不動産は人生最大の買い物と言われるほどの高額商品です。それだけに不動産の売買は「品物と代金を交換する」といったようにその場ですべてを完結することはできません。これまで不動産売買の経験がない方にとっては、その一連の流れが複雑で煩わしいものに感じてしまうこともあるでしょう。

しかし、ご安心ください。不動産売買は決して複雑怪奇なものではなく、一連の流れを理解してひとつずつ進めていけば初めての方であってもスムーズかつ安全に進めることができます。

当記事では、不動産売買の流れについて全体像から注意しておくべきポイントまで解説します。また、ほとんどの場合は不動産売買を専門家である不動産会社に任せることになるため、そのメリットとデメリット、さらに失敗しない不動産会社の選び方についても伝授していきます。

不動産売買を控えている方、検討している方にとってはとても重要な情報ばかりなので、ぜひ最後までお読みください。

不動産売買,流れ
(画像=chinnarach/stock.adobe.com)

目次

  1. 1.不動産売買の流れ
    1. 1-1.相場の確認
    2. 1-2.不動産会社への相談、価格査定
    3. 1-3.媒介契約を結ぶ
    4. 1-4.売買活動、部屋のクリーニング
    5. 1-5.内覧対応、価格交渉
    6. 1-6.買付(購入申込書)をもらう
    7. 1-7.売買契約を結ぶ
    8. 1-8.代金授受、不動産の引き渡し
    9. 1-9.譲渡税の納付
  2. 2.不動産売買を行う前に確認しておきたいポイント
    1. 2-1.売買を行うタイミングは適切か
    2. 2-2.どれくらいの費用で売買するのが妥当か整理
    3. 2-3.実際にかかる費用をシミュレーション
    4. 2-4.もしも失敗したら、どのようなリスクがあるのか確認
    5. 2-5.発生する税金はどのようなものがあるのか確認
  3. 3.不動産売買を不動産会社に任せるメリット、デメリット
    1. 3-1.不動産会社に任せるメリット
    2. 3-2.不動産会社に任せるデメリット
  4. 4.不動産会社を選ぶにあたって
    1. 4-1.不動産の基礎知識は必要
    2. 4-2.不動産売買の流れを理解しておく
    3. 4-3.費用にも注意をはらう
    4. 4-4.大手vs地元の不動産会社
  5. 5.まとめ

1.不動産売買の流れ

不動産売買,流れ
(画像=beeboys/stock.adobe.com)

不動産売買の流れには、9つのステップがあります。それぞれのステップごとに必要に知識を解説します。

1-1.相場の確認

不動産の価格には厳然とした相場があります。売る人、買う人ともに最初にするべきことは、売買する予定の物件について価格の相場を確認することです。相場の確認方法については、主に以下のような方法があります。これらは住居物件だけでなく、商業物件においても共通で同様の方法で調べることができます。

①不動産取引価格情報検索(国土交通省)
国土交通省が提供している不動産取引結果のデータベースです。近隣の類似物件取引を探すことで、相場観を掴むことができます。

【リンク】
不動産取引価格情報検索

②不動産ポータルサイト
「アットホーム」「suumo」「HOME’S」といった不動産ポータルサイトで、売買予定の物件の近隣類似物件を探します。ただし上記の国土交通省のデータベースとは違って売りに出されている物件の情報なので、「その価格では成約しない」ことを前提に情報収集をしてください。

【リンク】
アットホーム
suumo
HOME’S

1-2.不動産会社への相談、価格査定

大まかな相場観を掴んだところで、売却予定の方は不動産会社に査定をしてもらうステップに進みます。すでにある程度の相場観があるので、自分で掴んだ相場観との相違がないか、相違が大きい場合はなぜその査定価格になったのかを納得いくまで訪ねてください。

1-3.媒介契約を結ぶ

不動産会社に売却を依頼する場合、売主を探してもらうことになります。売主を探して売買契約、物件引き渡しまでのサポートをしてもらう契約のことを媒介契約といいます。査定価格に納得できたのであれば、不動産会社と媒介契約を締結します。媒介契約には主に以下の種類があります。

一般媒介契約複数の不動産会社に仲介を依頼する契約形態。売主が自ら買主を見つけて売買をすることも可能です。
専任媒介契約特定の不動産会社に仲介を依頼する契約形態。ただし売主が自ら買主を見つけて売買をすることは可能です。
専属専任媒介契約専任媒介契約では売主自身が買主を探すことは可能ですが、専属専任の場合はそれも不可となります。

