業務の効率化が喫緊の経営課題になる中、複数の拠点に散らばる会社機能を一カ所に集約し、効率を高める事例が増えています。今回は、自社ビルなどへ本社を移転して業務を集約し、成功した企業の事例を見ていきましょう。

銀座の貸しビルから東陽町の自社ビルへ:竹中工務店

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(画像=Sergey Molchenko/Shutterstock.com)

竹中工務店は、2004年に銀座の賃貸ビルから東陽町に新設した自社ビルへと本社を移転しました。かつては3拠点に分かれていた本社機能を自社保有のオフィスビルに集約することで、保有資産の活用と業務の集約化に成功しています。
竹中工務店の本社がある東陽町周辺には、2000年代に入ってから大手ゼネコンが集積しています。2004年の竹中工務店に始まり、2006年にはショーボンド建設、2007年には鴻池組が東京本社・東京本店を南砂に移転。そして2008年には大末建設も、神田駿河町の自社ビルを売却して新砂に自社ビルを建設し、東京オフィスを移転しました。
東陽町周辺は都心まで地下鉄で10分程度という立地ながら、地価が割安であったことから人気を集めたようです。また、機材センターなども多く、ゼネコンになじみのある土地柄でもあります。そして、業界大手が同エリアに集積することで周辺産業も集まり、利便性が増すメリットもあるのです。

創業50周年を機に「聖地」の新宿へ:アデランス

毛髪や美容、ウエルネス産業のアデランスは、創業50周年である2018年に創業の地である新宿へとアデランスグループ グローバル本社を移転しました。同社のリリースによると、新宿は「聖地」と呼んでいるほど思い入れのある土地だそうです。
移転先の新宿区新宿一丁目にある自社ビルはかつて本部機能を果たしていましたが、近年はコールセンターなどが使用していました。2017年には、営業部門と店舗を有する新宿三丁目の「AD ビル」を改装オープンさせており、2018年の本社移転とともに重要機能を集約させたことになります。
昨今は、BCP(事業継続計画)の観点から重要拠点を分散させる動きも見られますが、事業の効率性を重視し、アデランスのように近隣エリアもしくは同じビル内に拠点を集約する動きもあるのです。

2021年に新設本社ビルに移転へ:日本通運(日通)

日本通運(日通)も、2018年に千代田区神田和泉町に新本社ビルを建設し、移転することを決定しました。リリースによると、現在の汐留本社ビルに入居している本社の各部門や支店、グループ各社に加えられ、新たに首都圏支店、海運事業支店、航空事業支店も新本社ビルに移転するそうです。同社は、2015年5月に53年ぶりとなる大幅な組織改正を実施し、陸海空のワンストップ体制を構築しました。
移転のスケジュールは2019年12月着工、2021年8月竣工、同9月移転となっており、本社ビルへの集約により、さらなる効率化を図るといいます。また、現状の汐留本社を始めとする自社ビルは賃貸オフィスとして活用し、収益向上を目指すそうです。

本社移転で個人のワークバランスと柔軟な働き方を模索:千寿製薬

大阪市に本拠を置く千寿製薬も、2018年に、かねてより建設を進めてきた新本社ビルが竣工し、移転を果たしました。
新本社ビルの建築コンセプトは「~Good Building for Next Stage of SENJU~」であり、以下の7ポイントを重視しています。

1.Wellbeing 社員の幸せと健康
2.Open Office オープンオフィス
3.Focus & Private 集中とプライバシーの確保
4.Flexibility 柔軟性のある選択
5.Identity 千寿らしさ
6.Communication コミュニケーション
7.Enjoy 楽しむ

新しい本社ビルでは、省エネ・省資源のための最新設備を導入し、環境負荷を抑えつつ、従業員の働きやすさを考慮した空間づくりを目指したそうです。また、BCPの観点から自家発電設備や備蓄品を各フロアに備え、大規模災害に備えています。
さらに、昨今流行りの「オープンオフィス」も取り入れられています。フリーアドレスや集中ブースといった柔軟な働き方ができるワークスペースの確保のほか、多様なリフレッシュスペースも提供。オンオフを切り替えながら、個人のワークライフバランスに合わせた様々な働き方を模索するとしています。

本社集約は企業経営の基盤

今回は、本社集約によって業務効率化に成功した企業の事例をご紹介しました。働き方改革が進められる昨今において、効率的に業務を進められる自社ビルなどを活用した本社集約は企業経営の基盤ともいえるのではないでしょうか。(提供:自社ビルのススメ

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