コワーキング・オフィスを世界的に展開しているWeWorkが、オフィス内にビールサーバーを常備して話題となりました。働く空間にアルコールが堂々と置かれている状況は、米国内でも衝撃をもって迎えられたようです。

米国では他にもTwitterやYelpなどのICT企業が、ビールなどのアルコール類をオフィス内で提供しており、社員にも人気だと言います。そして、こうした流れはスタートアップ企業やICT企業を始めとして、日本にも及んできています。
(ICT[Information and Communication Technology]:情報通信技術)

目的は社内コミュニケーションの活性化

オフィス,乾杯,社内コミュニケーション
(画像=ESB Professional/Shutterstock.com)

人類は太古の昔から、アルコールをコミュニケーション・ツールとして使ってきました。お酒には、人をリラックスさせたり、会話を増やしたりする効果があります。これは、アルコールの「脱抑制」という効能によるものです。理性的な抑制を一部解除することで、普段言えないことが言えたり、できない行動を行うことができたりするようになるのです。(もちろん、飲みすぎると後先考えずに行動したり、感情をむき出しにしたりといったマイナス面も伴います。)

そのため、企業も社員間、あるいは取引先・顧客とのコミュニケーション活性化のために、お酒を利用してきた歴史があります。企業とアルコールの関係は切っても切れないもので、一つの文化と言えるものでした。

しかし、近年ささやかれる「若者のアルコール離れ」や人間関係の希薄化、「アルハラ」「セクハラ」を避ける動き、働き方改革に伴う定時退社など、企業を取り巻く環境の変化によって、飲み会を通じた社内コミュニケーションは退潮傾向にあるのかもしれません。

社員の飲み会に積極的な企業でも、「仕事終わりに飲みに行こうとしても、社員が集まりづらい」という声は決して少なくないのが実情です。とくに、大所帯の企業ともなればなおさらでしょう。そのため、飲みに行くのはいつも同じメンツで、異なる部門のコミュニケーションが取りづらいといった傾向にあります。

そうした背景もあり、近年は、社内にバー・スペースを設置することによって社員間のコミュニケーションを活性化する空間づくりを行う企業が増えてきています。アルコールの持つ「脱抑制」効能を生かして、社内コミュニケーションを促進させたり、新しいビジネス・アイディアを生み出したりすることが期待されているのです。

多様に使われる社内バー・スペース

こうした社内バー・スペースは、単に社員の飲み会だけではなく、取引先への接待としても使われることがあります。社内での会議・打ち合わせの後に気軽に活用できるという点は、双方にとってメリットがあるでしょう。また、顧客を招いての社内イベントの開催スペースとして利用しても良いかもしれません。

もちろん、こうしたスペースはお酒抜きでのミーティングスペースとして、あるいはランチスペースとして利用することも可能です。

社内バー・スペースを導入している企業には、スタートアップ企業やICT企業に多いのですが、そうした企業は優秀な人材獲得のために注力しているという側面があります。つまり、自由なワーク・プレースの演出が「自由な企業文化」のアピールにつながり、そこに惹かれる人材を獲得する戦略の一つなのです。

社内での飲酒には否定的な意見も

一方で、こうした「アルコール解禁」には、批判が根強いのも事実です。かつては、ノンアルコールビールを会社で飲んだ人が出勤停止になる騒動もありました。そのような例を踏まえると、「仕事とお酒は一線を画すべき」と思う人が多くいても不思議ではないでしょう。

社内での飲酒について否定的な意見がある理由としては、以下のような懸念があると考えられるためです。

・お酒を飲まない社員にとっては迷惑に感じる
・セクハラやケンカなど悪酔いをする人が出てくる
・社員が会社の外で問題を起こした場合、企業の責任が問われる
・職場の国際化にともない、イスラム教徒が入社したときに対応が求められる
・バー・スペース維持のための出費がかかる

トラブル回避のためにルールの明確化を

以上のようなトラブルを事前に回避するためも、ルールの明確化は必須となります。具体的には、以下のようなルールを定める必要があるでしょう。

1.飲酒開始・終了時間を決める
2.バー・タイムは必ず業務終了後に設定する
3.飲酒して良い場所と駄目な場所とのゾーニングなどを定める

また、これを機会に、アルコール・リテラシー向上のためのワークショップを開いても良いかもしれません。

それでは次に、実際に社内バー・スペースを導入した企業の事例をご紹介します。

事例紹介:株式会社SmartHR

クラウド人事労務ソフト「SmartHR」を提供する株式会社SmartHRのオフィスには、フリースペース・エリアにバーカウンターが作られています。このバーカウンター横には、業務用冷蔵庫が置かれ、中にはビールなどのお酒が常備されています。18時半以降であれば、無料で飲むことができるとのことです。

宮田昇始代表取締役によりますと、バーカウンターがあるとビール片手に多くの人が自然に集うようになったそうです。会社の業務として「組織の活性化」や「情報の共有化」を掲げて行うよりも、バーカウンターで飲みながらの交流のほうが、そうした課題が達成されたと言います。

事例紹介:ChatWork株式会社

ビジネスチャットサービス「チャットワーク」を提供するChatWork株式会社も、社内にバーカウンターを備えています。同社のコーポレートミッションは「働くをもっと楽しく、創造的に」。そのミッション通り、オフィス家具をDIYで作ったり、シアタールームがあったりと、オフィスを楽しくする仕掛けがたくさんあります。

バーカウンターが設置されているのは、オープンミーティング席もあるカフェ空間の中央。
この場所で終業後に軽く一杯飲むだけでなく、月に1度、社員がバーテンダーになってお酒を飲むイベントを開催して、社内コミュニケーションに役立てているとのことです。

いかがだったでしょうか。そのメリット、デメリットをふまえた上で、社内バー・スペースの設置を社内コミュニケーション活性化の一手段として検討しても良いのではないでしょうか。(提供:自社ビルのススメ


【オススメ記事 自社ビルのススメ】
「都心にオフィスを持つ」を実現するには
資産としてのオフィスを所有し戦略的に活用するには
今の時代は「オープンフロア・オフィス」そこから生まれるイノベーションへの期待
自社ビルのメリット・デメリット
CRE戦略としての自社ビル