相続税は相続する資産の額が大きければ、税負担も大きくなります。場合によっては相続税を支払えない事態も考慮しなければなりません。しかし、生前に現金を不動産に変えておくことで、多くのタックスメリットを受けることができます。
本稿では、賃貸アパート・マンションや「区分所有オフィス®」を活用して、タックスメリットを受ける方法を紹介します。
- <目次>
1.不動産を活用して相続税でタックスメリットを受けられる理由
1-1.相続税評価額の引き下げという仕組み・具体例:1億円の現金を賃貸アパートにしたシミュレーション
2.相続対策で自社ビルを活用する方法
・具体例:1億円の現金を「区分所有オフィス®」にしたシミュレーション2-1.さらにタックスメリットを受ける2つの方法・「小規模宅地等の特例」・「貸家建付地の評価減」
3.「区分所有オフィス」のメリット
4.相続・事業継承対策には「区分所有オフィス」の購入が有効
1.不動産を活用して相続税でタックスメリットを受けられる理由
不動産を活用すると相続税のタックスメリットを受けられる理由は、現金相続に比べてさまざまな減額制度があることです。相続人が故人から事業を引き継いで会社を経営する場合にも、タックスメリットを受けられる減額制度を知っておく必要があります。具体的に見てみましょう。
1-1. 相続税評価額の引き下げという仕組み
相続税評価額において、現金の評価はあくまで100%ですが、土地は条件によって定められた減額を受けることができます。
「居住用宅地」はもちろんのこと、賃貸アパート・マンションが建っている「事業用宅地」や「貸付事業用宅地」も減額の対象になります。なぜなら、賃貸物件にして人に貸すことによって借地権や借家権が発生し、土地を自由に処分できなくなるからです。土地を売る場合は立退料の支払いが発生するケースもあるでしょう。そのため、相続税が減額されることによって、貸主にもメリットがあるようになっているのです。
したがって、生前に現金・株式等の金融資産でアパート・マンション等を建築または購入しておくことは、有効な税負担軽減対策になります。
・具体例:1億円の現金を賃貸アパートにしたシミュレーション
持っていた土地に1億円の現金で賃貸アパートを建築した場合、建物は固定資産税評価額(建築価格の50~70%)で評価されますので、70%の場合では評価額は1億円×0.7=7,000万円となります。固定資産税評価額が50~70%と幅があるのは、新築と中古の違いや、地価の変動など物件ごとの条件や時期により評価額が異なるからです。
たとえば、新築マンションでは5年間にわたり、建物部分の固定資産税が半額になる軽減措置を受けられますが、中古では受けられないなどの違いがあります。
さらに人に貸すと、貸家として30%の評価減になりますので、7,000万円×(1-0.3)=4,900万円に評価額が下がります。一方、現金で1億円を相続すると課税額は1億円です。つまり賃貸アパートにした場合、現金で相続させた場合の半額以下の評価額で相続させることができるのです。
2.相続対策で自社ビルを活用する方法
賃貸住宅ではなく「オフィスビル」を活用するということも、相続対策の手法のひとつです。
賃貸住宅経営と比べたときの「オフィスビル経営」のデメリットは、金額の大きさにあるといえるでしょう。ただし、オフィスを区分ごとに保有する、株式会社ボルテックスの「区分所有オフィス®」という手法であれば、このリスクを抑えることができます。
いきなり一棟のオフィスビルを購入するのではなく、オフィスを区分ごとに保有することで、一棟のオフィスビルよりも価格を抑えられるからです。
たとえば、一棟価格50億円の10階建て中規模ビルがあったとします。50億円を調達するのは至難の業ですが、「区分所有オフィス」であればこのうちの1フロアを5億円で取得することが可能になります。
また、「区分所有オフィス」は「空室リスクが低い」のも魅力のひとつです。一棟を保有する場合、どうしても空室のリスクが付きまといますが、好立地かつハイグレードの「区分所有オフィス」であれば空室のリスクを抑えることができます。
・具体例:1億円の現金を「区分所有オフィス®」にしたシミュレーション
相続税の評価額を決める大きな要素に借地権割合があります。借地権割合は地域によって異なります。地方では60%の地域が多いのに対し、都心部では70%の地域が多くなっています。駅前商業地では80%になるケースもあります。したがって、「区分所有オフィス」を持つなら、東京都心部の物件が有利といえるでしょう。借地権割合が高くなるほど、土地の評価額を下げられるからです。
計算式は、自用地評価額×(1-借地権割合)=借地権評価額となります。
【計算例】東京都心の1億円の「区分所有オフィス」で、借地権割合が80%の場合
1億円×(1-0.8)=2,000万円
1億円の資産が2,000万円に目減りしたことになります。さらに次に紹介する「小規模宅地等の特例」や「貸家建付地の評価減」を利用することも可能です。
※引き下げ効果は物件により異なります。
2-1.さらにタックスメリットを受ける2つの方法
賃貸物件でタックスメリットを受けられる制度としては、以下の2つがあります。
・「小規模宅地等の特例」
小規模宅地等の特例とは、相続税の支払いのために住んでいる宅地を売却しなければならない事態を防ぐことを目的に、土地の評価額を50~80%に減額する制度です。宅地種類別の減額率は下表の通りです。
宅地の種類 | 面積の上限 | 評価額の減額率 |
