東日本大震災発生から今年で9年が経ちました。東北の被災地だけでなく、首都・東京にも被害をもたらしたこの震災は、今でも私たちの記憶に強く刻まれています。
中央防災会議の発表によりますと、今後30年以内にM7以上の首都直下型地震が発生する確率は70%にのぼるとのことです。太古の昔から地震が続いているわが国の歴史から言っても、近い将来首都直下型地震が避けられない可能性は否定できません。
このような事実から、「(東京で)不動産を保有するのはリスクが大きい」という意見があります。ここでは、地震に関するデータをもとに考察し、そうした意見を吟味していきます。
東日本大震災の経験
まずは東日本大震災において、東京の建物はどのような被害を受けたのか検証してみましょう。
首都圏で最大震度6強の強い揺れを観測、東京都内においても最大震度5強が9区2市1村、震度5弱が14区15市にのぼりました。震度6弱以上を観測し、圏域のほぼ全域で強い揺れを観測したのは、1923年の関東大震災以来のことです。
被害を受けた方のうち、東京都の死者は7名、行方不明者は0名、負傷者は117名でした。また、東京都内の建物の被害は、全壊16棟、半壊205棟、一部損壊6,234棟でした(数字は消防庁災害対策本部まとめH26.3.7第149報より)。
都内でもそれなりの建物被害がありましたが、「新耐震基準」の鉄筋コンクリートの建物は大きな損傷を受けていないという事実があります。新耐震基準とは、建築物の設計において適用される地震に耐えることのできる構造の基準で、1981(昭和56)年6月1日以降の建築確認において適用されているものです。
総務省消防庁の東日本大震災に関する報告でも、「新耐震基準で設計された建物は、構造部材に軽微なクラックや、コンクリート落下などはみられたものの、主体構造の被害はほとんどなかった」としています。
ライフラインはどうだったでしょうか。液状化が起こった江東区では、水道管破損・漏水があったものの、水道に関しては概ね平常通りでした。ガスも同様です。電気は、東京電力福島第一原子力発電所の事故があったため、計画停電が実施されたことは記憶に新しいです(ただし、23区内は除外)。
大きな課題として浮かび上がったのは、帰宅困難者の解消でした。鉄道各社の運休、道路の大渋滞などによって、発災当日帰宅できなかった人数は推計で約200~300万人と言われています(廣井悠 東京大学大学院工学系研究科助教による推計)。
こうしてみると、東京の都市機能は東日本大震災によって破壊されたとは言えず、帰宅困難者の問題を除いて概ね維持できたと総括できると思います。
予想される首都直下型地震ではどうなのか
今後30年以内に予想される首都直下型地震ではどのような被害が想定されているでしょうか。中央防災会議の予想では、人的被害は最大で2万3,000人、経済被害は直接被害で最大47兆円、間接被害で最大48兆円としています。
ただし、ここでも「震度6強以上の強い揺れの地域では、木造住宅密集市街地等において、老朽化が進んでいたり耐震性の低い木造家屋等が多数倒壊したりすると考えられる」と指摘されており、都心部のビル群が問題とはされているわけではないことは注目されてよいでしょう。
(参考:東京海上日動リスクコンサルティング「2013年12月19日公表 中央防災会議 「首都直下地震の被害想定と対策について」の解説-速報版」)
地震大国日本で暮らす私たちは、未来永劫地震のリスクと付き合い続けなければいけません。現実的には、地震のような天災のリスクと、東京の都市機能から得られるベネフィットを天秤にかけて、居住地やオフィス所在地を決めていく必要があるのです。『新・東京進化論』の共著者であり、明治大学名誉教授の市川宏雄氏は「マクロの視点で見れば、首都直下型地震はそれほど恐れるに足りない」と断言しています。
そうであるならば、リスクヘッジを行いつつ東京にオフィスビルなどの不動産を保有することは、中長期的な視点から充分にありえる選択肢だと言えるでしょう。
リスクヘッジの一つとして、新耐震基準で建てられたビルを選択するということがあります。1981年(昭和56年)6月1日以降に適用されている日本の耐震基準は「世界一厳しい」と言われていますので、地震リスクに備えるには大きな指標となります。
一例として、ボルテックスの「区分所有オフィス(R)」「VORT(R)」シリーズを見てみましょう。地震のリスク評価に用いられる指標にPML(Probable Maximum Loss:予想最大損失率)というものがあります。PMLは「予想される最大損失(補修費)/再調達費×100(%)」という計算式で求められ、0~10%が「きわめて低い」と評価されます。ボルテックスの「区分所有オフィス」ハイクオリティ・ブランド「VORT」シリーズは、PML値が平均7.05%(2019年2月末現在)と非常に低い数値となっています。もちろん、新耐震基準適用です。
また、「区分所有オフィス」というスキームは、リスクヘッジにも活用できると言えます。1棟の自社ビルを保有する場合に比べて資産を分散化させることができ、拠点を希少性の高いブランド立地に複数置くポートフォリオとすることによって、レジリエンス(弾力性)の強い資産とすることができるのです。
災害リスクに強く、資産価値の高い「区分所有オフィス」ハイクオリティ・ブランド「VORT」シリーズを検討されてみてははいかがでしょうか。(提供:自社ビルのススメ)
※参考図書:『新・東京進化論』
※「区分所有オフィス」、「VORT」シリーズは、株式会社ボルテックスの登録商標です。
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