ビジネスパーソンが企業を選ぶ基準として「柔軟なワークスタイルを採用しているかどうか」という点が重要視されています。なぜなら、働き方改革が進む中、仕事と生活の調和(ワークライフ・バランス)が多くのビジネスパーソンにとってより一層優先され始めているからです。一言で表すならば「自分らしく働く」ことを現代のビジネスパーソンは求めているといえるでしょう。

そのため企業側から見ると、柔軟なワークスタイルを実現できていない企業には優秀な人材が集まりにくい状況になっているのです。柔軟なワークスタイルを目指すには、どのような意識が必要なのでしょうか。本記事では柔軟なワークスタイルの概要や取り組み事例などについて解説します。

柔軟なワークスタイルが求められる時代

ワークスタイル
(画像=artem/stock.adobe.com)

柔軟で多様なワークスタイルの実現は、今や時代の要請になっています。「社員全員が9時に出勤して17時に終業する」というような画一的なワークスタイルは、日本が製造業中心に経済成長を遂げていたころには合理的な働き方だったかもしれません。なぜなら、当時は早く安く大量に製品を製造することが市場のニーズを満たすことであり、結果的に企業の利益につながっていたからです。

独立行政法人労働政策研究・研修機構の「データブック国際労働比較2019」によると、1980年の生産年齢人口(15~64歳)比率は全人口対比で67.5%でした。しかし2020年59.2%、2050年50.7%と大きく低下が予測されています。日本企業を取り巻く環境は大きく様変わりし、経済の中心が第2次産業(製造業)から第3次産業(サービス業)へと移行することによってワークスタイルにも大きな変革がもたらされているのです。

そのため画一的なワークスタイルでは必ずしも合理的とはいえなくなってきています。さらに2010年ごろからは人口減少に伴い、恒常的な「人手不足」も社会問題の一つです。育児や介護などの制約を抱えてどうしても正社員としては働けなかった人たちにも雇用の機会を与え、埋もれた人材を発掘する必要性が浮上し多様で柔軟なワークスタイルに注目が集まってきているといえるでしょう。

柔軟なワークスタイルとは

柔軟なワークスタイルとは具体的にはどういったことを指すのでしょうか。いくつかトピックを挙げてみましょう。

・サテライトオフィス
企業の本社・本拠地から離れた場所に設置する小規模のオフィスや遠隔勤務用の施設です。本社に行くまでもなく処理できる仕事の際などに利用できます。

・リモートワーク(テレワーク)
「コロナ自粛」の期間中に浸透しました。Web会議システムやモバイル端末を活用し、移動中やサテライトオフィス、自宅などどこでも仕事ができるよう仕組みを整え、柔軟なワークスタイルを実現。

・フレックスタイム制
社員が日々の始業・終業時刻、労働時間を自分で決めて働くことができる制度です。通勤ラッシュを避けたりプライベートとの調整を行ったりすることが期待できます。

・育児・介護休暇制度
出産・子育てや家族の介護のために数ヵ月~数年単位でまとまった休暇を取得できます。

・副業(複業)の許可
政府が推進していることもあり、副業を許可する企業が増えてきました。社員が複数のキャリアをもつことによって本業の生産性向上へと結びつくことも期待されています。

ワークスタイル改革のための3つの注意点

企業が柔軟なワークスタイルへと改革を行っていく場合、以下のような3つのことについて注意しなければいけません。

<ワークスタイル改革のための3つの注意点>

・人事評価制度の整備
ワークスタイルを改革していくことでオフィス以外の場所で働いたり時短勤務をしたりする社員が増えます。そのため他の社員と不公平にならず正当に評価できるような人事評価制度を再度追求していくことが必要です。

・設備、環境の整備
オフィス内のWi-Fi環境整備だけでなくリモートワークに対応するためのモバイル端末(ノートPC、タブレット、スマートフォンなど)を用意することが必要です。しかしその準備とあわせて情報セキュリティ対策も万全にしておかなくてはなりません。特に個人情報を取り扱っている業務において情報漏えいは企業の命取りとなります。