下にいくほど売主にとっては制約が多くなりますが、その一方で専任媒介は不動産流通機構への売却情報義務や、定期的な報告義務が不動産会社に発生するため、より確実に売却したい場合に適した媒介契約です。また、他の不動産会社に「浮気」をしていないことから不動産会社としても本腰を入れやすく、急いでいる場合や確実に売却したい場合は主に専任媒介契約が選択されます。

1-4.売買活動、部屋のクリーニング

不動産会社が売買活動を開始したら、買主候補が物件を見たいというオファーが入る可能性があります。そのために売主がしておくべきことは、物件のクリーニングです。専門の清掃業者に依頼することもできますが、ご自身でやっても問題ありません。

買主候補の内覧に備えて留意しておきたいのは、「室内を広く見せる工夫」です。マンションのモデルルームが分かりやすい例ですが、床に無駄なものを置かず、採光や色調なども工夫することで室内を広く、そして洗練された雰囲気に演出しています。

まだ居住している場合はどうしても家具などが置かれたままなので広く見せるには限度がありますが、床に無駄なものを置かないだけでもかなり印象が変わります。いずれ引っ越すことになるので、そのための準備も兼ねて断捨離をするなど、できるだけ無駄なものを少なくするようにしましょう。

近年では中古物件をモデルルームのように演出することで売却を有利に進める「ホームステージング」という考え方もあります。ホームステージングによって高値売却の可能性が広がるのであれば、検討する価値はあるでしょう。

1-5.内覧対応、価格交渉

不動産会社が売却活動を始めると、広告を見た買主候補から内覧のオファーが入ります。内覧に来るということはその物件の購入を検討している人なので、誠意ある対応で不動産売買をスムーズに進めるよう心掛けたいものです。

不動産売買の当事者である売主と買主は、利益相反の関係にあります。売主は少しでも高く売りたいと考え、買主は少しでも安く買いたいと考えます。不動産は高額商品だけに交渉による価格の振れ幅も大きくなるため、内覧の次に進められる価格交渉はとても重要です。

ここで大事なポイントは、交渉時の柔軟な姿勢です。不動産売買は情報の鮮度が命と言われており、売却活動を始めた直後が最も売れやすい傾向があります。価格交渉で一切値引きに応じずにいると売買が成立せず、売りに出される期間が長くなり、やがて内覧のオファーも入らなくなってしまいます。

不動産業界ではこうした物件のことを出回り物件と呼び、「そのうち困ったら値下げするだろう」と足元を見られてしまうことになります。出回り物件になってしまうと高値売却どころか売却そのものも難しくなってくるので、売却活動を始めた初期に交渉をまとめしまうのが、結果的に最も有利な条件であることが多々あります。

1-6.買付(購入申込書)をもらう

買主が購入を決めたら、買付申込書が作成されます。これは書面によって不動産購入の意思表示をするためのもので、買付申込書を受領した時点で売却活動も一旦終了となります。

1-7.売買契約を結ぶ

買付申込書は購入の意思表示をするためのものであり、不動産売買を確定させるものではありません。正式に不動産売買を行う際には、売主と買主が売買契約を締結します。売買契約が成立したことで、その物件の売却が確定します。

なお、不動産業界の慣習として売買契約成立時に買主は購入価格の1割から2割程度の手付金を支払います。

1-8.代金授受、不動産の引き渡し

売買契約が成立したら、その契約内容に基づいて代金の授受が行われます。売主は代金を受領するのと引き換えに、物件を買主に引き渡します。

1-9.譲渡税の納付

不動産売買によって売主に価格差益が発生した場合、その差益分を譲渡益といいます。この譲渡益には譲渡税が発生しますが、その不動産物件を所有していた期間によって税率が以下のように異なるので注意してください。

不動産の所有期間税率
長期譲渡所得5年超所得税15%+住民税5%
短期譲渡所得5年以下所得税30%+住民税9%

ご覧のように、長期と短期では税率が倍近く異なります。これは不動産の短期転売への対策として導入されているもので、譲渡益が発生しそうな不動産売買で所有期間が5年前後の場合は税率の違いを考慮した売買計画をおすすめします。

2.不動産売買を行う前に確認しておきたいポイント

不動産売買,流れ
(画像=ralf-geithe/stock.adobe.com)

不動産売買の一連の流れを理解していただいた上で、事前に確認しておきたいポイントを整理しました。不動産売買の戦略に関わる部分なので、ひとつずつしっかりと押さえておいてください。

