企業におけるマニュアルは、これまでは紙に印刷した冊子やパンフレットが一般的でした。しかし最近では、効率的でわかりやすい「動画マニュアル」に注目が集まっています。今回は、紙から電子化、そして動画へと進化するマニュアルの現状と、その制作ポイントなどについてご紹介します。

デジタルデバイスの登場で「紙離れ」が進行

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(画像=Suradech Prapairat/Shutterstock.com)

業務手順を解説するマニュアルは、企業の最もポピュラーなマニュアルといえます。新入社員や新たに業務を担当する従業員などが、その業務の全体像や流れ、作業手順、注意点を効果的に学ぶことが可能です。良質なマニュアルの存在は、指導役の先輩社員や上司の負担が減り、それぞれの業務を担当する社員が自分の仕事に専念できるため、効率的な業務の運営につながります。

その企業の業務ノウハウが詰まったマニュアルは、まさに「宝」と呼ぶべきものですが、冊子のマニュアルは更新されるたびに分厚くなり、重たくなるため、持ち運びが不便になってしまうのも事実です。

そして、時代は「紙離れ」を迎えています。文化庁による平成25年度「国語に関する世論調査」の調査結果によりますと、「1ヶ月に1冊も本を読まない」という回答が全体の47.5%を占めました。平成14年度の同調査では37.6%でしたので、紙離れが確実に増えていることがわかります。
読書量が減っている理由としては、「情報機器(携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、パソコン、ゲーム機等)で時間が取られる」というものが26.3%もあり、情報源が書籍からデジタルデバイスに移行していることが見て取れます。

(参照:文化庁 「平成25年度『国語に関する世論調査』」 )

マニュアルは紙から電子化、そして動画へ

シンプルにマニュアルをPDF化して、タブレット、スマートホンなどのデバイスで読むようにすれば、冊子マニュアルのデメリットである膨大な印刷コストを削減することができます。
最近ではさらにマニュアルを動画にして、デバイスで視聴する方法も流行しています。動く映像を用いることで、テキストだけではわかりにくい業務・作業の流れがわかりやすくなるためです。動画であれば、活字が苦手な人も、テレビ番組を見るように必要なポイントを視覚的に理解することができるでしょう。

慶應義塾大学の中西美和准教授を中心とした研究によると、紙媒体のマニュアルは記憶の保持と想起を保ちやすいので、より長い期間にわたって学習内容の保持が求められるマニュアルに向いています。たとえば、定常作業(常に行う日常的な作業)のマニュアルなどです。

それに対し電子端末の動画マニュアルは、短時間での集中した学習に向いています。たとえば、状況に応じて迅速に理解しなければならない非定常作業(通常の作業と異なり頻度は少ないが項目が多岐にわたった作業)のマニュアルなどです。

(参照:日本人間工学会「マニュアルのメディア形態が作業手順の学習に及ぼす影響:媒体の違い及びコンテンツの違いに焦点を当てて」)

動画マニュアルを制作するポイント

動画マニュアルを制作するには、次の5つのステップを踏むことになります。

1.企画・構成
2.台本作成
3.収録(撮影・録音)
4.ナレーション収録
5.編集

それぞれ専門スキルが問われるものであり、実際には外注することが多くなるでしょう。それでも、企画・構成は必ず内部で確定させなければなりません。動画を作成する際には、「ターゲットを明確に設定する」ということが極めて重要になるからです。

このターゲット設定をより精密に行うことをマーケティング用語で「ペルソナ」設定と言います。これは架空のユーザー像を設定することです。実際にその人物が実在しているかのように、年齢、性別、居住地、職業、役職、年収、趣味、特技、価値観、家族構成、生い立ち、休日の過ごし方、ライフスタイル…などリアリティのある情報を設定していきます。

たとえば製品のチュートリアルであれば、その製品を購入することが想定されるユーザーのペルソナ(例として28歳女性、渋谷区在住の会社員(不動産業)など)を設定していきます。

ペルソナを明確に設定することで、どのようなコンテンツが必要なのかの明確な判断基準ができます。撮影や編集の段階で迷ったときに、このペルソナ設定に立ち返って判断できます。

この軸がぶれない動画こそが、わかりやすい動画といえるでしょう。(提供:自社ビルのススメ


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