ZEB(ゼブ)という言葉をご存じでしょうか?ZEBは「Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」の略称で、建物で消費するエネルギーをゼロにすることを目指した建物のことです。

ネット・ゼロ・エネルギーとは?

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(画像=Wang An Qi/Shutterstock.com)

ネット・ゼロ・エネルギーとは、「エネルギー消費を正味でゼロにする」という意味です。

本来、建物の中では人々が活動しているため、エネルギー消費量を完全にゼロにすることはできません。しかしパッシブ技術・アクティブ技術による省エネでエネルギー消費量を大幅に削減し、創エネ技術でエネルギーを生み出すことによって、実質的にゼロ・エネルギーにすることが可能なのです。

なおパッシブ技術とは、窓や壁の断熱性能向上や日射熱を利用した暖房など機械に頼らない技術を指します。対してアクティブ技術は高効率照明や高効率空調などの機械による省エネ技術を指します。創エネとは、太陽光発電や風力発電、バイオマス発電などの再生可能エネルギーのことです。(ビルの場合は、屋上での太陽光発電設置がほとんどです。)

ZEBの3段階の定義

経済産業省資源エネルギー庁は、ZEBを達成状況に応じて以下のように3段階に定義しています。

1「ZEB Ready(ゼブ・レディ)」
省エネで基準エネルギー消費量から50%以上のエネルギー削減を実現している建物
2「Nearly ZEB(ニアリー・ゼブ)
省エネ50%以上+創エネで75%以上のエネルギー消費量の削減を実現している建物
3「ZEB」
省エネ(50%以上)+創エネで100%以上のエネルギー消費量の削減を実現している建物

100%達成の「ZEB」へ向けて、段階的に達成を目指すことが望まれます。

自社ビルのZEB化で得られる4つのメリット

自社ビルをZEB化することによって、どのようなメリットが得られるのでしょうか。主なメリットとして挙げられるのは以下の4つです。

1 光熱費の削減が可能

エネルギー消費量が大きく減りますので、光熱費が大幅に削減できます。ビルの規模が大きくなれば、光熱費という固定費も膨大になり、企業経営を圧迫します。これが削減できることは、大きなメリットです。

2 快適性・生産性が向上する

パッシブ技術・アクティブ技術を通じた空調・照明設備の高度化によりオフィス内環境が向上することで、業務効率が上がることが期待できます。

3 BCP(事業継続計画)の観点で優位

創エネ施設があることは、停電時に大きな威力を発揮します。ビルとしての競争力の向上とともに近隣住民の避難先として提供することで大きな社会的評価が期待できるでしょう。

4 不動産価値の向上とともにオーナーの企業価値が向上する

自社ビルがZEBと認定されれば、SDGs(持続可能な開発目標)に配慮したESG経営(環境・社会・ガバナンスに配慮した経営)を行っている企業と見なされ、社会的評価を得ることが期待できます。

ZEBの普及は国家的な要請になっている

ZEBの普及は、国を挙げての大事業となっています。2014年4月に閣議決定された日本のエネルギー基本計画において「2020年までに新築公共建築物等で2030年までに新築建築物の平均でZEBの実現を目指す」とする政策目標が掲げられました。なぜZEBの普及が急がれているのかというと地球温暖化対策のために二酸化炭素排出を減らしエネルギー需給の安定化が国家目標となっているからです。

エネルギー消費の統計上、オフィスビルや商業施設は「業務部門」とされておりエネルギー消費量削減が急務です。なぜなら省エネが叫ばれる近年にあって業務部門のエネルギー消費量の増大は、家庭部門(自家用車を除く家庭でのエネルギー消費)とともに際立っているからです。

業務部門のエネルギー消費割合は、1990年度には全体の12.7%だったのが、2016年度には全体の16.0%にまで膨らんでいます。ちなみに部門は他に「産業部門」(製造業、農林水産業、鉱業、建設業の合計)と「運輸部門」(自家用車・バスなどの旅客部門と陸運・海運・航空の貨物部門)があり、両部門とも省エネ努力によって近年は徐々に減少傾向です。

政府としては、業務部門のエネルギー消費量削減のためにもZEB化を促進させたい考えで、環境省、国土交通省、経済産業省、厚生労働省が連携して補助制度を推進しています。
その一例として、環境省の「地域の防災・減災と低炭素化を同時実現する自立・分散型エネルギー設備等導入推進事業」(2019年度予算総額34億円)があります。

ZEBやその他の評価制度取得で得られるアドバンテージ

ZEBに限らず環境・エネルギー性能の高い建物への評価制度は、「BELS(ベルス)」「eマーク」など数多くあります。それらの評価を得ていることは、ESG経営企業として大きなアドバンテージになるでしょう。

これから自社ビルの購入を検討されている方は、企業価値向上と不動産価値向上のために、そして環境などへのより広義な貢献のために、ビル購入後自社ビルのZEB化を検討してみてはいかがでしょうか。(提供:自社ビルのススメ


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