2020年7月18日時点で東京都における新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)の感染者数は3日連続200人以上となり、いまだに落ち着くタイミングは見えてきません。コロナショックが経済に大きな打撃を与え「今後不動産価格が暴落する」という憶測も広まっています。しかしこの憶測は正しいのでしょうか?この記事では、アフターコロナの不動産市場についてデータに基づいて検討していきます。
コロナショックが世界経済を直撃
コロナショックに直撃された形になったのが株価です。2020年3月16日の米ダウ工業株30種平均は2万188米ドルに急落、前週末比2,997米ドル安となりました。これはダウ史上最大の下げ幅記録です。同時期、日本でも株価の暴落が起きています。同年3月13日、日経平均株価は1万7,431円5銭に急落、前日比1,128円58銭安となり歴代下げ幅13位となりました。
日経平均株価終値の推移
株式市場の暴落は日米だけでなく世界同時に発生しています。この時期、サウジアラビアが原油の大増産に踏み切り原油価格が暴落したことも混乱に拍車をかけました。原油価格の指標となる米国産WTI原油の先物価格(5月物)が同年4月20日、史上初めてマイナス価格(1バレル=マイナス37.63米ドル)を記録したのです。
さらに世界の主要都市でロックダウン(都市封鎖)が実施され日本も同年4月7日に緊急事態宣言が発令されることとなり国民の行動が著しく制限されることとなりました。人の動きの停滞に伴って財・サービスの提供も寸断されることになったため、必然的に世界経済は滞っていったわけです。
東京の不動産価格はどう推移しているのか
大幅な下落相場の中で不動産価格はどう推移しているのでしょうか。ここでは東京の不動産価格に注目します。東京カンテイが2020年6月23日に発表した「首都圏中古マンション価格(70平方メートルに換算した価格)」によると東京都23区の中古マンション価格は前月比-0.8%の5,097万円となりました。ただ下落の理由は主に平均築年数が25.0年から25.6年にやや進んだ影響からだとされています。
また都心6区(千代田区・中央区・港区・新宿区・渋谷区・文京区)に限ると前月比+0.3%の8,373万円と上昇しています。そのため2020年5月時点で東京都心部の住居系不動産価格の変動は極めて微小かつ誤差の範囲内といえるのではないでしょうか。それでは、経済の影響をよりダイレクトに受ける事業系はどうでしょうか。指標は都心5区の空室率と賃料を見ていきます。
三鬼商事の調査によると都心5区(千代田区・中央区・港区・新宿区・渋谷区)の2020年6月時点の平均空室率は1.97%となり前月比0.33ポイント上昇となりました。やはり2020年6月段階では、新型コロナの影響を受けて移転・解約や成約の減少が生じたようです。一方で都心5区の2020年6月時点の平均賃料は1坪2万2,880円となり前年同月比6.33%(1,362円)上昇、前月比0.19%(44円)上昇を記録しました。
そのため78ヵ月連続(2020年6月時点)の賃料上昇となっています。空室率の上昇は不動産価格を押し下げる効果がありますが、賃料上昇は同価格を押し上げるベクトルが働くため、こちらの指標もただちに不動産価格の下落を示すものとはなっていないようです。
心配される実体経済への影響
東京の不動産価格に限っていえば2020年6月時点ではまだ悲観的な数字にはなっていません。しかし新型コロナの影響は長期に及ぶと見られているため、今後どのように推移するかは注意が必要です。最も懸念されるのは、新型コロナの実体経済への影響でしょう。国際通貨基金(IMF)は2020年6月の「世界経済見通し(WEO)」において2020年の世界GDPが4.9%のマイナス成長になると予想しました。
これは2020年4月のWEOの予想からさらに1.9%低くなっており、新型コロナのパンデミックは2020年前半の経済活動に予想以上のマイナス影響を及ぼしていることを示しています。今回のコロナショックは「リーマンショック以来の経済危機」といわれますが、これら2つの事象には根本的な違いがあることは押さえておきたいポイントです。
根本的な違い
2008年 リーマンショック | 2020年 コロナショック |
資金が回らないことによる経済危機 | 人と物が回らなくなった経済危機 |