---|---|---|
居住用宅地 | 330㎡ | 80% |
事業用宅地 | 400㎡ | 80% |
貸付事業用宅地 | 200㎡ | 50% |
適用を受けるには、相続する以前から被相続人(故人)と生活を共にしていた居住用もしくは事業用宅地である必要があります。相続した宅地の評価額が6,000万円であれば1,200万円に評価額が下がり、基礎控除(3,000万円+600万円×相続人の数)を差し引くと非課税枠に収まることになります。
土地価格6,000万円 ×(1 – 減額率0.8)= 土地評価額1,200万円
宅地の一部で不動産貸付を行う場合は「貸付事業用宅地」に該当するため、減額率は50%に下がります。計算すると評価額は3,000万円となり、こちらも基礎控除(3,000万円+600万円×相続人の数)を差し引けば非課税となります。
土地価格6,000万円 ×(1 – 減額率0.5)= 土地評価額3,000万円
・「貸家建付地の評価減」
貸家建付地とは、保有している土地に貸家、賃貸アパート・マンションなどの賃貸物件を建て、第三者に貸している場合の土地を指します。第三者に貸している場合は土地の利用に制限があるため、自分で使用している場合よりも相続税評価額は低くなります。
貸家建付地として認められるには、駐車場などではなく賃貸物件が建っているほかに、賃料が世間相場並みであることが条件です。賃料が無償、あるいは世間相場よりも安い場合は貸家建付地として認められない場合があります。したがって、家賃は慎重に設定することが必要です。
計算式は以下になります。
自用地評価額 ×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)=貸家建付地評価額
借家権割合は国税庁が発表している路線価図に記載されている250Dなどの記号でわかります。この場合の「D」は割合が60%であることを示します。
相続税を計算する際の借家権割合は全国一律で30%です。賃貸割合は空室率によって決まり、相続開始日に10室のうち空室が2室あれば80%となります。
【計算例】上記の比率を自用地評価額5,000万円の土地に当てはめた場合
借地権割合:60%
借家権割合:30%
賃貸割合:80%
自用地評価額5,000万円 ×(1 - 借地権割合60% × 借家権割合30% × 賃貸割合80%)=貸家建付地評価額4,280万円
この場合は720万円の減額ですが、満室であれば評価額が4,100万円に下がり、900万円の減額とさらにタックスメリットが増します。逆に空室がもっと多ければタックスメリットは減ってしまいます。
3.「区分所有オフィス」のメリット
アパート・マンションなどの居住用物件と比較して、オフィスビルの賃料はより高額な傾向にあります。
テナント賃料は景気の変動に影響を受けやすいという特徴があり、それが時にリスクともなりますが、居住用物件の賃料が経年劣化に伴い下がる傾向があるのに対し、オフィスビルの賃料は、好況の局面では賃料を上げやすいのです。
そして、「区分所有オフィス」は一棟を自社ビルにするよりも維持コストが平準化するため、効率的な利用が可能であることも大きなメリットといえます。
一棟保有の場合、維持管理費、清掃費、また共有部における電気代、火災保険料といったコストが生じてきます。その上に、メンテナンス費用、そして大規模修繕費なども必要となるわけです。
しかし、「区分所有オフィス」であれば管理組合を通じて、修繕積立金を拠出するかたちになります。このようなコストは「みんなで」拠出するため、大規模修繕や日々のコストを計画的に平準化することも可能なのです。
4.相続・事業継承対策には「区分所有オフィス」の購入が有効
ここまで不動産を活用して相続税のタックスメリットを受ける方法について見てきました。現金で相続する場合に比べ、不動産に変えることで大きなタックスメリットを得られることが理解いただけたと思います。
また、土地は更地のままにしておいても何の利益も生まないどころか、毎年固定資産税・都市計画税だけ支払うことになります。土地にアパート・マンションなどの賃貸物件を建てることによって、賃料収入が入り、相続税のタックスメリットも受けることができるのです。
もう一点、相続・事業継承対策を考えると「区分所有オフィス」を購入し、賃貸として利用することで賃料収入を得るのもひとつの有効な手段となります。そして、将来的には自社オフィスとして利用することも可能ですので、この機会に「オフィスビル経営」にも目を向けてみてはいかがでしょうか。
その場合有効なのが、東京都心部の「区分所有オフィス」を購入することです。都市部であることから利便性が良く、空室リスクが少なくて安定した賃料収入を得られます。さらに、自社オフィスとして活用する場合も、東京に立地していることで事業を行いやすくなります。また、資産価値が高く売却しやすいので、資金調達も比較的容易に行えるというメリットもあります。
相続税増税時代といわれる昨今ですが、個人にとっても企業にとってもタックスメリットを受けられる不動産の活用が最善の対応方法といえるのではないでしょうか。
相続対策として「区分所有オフィス」を活用したい経営者の方へ。オフィスは「借りる」より「買う」ことの明確なメリット・エビデンスがわかります。
※「区分所有オフィス®」は株式会社ボルテックスの登録商標です(提供:自社ビルのススメ)
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