2020年に入ってからは新型コロナウイルスの感染拡大がパンデミックを引き起こし、2020年8月時点でも勢いは収まっていません。未知の「withコロナ」時代へと突入し、オフィス市場は大きな変動期を迎えているともいえます。さまざまな動きがある中で大きく注目を浴びているのが、シェアオフィスやレンタルオフィス、コワーキングスペースなどの「サードプレイス」です。

この記事では、シェアオフィスの普及がもたらす新たなビジネスチャンスについて解説します。

withコロナ時代に脚光を浴びるシェアオフィス

サードプレイス
(画像=cookie-studio/stock.adobe.com)

政府による緊急事態宣言の発令と各都道府県の緊急事態措置により各企業は社員の出勤削減が求められリモートワーク・テレワークを余儀なくされました。2020年5月14日に39県、同年5月25日には47都道府県で緊急事態宣言は解除されましたが、リモートワーク・テレワークは多くの企業で定着し企業のオフィスに対するニーズも変わりつつある状況です。

リモートワークの拡大によって企業はオフィス面積の縮小を模索。一方で「ソーシャルディスタンシング」のために社員の各デスクの間隔を広げるなどオフィス面積の確保を求めるベクトルも働いており、現在オフィス需要は拮抗している状況です。そんな中、オフィスと自宅以外の「サードプレイス(サードオフィス)」を求める声が大きくなっています。

サードプレイスとは、その名の通り「第3の場所」のことです。自宅が第1の場所(ファーストプレイス)、企業オフィスが第2の場所(セカンドプレイス)とすれば、それ以外のワークプレイスで利用者が思いのままに活用できる柔軟な「居場所」となっていることが特徴です。そんなサードプレイスとしてシェアオフィスやレンタルオフィス、コワーキングスペースを契約する企業が増えてきています。

コロナ禍を受けて、事業継続活動(BCP:Business Continuity Plan)の視点から本社オフィスなどへの人員の集中を改め分散拠点化に乗り出す動きもあります。2020年6月に野村不動産が設立した「HUMAN FIRST研究所」が緊急事態宣以降に週3回以上在宅勤務を経験した東京と大阪に勤務するビジネスパーソン624名を対象に「働く場所と生産性についての意識調査」を実施しました。

同調査によると、緊急事態宣言後に「今後、本社や支社オフィスを拠点に在宅勤務やサテライトオフィスを活用したい」と回答した人は経営者/管理職で72.3%、一般職員で72.5%です。シェアオフィス事業者も新たなサービスを開始しています。世界的にシェアオフィス事業を展開する「WeWork」の日本法人「WeWork Japan」は2020年7月より「We Passport」を導入しました。

「We Passport」は日本国内6都市・30拠点以上のワークスペースを利用できるプランです。WeWork Japanと同じソフトバンクグループのヤフーがトライアルを実施したり静岡市や熊本市、神戸市、神奈川県、横浜市などの自治体も利用し始めたりしています。こうした流れは今後も続く可能性が高いでしょう。

(参照:ヒューマンファースト研究所「調査分析レポート#1」

働き方改革とシェアオフィス

シェアオフィスやレンタルオフィス、コワーキングスペースといったサードプレイスは、もともとスタートアップ企業向けのサービスとして始まった経緯があります。起業したてのスタートアップ企業にとっては、大きな負担となる毎月のオフィス賃料を極力減らし身軽に活動することができるサービスは非常に大きなメリットを得られるものだったのです。

一方、スタートアップ企業の生存率は5年後で15%、10年後6.3%、20年後は0.3%ともいわれています。そのためスタートアップ企業向けのシェアオフィス経営は、不安定なものにならざるを得ないものでした。ところがコロナ禍によって企業の分散拠点化の一つとしてシェアオフィスが大企業からも選ばれ始めたのは、シェアオフィス事業者にとっても大きなビジネスチャンスの到来といえるでしょう。

コロナ禍以前から働き方改革に伴うワークスタイルの柔軟化の一環として、シェアオフィスをサテライトとして利用する企業はありました。近年多くの企業が取り組んでいる働き方改革の中で、アクティビティ・ベースド・ワーキング(ABW)という考え方があります。これは日本語でいうと「仕事の内容に合わせて働く場所を選ぶ働き方」という意味です。

ABWとシェアオフィスは非常に親和性が高いので、ABWが今後さらに普及すればシェアオフィスの需要も高まっていくのではないかと見られています。

自社ビルをシェアオフィスとして

トレンドを踏まえたうえで今後のオフィス戦略を考えていく場合、どのような戦略が効果的でしょうか。時流に乗って本社オフィスをミニマムにし、サテライトオフィスとしてシェアオフィスを複数契約する方法もあるでしょう。一方トレンドをビジネスチャンスと捉えて自社ビルを取得し、自社使用分以外をシェアオフィスとして賃貸する方法も考えられます。

自社ビルは事業規模が拡大すると手狭になり使い勝手が悪くなると思われがちです。しかし「一定程度余裕のある面積を確保し自社使用分以外をテナントに賃貸する」というビジネスモデルがあります。そのテナントをシェアオフィスにするわけです。「シェアオフィス」という選択肢を持つことで自社ビルをより柔軟に活用することができる点は、一つの大きなメリットといえるでしょう。

シェアオフィス経営は、不動産賃貸業というよりはサービス業です。独自の経営ノウハウがあるため、経営リソースを割かれてしまいかねません。またシェアオフィスは通常のオフィスと比べてセキュリティ面が弱くなってしまう点はデメリットです。そのため対策も含めて専門事業者に任せたほうがより安全なシェアオフィス経営を行えるでしょう。(提供:自社ビルのススメ


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