2-1.売買を行うタイミングは適切か

不動産の売買には、適切なタイミングがあります。特に売却ではタイミングが結果に大きく影響するので、以下の点に着目してください。

1 購入時よりも高く売れそうな状況である
これは特に投資目的で不動産を所有している方に当てはまります。不動産投資の主な収入源は賃料ですが、売却でも利益が見込めるのであれば次にそのようなチャンスが来る保証はないため、その時は売却を検討すべきタイミングです。

②不動産売買の繁忙期は1月から3月
年間を通じて不動産売買が最も活発になるのは、1月から3月の年度末です。理由は4月から始まる新生活に合わせて不動産の購入や賃貸契約が増えるからです。売却にはおおむね数か月を要するので、逆算して11月や12月頃から売却の具体的な行動を始めるのが理想です。ただしこれは住居用の不動産に当てはまる季節的な傾向であり、商業用物件はこの限りではありません。

2 近隣で大規模な分譲が予定されている
前項と同じく住居用不動産の売却タイミングとして意識したいのは、近隣の大規模な住宅、マンションの分譲です。近隣で家の住み替えを検討している人が大規模分譲で買い替えをすると、旧宅が一斉に売りに出されるため、だぶつき感から値崩れを起こす可能性があります。こうした動きを察知できた場合は、早めに売却活動を始めておくのが無難です。

④物件の所有期間が5年前後の場合
先ほど解説した短期譲渡所得の問題を考慮すると、所有期間が5年前後の場合は要注意となります。5年を超えているのと超えていないのとでは税率に倍近くの差があるため、所有期間がまもなく5年で売却益の発生が見込まれる場合は、5年経過後に売却するべきでしょう。

2-2.どれくらいの費用で売買するのが妥当か整理

不動産売買は売主と買主による交渉が価格決定の大きなウェイトを占めます。ほぼ間違いなく買主候補からは値引きの交渉を持ちかけられるため、その際にどこまで値引きを許容できるかを戦略的に想定しておく必要があります。

売却を依頼する不動産会社と相談をして決めることになりますが、譲歩の余地が少なければ売却できる確率は落ちます。その一方で柔軟に応じるほど売却しやすくなりますが、手残りの現金が少なくなってしまいます。「これ以上であれば売っても良いが、それ以下の場合は売らない」という妥当なラインを想定した上で、価格交渉に臨みましょう。

2-3.実際にかかる費用をシミュレーション

不動産の売買で発生する費用をあらかじめシミュレーションしておくことも重要です。ただ単に代金と引き換えに不動産を引き渡せば良いというわけではなく、それぞれの場面で費用が発生します。不動産売買で想定しておくべき主な費用は、以下の通りです。

・仲介手数料(売却価格の3%+6万円)
・印紙税(1,000円から3万円程度)
・ローン残債がある場合は一括返済手数料(1万円から3万円程度)
・抵当権抹消費用(数千円から2万円程度)
・譲渡益が発生した場合は譲渡所得税(税率は上記の通り)

売却を完了するまでにこれらの費用が必要になるので、あらかじめ物件価格を想定してシミュレーションしておきましょう。

2-4.もしも失敗したら、どのようなリスクがあるのか確認

不動産売買に失敗してしまった場合、どのようなリスクがあるのでしょうか。成功させるノウハウも重要ですが、その一方で「最悪の事態」を想定しておくことも重要です。不動産売買で考えられる失敗には、以下のようなものがあります。

・思うように買主が見つからず時間がかかる、もしくは安値になってしまう
・親族など身内が買いたいと言ってきたが専属媒介契約をしたことで売却できない
・引き渡し後に不具合が発覚しトラブルになってしまう

これらの失敗例は意外に多く、不動産売買をする際にはすべての人が考慮しておくべきリスクです。どのリスクも軽減、解消が可能なものばかりなので、不動産会社選びや媒介契約においてはリスクを十分に考慮した上で慎重に検討することをおすすめします。

2-5.発生する税金はどのようなものがあるのか確認

不動産売買で発生する費用についてはすでに解説しましたが、その中でも税金だけは交渉によって安くすることはできず、必ず付いて回るものです。そこで不動産売買時に発生する税金についてマスターしておきましょう。

①譲渡税(所得税+住民税)
②印紙税

いずれもすでに解説したものです。①については譲渡益が発生しなければ非課税ですが、②については売買契約時に発生するものなので、売買成立=印紙税が発生するとお考えください。

