形で自社ビルを実現してみてはいかがでしょうか。
※「区分所有オフィス®」は、株式会社ボルテックスの登録商標です。(提供:自社ビルのススメ)
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