・ミッションの明確化とゴールの設定
柔軟なワークスタイルの実現は、社員がより働きやすい環境を作ることで社員のやりがいやモチベーション、ロイヤリティを向上させていくことに意味があります。ワークスタイル改革の過程では「コストカットが優先される」といった状態に陥らないようミッションの明確化とゴール設定をしっかり行いましょう。

柔軟なワークスタイルの取り組み事例 

それでは次に、実際に柔軟なワークスタイルに取り組んでいる企業の事例をご紹介します。

事例紹介:サイボウズ株式会社

日本のグループウェア市場をリードするサイボウズ株式会社は、2005年に離職率が28%と過去最高を記録したことをきっかけにワークスタイルの改革を決断しました。「制度」「ツール」「文化」を3つの柱としてワークスタイル改革が進められたといいます。導入された制度を一部紹介しましょう。

・育自分休暇制度(2012年~)
「育自分休暇制度」は、サイボウズを退職した人が最長6年間はサイボウズへの復帰が可能になるという制度です。例えば起業を考えている人も「もし失敗してもまたサイボウズに戻れる」という安心感をもってチャレンジすることができます。

・大人の体験入部(2016年~)
「大人の体験入部」は、本人のキャリア検討や現在の業務へ生かすことを目的に、他部署に体験入部することができるという制度です。社内すべての部署へ希望を出すことができ、海外を含む他拠点への体験入部も可能とのことです。

・働き方宣言制度(2018年~)
「働き方宣言制度」は、時間と場所で区切られた9分類から働き方を選ぶものです。社員一人ひとりが「自分の働き方」を自由に記述するスタイルで宣言し実行するというもの。

同社では、他にもさまざまな方策を実施した結果、2012~2019年には離職率が4~5%程度まで下がっています。

「区分所有オフィス®」を活用して柔軟なワークスタイルの実現を

「自分らしく働く」を実現することのスタイルとして「職住近接」という考え方があります。通勤時間という非生産的な時間を削減することによってストレスから解放され、余暇時間を増やすことができるというものです。これも一つの柔軟なワークスタイルといえるでしょう。しかし社員が首都圏各地に点在して住んでいる場合は、その集約点としてどうしても都心にオフィスを設置する必要性がでてきます。

これから優秀な人材を募集する場合も同様でしょう。都心は交通アクセスも良いため、人材が集まりやすい傾向です。ワークスタイルが柔軟になる一方、オフィスの本社機能は集約化が進んでいく側面もあります。本社としてのオフィスは、定型化された業務が削ぎ落とされて新たな価値を生む場となりつつあるでしょう。

オフィスは単なる「社員を入れる箱」から価値創造・イノベーション創造のための先進的なワークプレイスへと進化しているのです。そのため先進的なワークプレイスとしてのオフィスは、人・モノ・情報が集う都心の一等地がふさわしいといえるかもしれません。なぜなら企業のブランディングという観点でも大きなメリットがあるからです。

もちろんイニシャルコストを考えると、都心のオフィス保有は決して容易ではありません。都心一等地の中規模ビルですと、一棟価格が50億円程度かかります。狭小地に建てられたいわゆる「ペンシルビル」であれば一棟価格を5億円程度に抑えることができますが、オフィスとしての利用価値はあまり高くなく、先進的なワークプレイスの確保が難しいかもしれません。

このような問題をクリアし、低コストかつ都心でのオフィスの保有を実現する方法があります。それが東京の希少性の高いブランド立地に建てられた高品質な中規模オフィスビルをフロアごと、または部屋ごとに分譲している「区分所有オフィス®」です。

例えば、50億円の中規模ビルが10階建ての場合、その1フロアを区分所有するとなると約5億円で保有することができます。コストのために自社ビルをペンシルビルにすることなく、高品質で資産性の高いオフィスを手に入れることができるのです。

また資金に余裕がある場合でも、1ヵ所に50億円の自社ビルを構えるより、銀座・六本木・渋谷などのエリアに分散してオフィスを保有したほうが資産ポートフォリオの観点では将来的なリスクヘッジになります。

「区分所有オフィス」を活用することで、先進的なワークプレイスの確保と柔軟なワークスタイルが実現できるのではないでしょうか。ひいては優秀な人材を引き寄せていくことも期待できるでしょう。

※「区分所有オフィス®」は、株式会社ボルテックスの登録商標です。(提供:自社ビルのススメ


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