3.不動産売買を不動産会社に任せるメリット、デメリット

不動産売買,流れ
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ここまでの解説で、不動産売買の全般において不動産会社に任せることを前提にしてきましたが、そもそも不動産会社は売買において何をしてくれるのか、どのようなメリットがあるのかという疑問もおありではないかと思います。ここでは、不動産売買の一連の流れを不動産会社に任せるメリットとデメリットについて解説します。

3-1.不動産会社に任せるメリット

不動産売買を不動産会社に任せると、主に以下のようなサービスが提供されます。

・不動産の査定
・集客(買主を見つけるための宣伝活動)
・物件の内覧対応、現地案内
・価格交渉(売主と買主の間に入って価格交渉を引き受ける)
・売買契約の立ち会い、サポート
・引き渡しの立ち会い、サポート

これを踏まえた上で不動産売買を不動産会社に任せるメリットは、以下のようになります。

①煩わしい作業全般を代行してくれる
②不動産の適正価格を知った上で売買ができる
③発生しがちなトラブルを防止できる

3-2.不動産会社に任せるデメリット

次に、不動産会社に任せることによって考えられるデメリットについても挙げてみます。

①仲介手数料が発生する
②専属専任媒介契約だと自分で勝手に売買ができなくなる
③依頼する不動産会社によって当たり外れがある

3つ目の当たり外れについては、あまり積極的に動いてくれなかったり、そもそもノウハウが乏しい不動産会社に依頼してしまうと、スムーズな売買以前に取引相手すら見つからない可能性があります。しかも専任媒介だと他に「浮気」もできず二重苦になってしまうので、不動産会社選びはとても重要です。次章では大切な不動産会社選びについて解説します。

4.不動産会社を選ぶにあたって

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不動産売買の成否を握るといっても過言ではない不動産会社選びについて、重要なポイントを解説します。

4-1.不動産の基礎知識は必要

不動産会社に煩わしい作業などを一任するのは良いのですが、だからといって不動産のことを全く理解していない状態で依頼するのは好ましくありません。なぜなら、不動産の世界は専門性が高い上に「海千山千」の一面があるからです。高額商品だけにちょっとした価格の違いでも数百万円規模になってしまうため、知らない間に不利になってしまうことがないように理論武装しておくことは重要です。

当記事で解説している内容をマスターしておけば、基本的な知識は十分網羅できます。

4-2.不動産売買の流れを理解しておく

前項と同様、不動産会社に一任する場合であっても不動産売買の流れを大まかに理解しておくことも重要です。ひとつの工程を終えた時、次に何をするべきなのかを自分でも理解しておくことで前もって準備もしやすくなりますし、それによってミスが起きにくくなり全体の流れもスムーズになります。

4-3.費用にも注意をはらう

不動産売買には9つのステップがあり、その中には費用を伴うステップがあることはすでにご理解いただいていると思います。100円のものを取引するために買主が100円を支払い、売主が100円を受け取るといったシンプルなものではないため、費用面でも十分な理解をしておくべきでしょう。

実際に売買のステップが進んでいくうちに「こんな費用も必要になるのか」と愕然としてしまうことを避けるためにも、当記事で解説している費用面の知識も押さえておいてください。

4-4.大手vs地元の不動産会社

不動産会社を大きく分類すると、全国展開している大手不動産会社と地元に密着した不動産会社があります。より売買のチャンスを広げるために大手に依頼するのが最善だと考えたくなりますが、実はそうでもない部分があります。

大手不動産会社にはスケールメリットや営業力があるので、確かにより多くの人に物件情報を知ってもらうことはできます。しかし、不動産物件はひとつしかないので、最終的に売買成立となるのは1人です。その最終的な1人さえ見つかれば良いので、数が多いことが必ずしもメリットになるとは限らないのです。

その一方で地域密着型の不動産会社は地元の有力資産家などとのパイプを有していることも多く、売却情報を表に出す前に売買を成立させることもあります。また、地域に密着している不動産会社には他の営業エリアがありません。地元で悪い評判が立ってしまうと地元で商売ができなくなってしまうため、誠意をもった対応も期待できます。

大手と地元の不動産会社にはそれぞれの良さがあるので、会社の規模だけで決めるのではなく、提案内容や対応など安心して任せられるかどうかに主眼を置いて選ぶのが良いでしょう。

5.まとめ

不動産売買の流れについて、その全体像から注意すべきポイント、そして不動産会社との関わりについて解説してきました。当記事で得られた知識があれば初めての方であっても安全かつスムーズに売買を進められるので、これから始まる不動産売買にぜひお役立てください。(提供:ビルオーナーズアイ


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