ウォール街を代表する金融大手のゴールドマン・サックスは2019年3月5日、社内のドレスコードを緩めると発表しました。「クライアントの期待に反しない服装」であれば原則自由ということです。

この例のように米国の金融業界においては、日本に先行する形でビジネスカジュアルの流行が生まれています。

日本の金融業界における「ビジネスカジュアル」の潮流

スーツ離れ,ビジネスカジュアル
(画像=Olena Yakobchuk/Shutterstock.com)

日本におけるビジネスカジュアルの広がりはどうでしょうか。

日本では「働き方改革」の一環としてビジネスカジュアル(オフィスカジュアル)を取り入れる企業が数年前から増えています。また地球温暖化の緩和のために「夏場の軽装による冷房の節約」を目標に2005年ごろから「ノーネクタイ・ノージャケット」いわゆる「クールビズ」が誕生し、現在は多くの企業で実施されるようになりました。このような流れをくみ、ビジネスカジュアルを採用している企業も業界によるものの、以前より増えていると見られています。

メガバンクの一角・三井住友銀行は2019年9月2日から、スーツ着用としていたドレスコードを見直し、年間を通して服装を自由にしました。これは東京・大阪の本店で働く社員約7,000人が対象ですが、今後は他の支店でも認めていく方向だということです。新生銀行、静岡銀行、福井銀行でも8月からドレスコードを改定し、チノパン・ポロシャツなどを認めています。また9月からはイオン銀行、南都銀行が服装の自由化に踏み切っています。

このような実績からも「スーツからビジネスカジュアルへ」という動きが近年は日本、特に堅いイメージがあった金融業界でも広がりを見せていることがわかります。

若者世代はカジュアルに働ける環境を求めている

当事者たちはこの流れをどう受け止めているのでしょうか。

少し古い調査ですが、2016年9月8日に株式会社モニタスが発表した「東京のビジネスパーソン800人に聞く、オフィスのドレスコード調査」によると、オフィスカジュアル(ビジネスカジュアル)について「いい取り組みだと思う」と回答したのは全体の81.9%に上りました。

この調査結果を踏まえると「スーツからビジネスカジュアルへ」という流れは、ビジネスパーソンに強く支持されているといえるでしょう。特にミレニアル世代(平成初期に生まれ、インターネット環境が整ったころに育った最初の世代)と呼ばれる若い世代は、カジュアルな格好で働ける職場環境を求めている傾向にあります。

ドレスコード緩和の背景には、若い世代に企業姿勢を訴求することで優秀な人材の確保を目指す企業戦略があるわけです。

狙いはワークスタイル・イノベーション

金融業界でビジネスカジュアルが広がった背景の一つに、フィンテック(FinTech)の進化が指摘されています。フィンテックとは、ファイナンス(金融)とテクノロジー(技術)を掛け合わせた造語です。近年は、金融企業がそのフィンテック開発のためにICT企業と協働する場面が多くなっており、それに伴いICT企業の文化にも接近しているといえます。

もともとラフな服装は、アップル創業者のスティーブ・ジョブズに象徴されるようにICT業界ではスタンダードなものでした。フェイスブックCEOのマーク・ザッカーバーグも、いつもTシャツにジーンズ姿です。金融業界はFintechとの協働にともなって単にICT業界から服装文化を吸収しただけではなく、ICT各社が切り拓いてきたワークスタイル・イノベーションに触発されてきているといえるでしょう。カジュアルな服装がカジュアルなワークスタイルを実現させる。その延長線上に上司と部下の垣根を超えたコミュニケーションの深化を目指しているわけです。

一方で「スーツはビジネスの正装」「カジュアル過ぎるのは客に失礼」という声があるのも事実です。このため、各社とも店舗窓口や営業担当は従来通りのスーツが基本というところが多い傾向です。

とはいえ、今後ますますビジネスカジュアルが広がっていく流れは止まることはないでしょう。様々なワークスタイルの変化がICT業界から始まったように、「スーツからビジネスカジュアルへ」というトレンドはあらゆる業界に広がっていくのではないでしょうか。(提供:自社ビルのススメ


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