企業の経営成績や財務状況を客観的に把握するものとして「財務諸表」というものがあります。一般的に「決算書」と呼ばれているものです。そのうちの代表的なものが損益通算書(Profit and Loss Statement=PL)、貸借対照表(Balance Sheet=BS)、キャッシュフロー計算書(Statement of Cash Flows=CF)の3つでありこれらは「財務三表」と呼ばれます。
経営者にとってはいずれも経営分析のための重要な指標です。しかし近年特にリーマンショック以降は「PL経営からBS経営へ」ということが強調されています。これはどういった意味を持つのでしょうか。今回は、PL経営とBS経営について分析してみます。
PL経営とは何か
「PL経営」とは損益通算書(PL)に準拠する経営手法を指します。PLはいわば企業における1年間の通信簿のようなもので感覚的に理解しやすいことがメリットです。PLでは「収益(売上)」「費用」「利益」の3つの要素が記載されています。製品・商品やサービスを販売することによって得られた収益からさまざまな費用を差し引くことで利益(または損失)を算出。
企業が1年間でどれだけ儲かったのか(または損したのか)を一覧にすることで企業の経営状態を把握できるようになっているのです。PLを意識した経営では「収益を最大化し経費を最小化する」ことがテーマとなります。なぜなら、そうすることで利益が最大化するからです。この経営指針には分かりやすさはありますが視点が短期的になる可能性があります。
例えば中長期的な企業成長のための設備投資や研究開発費はどのように反映されるでしょうか。それらを抑えて収益さえ確保できれば単年度のPLは好成績になるでしょう。しかしそれでは企業の持続的な成長は期待できず経営環境が突然変化したときに対応できなくなる可能性があります。時には単年度の収益が悪くなったとしても複数年度にまたがる投資を実行したほうがよいときが企業経営にはあるのです。
これは「経費最小化」の原則に反します。他にも経常利益が確定し法人税が発生しそうになると税務対策として社員旅行を実施したり臨時ボーナスを支給したりして経費を膨らませようとする経営者も少なくありません。もちろん社員旅行や臨時ボーナス自体が悪いわけではありませんがこれも単年度のPLからのみ発想する思考方法といえるのではないでしょうか。
BS経営は何を目指すのか
一方で「BS経営」はどういったものでしょうか。貸借対照表(BS)は、決算日における企業の財務状況を記載したものです。左側に資産の保有・運用を示す「資産の部」、右側に資本の調達源泉となる「負債の部」「純資産の部」が表示されます。左側の資産と右側の負債、純資産の合計値は最終的に同額になるところから「バランスシート」と名付けられました。
BS経営は単年度の損益ではなく中長期的な視点で純資産(自己資本)を増加させ続けることを重視する考え方です。そのため毎年の当期純利益を自己資本へと積み上げ続けていくことになります。言い方を変えれば「自己資本比率を高める」という表現もできるでしょう。自己資本比率とは総資産に占める純資産の割合を指し以下の式で求めることができます。
- 自己資本比率=純資産÷総資産×100
自己資本比率は業種によってまちまちです。そのため一概に「何%以上であれば良くて何%以下だとダメ」とは言い切れませんが50%以上であれば優良企業といえるでしょう。自己資本比率が高いということは、負債に頼らず大半を自己資本で調達できているため「倒産しにくい企業」ということになります。そのため顧客や取引先、金融機関からの評価も高まる傾向です。
自己資本を積み上げていくには、利益を計上していかなくてはいけないため必然的に法人税の納税も必要になります。PL経営の際にも触れましたが税務対策だけを意識していては自己資本の積み上げができないことになるのです。
BS経営とCRE戦略
BS経営を一言で表すと「財務体質の強化を目指す経営」といえるでしょう。リーマンショックの際にそれは強く意識されたのですが図らずも今回のコロナショックでそのことが再び認識されることとなりました。BS経営にCRE(企業不動産)戦略を組み合わせて考えるとどのようになるのでしょうか。年々高騰するオフィス賃料は、PLの販管費の中でも大きな費用の一つです。
自社ビルを取得すればオフィス賃料というキャッシュアウトする費用が発生しなくなり土地・建物としてBSの固定資産に計上されます。自社ビルがもし金融機関からの借り入れにより購入した場合は、BSの負債の部は増えることになるでしょう。しかし賃料相当分を返済に回すことによりキャッシュアウトしてしまう費用ではなく純資産の積み上げとなります。
毎月の借入金支払いによってBS上の負債が純資産へと移動していくのです。BS経営を意識するならばCRE戦略とあわせて考慮することをおすすめします。自社ビルの保有はBS上の総資産を分厚いものにし盤石の経営基盤を作る一助になるでしょう。(提供:自社ビルのススメ)
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