企業経営者にとって、自社の企業名が一つの「ブランド」になることは大きな誇りになるでしょう。まさに、そのブランド化を目指して活動をしている経営者も多いかと思います。極論すれば、企業活動とは企業の持つブランド価値を高める行動と言ってもいいわけです。

インターブランドが毎年行っているBest Global Brandsという調査によると、2018年のトップ・ブランド企業はアップルでした。アップルが世に送り出したiPhoneは世界中で大ヒットし、人々の生活スタイルをも変えてしまうほどのインパクトがありました。今やiPhone以外のスマートフォンも数多くリリースされ、中にはiPhone以上の機能を持つ機種も出ていますが、それでもアップル好きは迷うことなくiPhoneを選択します。それが「アップル」というブランド力なのです。

(参照:インターブランド「Best Global Brands 2018」

企業ブランディングとは何か?

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(画像=garagestock/Shutterstock.com)

企業ブランディング(コーポレート・ブランディング)とは、企業の持つブランド価値を戦略的に高める行動のことです。

ブランディングに近い言葉で「マーケティング」がありますが、マーケティングは一方的に企業やその製品・サービスの有用性を消費者に向けて発信するメッセージといえます。それに対し、ブランディングは企業や製品・サービスの持つ価値・イメージの向上を図る取り組みを指します。

そのため、企業ブランディングは製品ブランディングとも異なり、消費者だけでなくステークホルダー全体に共有する企業の社会的イメージを構築していく行為になるわけです。

企業ブランディングのメリットとは?

それでは、企業ブランディングにはどのようなメリットがあるのでしょうか。大きなメリットとしては、以下のような点が挙げられます。

・競合他社との差別化と顧客のロイヤリティ向上
そもそもブランド(Brand)の語源は、焼き印を押す意味の「Burned」に由来すると言われています。中世のヨーロッパでは、自分の家畜と他人の家畜を焼き印で区別していました。そこから、ブランドは「銘柄」や「商標」を意味するようになったのですが、その識別性と差別化が重要なファクターであることがわかります。

冒頭のiPhoneの例でもわかるように、「iPhone」と「iPhoneに似たスマートフォン」はアップル好きにとっては全然違うものです。アップル以外のメーカーにとっては、スマートフォン市場でアップルと戦うのは、機種の優れた機能、創造性あふれるコマーシャル戦略などをもってしても至難の業となってしまうのです。

・社員のモチベーション向上と人材の確保
企業ブランディングが成功すると、企業価値を多くの人々に知ってもらうことができます。その企業の社員は「見られている」ことを常に意識するようになります。その企業に勤めているという誇りがモチベーション向上に結びつき、社員自身が企業ブランドをさらに追求していくことになるでしょう。こうした好循環によって、優秀な人材を呼び込むことが可能になるのです。

・社会的信用力の向上とそれによる資金調達力の向上
消費者がブランド企業の製品・サービスを選択するように、投資家や金融機関もブランディングされた企業にこそ投資・融資をしやすくなります。そのため、資金調達力の向上が期待できるわけです。

企業ブランディングに取り組むには

企業ブランディングが極めて重要なことは今まで述べてきた通りですが、その内容上、効果測定というのが難しいものでもあります。効果が実感できるまで、5年10年かかる長期にわたる取り組みにならざるを得えません。

そんな企業ブランディングのファーストステップとしては、企業の社会的使命と理念をもう一度見つめ直し、明確化することが必要になります。自分たちは何のために仕事をしているのか、そして自分たちの強みは何なのかを洗い出し、客観的に把握していくわけです。

ブランドは単なる「見てくれ」の問題ではありません。よくある誤解に、「企業ブランディング=かっこいいWebの制作」というものがあります。ロゴ制作やコーポレートカラーの決定なども重要ではありますが、それだけで企業ブランディングを図れるわけではありません。かつて、CI(コーポレート・アイデンティティ)でもそのような誤解がありました。

しかし、うわべだけのブランディングは、時間の経過とともにメッキが剥がれてしまうでしょう。Web、ロゴ制作、コーポレートカラー決定、オフィスの戦略的位置決めなどの方策もすべて必要ですが、企業ブランディングの根本には、その企業の社会的使命(ミッション)と企業理念(ビジョン)が存在しなければなりません。

ブランディング戦略で企業やサービスを体現している2社の事例

事例紹介:レッドブル

レッドブルが日本に参入したのが2005年ですが、それ以降エナジードリンクブームが続いているのは周知の事実です。それまでの機能性飲料はどこか「おじさん臭い」ものでしたが、レッドブルはそのイメージを完全に覆しました。

同社は、CMでも「タウリン1,000mg配合!」「人工甘味料ゼロ!」などと成分表示をアピールすることはありません。謳い文句は「レッドブル 翼を授ける」だけです。

つまり、飛び立つ主役はあくまで購入者の側で、レッドブルは翼を授ける=応援する側だということです。これがレッドブルのブランディング戦略なのです。

事例紹介:スターバックス

世界の人々にコーヒーを楽しむ生活スタイルを浸透させたスターバックス。有名な事実として、同社はテレビCMを行わないというものがあります。しかし、CMを行わなくてもその名は世界中に浸透しました。

スターバックスの元CEOハワード・シュルツは「私たちは空腹を満たす仕事をしているのではない。魂を満たす仕事をしているのだ」と述べているように、スターバックスの来店者は心地よい空間を求めています。同社ではそれを「スターバックス体験」と定義し、その経験を通じてリピーターを獲得しています。

同社では、スタッフを社員もアルバイトも含めて「パートナー」と呼び、コーヒーの知識や接客などについて頻繁にワークショプを開いています。そうしたパートナーのモチベーションの高さが、スターバックスのブランディングに大きく寄与しているのです。(提供:自社ビルのススメ


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