まずリーマンショックは、2008年秋に生じた米投資銀行大手リーマンブラザーズの経営破綻に伴う世界的な金融危機でした。金融危機とは、資金が回らないことによる経済危機です。しかしコロナショックの場合は、ロックダウンなどにより人と物が回らなくなった経済危機という点で違いがあります。そのため金融緩和や財政出動で資金の潤滑を良くしても人と物が動かない限り経済を回復させることはできません。
ただしこの事実は逆の見方をすることもできます。コロナショックは金融危機には結びついていないので世界的な信用不安からの企業の連鎖倒産にはいたっておらずロックダウン解除や将来的なワクチン・特効薬の開発が進めば急速に好転する可能性があるのです。現にアフターコロナ・フェーズにいたっており世界経済は落ち着きを見せ始めています。
世界各国はロックダウンを徐々に緩和し経済活動を再開。いち早く「収束宣言」をした中国が2020年4月8日に武漢市の封鎖解除に踏み切りました。他の主な国も以下のように緩和へと舵を切っています。
国名 | 外出自粛緩和時期 |
---|---|
ドイツ | 2020年4月20日以降 |
フランス | 2020年5月11日以降 |
イギリス | 2020年5月13日以降 |
日本 | 2020年5月14日以降(39道府県) 2020年5月25日以降(47都道府県すべて解除) |
アメリカ | 2020年4月下旬~5月中旬以降(州により異なる) |
ドイツが2020年4月20日以降、日本が5月14日、25日以降、フランスが5月11日以降、イギリスが5月13日以降など段階的に外出規制を緩和。米国では州によりばらつきがありますが、5月中旬~下旬ごろまでには外出規制の一部緩和が実施されています。アフターコロナ下の日常生活に復帰するに伴い経済指標も好転しているため一例として米国の例を見てみましょう。
米国供給管理協会(ISM)が発表した2020年6月ISM非製造業景況指数は57.1と3ヵ月ぶりに好況と不況の境目となる50を上回り2020年2月来の高水準に回復しています。非製造業はロックダウンの影響を製造業よりも強く受けている分野なので封鎖解除の効果が如実に現れた形です。
アフターコロナ時代のCRE戦略
アフターコロナ時代は今後も継続していく可能性が高いため、「実体経済や不動産市場にどの程度影響を与えるか」は不透明なところがあります。しかし前章までのデータを冷静に見ると、世の中で叫ばれているほど不動産市場の行く末を過度に悲観視する必要はないともいえるでしょう。企業にとっては、アフターコロナ下での経済停滞によって本業が不調になっても生き残っていくために経営の多角化を決断するタイミングなのかもしれません。
経営の多角化として「自社ビルを取得し自社使用分以外を賃貸に出して賃料収入を得る」という方法も有効な選択肢の一つです。またいざというときには「リースバック」という手法で自社ビルを使用しながら資金調達する方法もあります。なお自社ビルの具体的なメリットとしては、以下の6点が挙げられるでしょう。
<自社ビルのメリット>
- 自社保有の資産として活用できる
- 長期的に見ると費用が節約できる
- 建物使用上の制約が少ない
- 賃料増額交渉がない
- 自社ビルを担保として金融機関から借り入れできる
- 好立地にある自社ビルは会社のブランド向上につながる
ただし自社ビルには以下のようなデメリットも存在します。
<自社ビルのデメリット>
- 初期費用が大きい
- オフィスの移転がしにくい
- 管理のコストがかかる
- 業績が悪くなったとき借入金返済が厳しくなることがある
これらのデメリットを解決するのがボルテックスの「区分所有オフィス®」という不動産商品です。ビルを1棟まるごと取得するのではなくフロアごとまたは部屋ごとに取得できるため、初期費用を抑えることができます。また管理の手間については、ボルテックスが管理組合を組成し同社にて修繕積立基金を拠出します。
長期修繕計画に基づき運用するため、突発的なコストを平準化することも可能です。仮に業績不振で売却しなければいけなくなったときも「1棟ビルよりも流動性が高いため現金化しやすい」という側面もあります。アフターコロナ時代の企業不動産(CRE)戦略として「区分所有オフィス」を選択肢に加えてみてはいかがでしょうか。
※「区分所有オフィス®」は株式会社ボルテックスの登録商標です(提供:自社ビルのススメ)
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