2020年5月27日、自民・公明の与党両党と日本維新の会などの賛成多数により「国家戦略特別区域法の一部を改正する法律」が可決・成立しました。この法律は「スーパーシティ法案」と呼ばれているもので、法案の成立によって国家戦略特区を生かした新しい街づくりが勢いづくと見られています。それでは「スーパーシティ」とはいったい何なのでしょうか。

この記事では「スーパーシティ構想」が描く未来を概観し、企業不動産(CRE)戦略の方向性を見定めていきます。

スマートシティというトレンド

スーパーシティ法
(画像=peera/stock.adobe.com)

スーパーシティよりも「スマートシティ」という言葉を聞いたことがある人のほうが多いのではないでしょうか。スマートシティは2010年代以降、世界的に注目を集めるようになったコンセプトで以下のような最新技術を活用しています。

  • ICT(Information and Communication Technology):情報通信技術
  • IoT(Internet of Things):モノのインターネット
  • AI(Artificial Intelligence):人工知能
  • ビッグデータ
  • 再生可能エネルギー
  • ロボット
  • 自動運転など

これらを活用かつインフラや都市サービスを効率的に管理・運営し、全体最適化が図られる持続可能な都市がスマートシティです。2020年8月時点でも新型コロナウイルス問題が影響しているため今後は不透明なところもありますが、世界の人口は都市に集約されていくことが予測されています。しかし急速な都市化は以下の3つの問題を引き起こすため、同時に問題解決の案も必要です。

  • 人口急増による交通渋滞、排気ガスによる大気汚染
  • 都市生活者が必要とする生活サービスへの需要が増大
  • エネルギー需要の拡大と地球温暖化問題など

(参照:United Nations(国際連合)「World Urbanization Prospects 2018」

日本政府は、日本が目指すべき未来社会の姿として「新たな社会(Society 5.0)」というコンセプトを掲げています。私たちのこれまでの社会は大きく分けると以下の4つになります。

  • 狩猟社会(Society 1.0)
  • 農耕社会(Society 2.0)
  • 工業社会(Society 3.0)
  • 情報社会(Society 4.0)

これらに次ぐ新たな社会(Society 5.0)の定義は「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムで、経済発展と社会的課題の解決を両立させる人間中心の社会」となっています。Society 5.0に基づくまちづくり・都市形成こそスマートシティなのです。

スーパーシティはスマートシティを実装させるための仕組み

スーパーシティとは、これまで述べたスマートシティのコンセプトを日本独自に実現するための構想です。スーパーシティ構想におけるポイントは「技術の先進性」よりもスマートシティのコンセプトを実装させるための「住民の合意形成」であり、そのための「規制改革」にあります。内閣府の「スーパーシティ解説」によると、スーパーシティ構想の概要は以下の3つにまとめられています。

  • 自動走行や再生可能エネルギーなど個別分野限定の取り組みではなく決済の完全キャッシュレス化、行政手続きのワンスオンリー化(さまざまな行政手続きを1回で済ませる)、オンライン授業、オンライン診療、自動走行の域内フル活用など幅広く生活全般をカバーする取り組みであること

  • 一時的な実証実験ではなく2030年ごろに実現され得る「ありたき未来」の生活の先行実現に向けて暮らしと社会に実装する取り組みであること

  • 供給者や技術者目線ではなく住民の目線でより良い暮らしの実現を図るものであること

これを内閣府は「まるごと未来都市」と呼んでいます。「まるごと未来都市」を実現するために最も重要になるのが規制改革です。例えば、オンライン授業を充実させるためには学校教育法施行規則や著作権法などを改正したり、オンライン診療のためには医師法を改正したりすることが求められます。AIやビッグデータを活用した最先端技術のサービスを実現するには、各分野の規制改革を同時一体的に進めなければなりません。

そのためスーパーシティでは「データ連携基盤整備事業」が事業の核になります。複数のサービスのデータ連携を条件としているため、「データ連携基盤の有無がスーパーシティかどうか」の一つの目安になるでしょう。ビッグデータにはマイナンバーなど個人のセンシティブ情報が含まれることがあります。それを横断的に活用するためには、大前提として住民の合意形成が必要不可欠です。

例えば、カナダのトロント市でスマートシティ計画に取り組んでいたGoogleの関連会社が最終的に撤退してしまいました。これは、個人情報の取り扱いをめぐる市民の疑念を払拭できなかったからと指摘されています。このようにスーパーシティでは、事業計画立案において住民の合意形成を行うことが第一にクリアしなければならない項目となっているわけです。

(参照:内閣府「スーパーシティ解説」

スーパーシティが新たなビジネスチャンスに

政府は2019年9月9日からスーパーシティ構想の検討を進めている自治体から検討中のアイデアを募集する「自治体アイディア」公募を実施。2020年6月1日現在で56の自治体からアイデアが出されています。

スーパーシティ構想に関連する知見・技術を持つ企業と自治体がFacebook上で交流する「スーパーシティ・オープンラボ」には、2020年8月1日時点で155の事業者が参加しています。

スーパーシティ法の可決により日本各地で「スーパーシティ/スマートシティ構築」がより一層進むでしょう。日本の先進技術は世界水準ですが「岩盤規制」と呼ばれる各種法令の規制、業界団体の権益などが複雑に絡みスマートシティ実現の場面では国際的に遅れを取ってきた感があります。

今後一体的な規制改革が可能となることで、これまでの阻害物が外れて「スーパーシティ/スマートシティ構築」が奔流の勢いを得るのではないでしょうか。

東京のスマートシティ化

東京都は2020年7月17日、東京のスマートシティ化に向けて先行的なモデルを構築するためのプロジェクトは以下の3つが採択されました。

  • 大手町・丸の内・有楽町地区スマートシティプロジェクト
  • Smart City Takeshiba
  • 豊洲スマートシティ

今後スマートシティプロジェクト実施にかかる費用について、東京都が最大4,000万円、補助率は2分の1まで補助するとのことです。

3つのうち、Smart City Takeshibaの概要について確認していきましょう。プロジェクトの実施主体は「一般社団法人竹芝エリアマネジメント」で、共同推進事業者として東急不動産株式会社、鹿島建設株式会社、一般社団法人CiP協議会、ソフトバンク株式会社が名を連ねています。

エリア内で収集した人の流れ、訪問者の属性、道路状況、交通状況、水位などのデータをリアルタイムでさまざまな事業者が活用できる「データ流通プラットフォーム」により、回遊性の向上や混雑の緩和、防災の強化などが実現される予定です。分野を横断したサービスの提供によりエリアの経済的発展と付加価値の創出を目標としています。

スマートシティ=東京に自社ビルを

このように、東京の持つポテンシャルを考えると、今後は日本随一のスマートシティとなりスマートシティは一つのブランドになっていくことが予想されます。ヒト・モノ・金・情報が集約される東京は今以上にビジネスの中心になります。そんな東京に不動産という資産を保有することがCRE(企業不動産)戦略において非常に有効であり、多くのメリットを享受できるのでしょう。

また現在、東京に賃貸オフィスを構えている方、東京にオフィスを構えたいと考えている方、安定した資産となる「区分所有オフィス®」で自社ビルの購入を検討してみてはいかがでしょうか。(提供:自社ビルのススメ

※「区分所有オフィス®」は株式会社ボルテックスの登録商標です


【オススメ記事 自社ビルのススメ】
「都心にオフィスを持つ」を実現するには
資産としてのオフィスを所有し戦略的に活用するには
今の時代は「オープンフロア・オフィス」そこから生まれるイノベーションへの期待
自社ビルのメリット・デメリット
CRE戦略としての自社ビル