昨今、「職住近接」という言葉が注目を集めています。一昔前であれば、郊外のニュータウンに庭付きの一戸建てを構え、満員電車に揺られて都心のオフィスに出勤するのが当たり前の光景でした。しかし、ワークライフバランス(仕事と生活の調和)を重視する社会の変化で、片道1時間前後かけて通勤する非効率を見直す機運が高まっています。あえて職場に近い都心に住居を構え、通勤時間を短くする人に対して補助金を支給する企業も増えているのです。当記事では、職住近接のメリット・デメリットに加え、都心にオフィスを構える有効性と、実現のための方策について紹介します。

オフィス
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<目次>
1.国も後押しする「職住近接」とは
2.職住近接のメリット・デメリット
3.実践する企業事例
4.都心にオフィスを持つデメリットを解決するには

5.「区分所有オフィス®」で都心オフィスを手に入れる

6.自社ビルは「資産」になる

1.国も後押しする「職住近接」とは

職住近接
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職住近接とは、職場と住居の距離が近いことを指します。国が職住近接を後押しするのは、どのような背景があるのでしょうか。

1-1.職住近接が注目された背景

職住近接が注目されるようになった背景には、社会がワークライフバランスを重視するようになったことがあります。片道1時間前後もかけて、満員電車に揺られて通勤することの是非が問われているのです。ワークライフバランスが崩れることによって、疲労による精神疾患(うつ病など)や長時間労働による病気、最悪の場合は自殺につながることもあり、大きな社会問題になっています。

2020年は、新型コロナウイルスの影響により満員電車で通勤することを避け、自転車通勤に切り替える人が増えています。自転車通勤をするには、職場と自宅は近いほうが理想といえるでしょう。

1-2.国土交通省が職住近接を後押し

国土交通省は、「令和元年版国土交通白書第Ⅱ部」の中で、職住近接のまちづくりについて以下のように記しています。

「職住近接による子育て、家庭の団欒などの時間的なゆとりや文化、ショッピング等を重視した生活を求める街なか居住へのニーズは強く、ゆとりある生活を実現し、長時間通勤の問題や通勤混雑による外部不経済を是正するため、職と住の均衡した都市構造を形成するとともに、都心地域においては、居住を含む多様な都市機能が高度に複合した魅力ある市街地への更新を図る必要がある

注目すべきは、末尾の「職と住の均衡した都市構造を~更新を図る必要がある」という部分です。職場と住居が同じ都市にあることで、記されているさまざまな課題の解決につながる可能性があります。都道府県をまたぐ通勤を避け、職と住を同じ都市にまとめることで、ワークライフバランスの均衡が保たれます。その意味で、居住人口が最も多い東京都心にオフィスを構えることは、有効と言えるでしょう。

2.職住近接のメリット・デメリット

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職住近接のメリット・デメリットを会社側と従業員側に分けると、以下のようになります。

2-1.会社側のメリット・デメリット

会社側の直接的なメリットは、交通費の削減です。通勤手当のコストダウンに加え、深夜残業の際のタクシー代も抑えられます。

また、職住近接に対する補助制度を充実させることで、採用などの人事戦略で有利になるというメリットがあります。通勤時間が短く、新型コロナウイルス感染リスクも低くなる職住近接への補助制度は、応募者にも魅力的に映るでしょう。

ただし、従業員に会社の近くに転居することを要請するなら、住宅手当が必要になります。したがって、コスト面では通勤手当の減少と相殺されることになるでしょう。

コスト面ではプラスマイナスゼロであっても、従業員の疲労が緩和され、仕事に対するモチベーションが向上することで、会社の業績向上が期待できます。

2-2.従業員側のメリット・デメリット

従業員側の最大のメリットは、通勤時間の短縮です。職場と自宅が近くなって通勤時間が減る分疲労も緩和され、自分の時間や家族との時間を増やすことができます。

勤務時間の面でも、子育て主婦などの「時短勤務」の終業時刻を延長できるメリットがあります。例えば、認可保育園では8時30分以降に預けて16時30分までに迎えに行くことが定められています。通勤時間が長い場合は、15時などに退勤しなければならない人もいるでしょう。自宅や保育園が会社から近ければ16時まで勤務することができるので、その分収入を増やすことができます。

デメリットは、自宅が職場に近くなることで家賃の負担が増えることです。職場が都心5区(港・中央・千代田・新宿・渋谷)にある場合は、家賃はかなり高くなります。ただし、住宅手当などで補助する企業もあるため、多少負担が軽減されるケースもあります。

3.実践する企業事例

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では、職住近接促進を実践している企業の事例を見てみましょう。ここでは、IT系上場企業3社の職住近接促進への取り組みと、サテライトオフィスを設置した高島屋の事例を紹介します。

3-1.事例1:サイバーエージェント

「家賃補助制度2駅ルール・どこでもルール」として、勤務しているオフィスの最寄駅から各線2駅圏内に住んでいる正社員に対し月3万円、勤続年数が5年を経過した正社員に対しては、どこに住んでいても月5万円の家賃補助を支給しています(同社公式サイトより)。

3-2.事例2:クックパッド

「住宅手当・近距離奨励金」として、会社から2㎞圏内に居住する社員には毎月3万円を上限に住宅補助を支給しています。さらに2㎞圏内に初めて引っ越す場合、近距離奨励金20万円が別途支給されます。また「自転車通勤手当」として、会社から15㎞圏内の自転車通勤を行う社員に毎月1万円の手当を支給するなど、充実した補助制度を実施しているのが特長です(同)。

3-3.事例3:フリークアウトホールディングス

フリークアウトホールディングスでは、オフィスの近くに住むことで通勤のストレスを軽減して欲しいとの主旨で、徒歩圏内5万円、3駅以内2.5万円の家賃補助を支給しています(同)。

3-4.職住近接の具体的な方法(経営者の視点)

ここからは、経営者の視点で職住近接の具体的な方法を考えてみましょう。

・住宅手当を出して近くに引越しさせる

企業の事例にもあるように、住宅手当を支給して会社の近くに転居してもらうのも方法の一つです。会社と自宅が近ければ、徒歩や自転車・バイクで通勤することができます。通勤時間が片道5~10分程度であれば、残業にも対応しやすくなります。ただし、自転車・バイクは電車・バスの公共交通機関に比べて事故に遭う可能性が高いので、禁止している会社もあります。万全を期すなら会社から徒歩10分圏内に住んでもらい、徒歩通勤に限定したほうが安全でしょう。

・都心にサテライトオフィスを購入する(都市部以外に本社がある企業の場合)

都市部以外に本社がある企業の場合、都心にサテライトオフィスを購入するのも有効な経営戦略と言えます。サテライトオフィスとは、企業の本社から離れた場所に設置する小規模オフィスのことです。「都市型」「郊外型」「地方型」の3つがあり、主に地方に本社を持つ企業が都市部に営業所を構えるのが都市型サテライトオフィスです。

都心にサテライトオフィスを購入することで、営業社員が地方の本社に戻る必要がなくなり、無駄な移動を減らすことで業務を効率化できるというメリットがあります。

3-5.事例4:高島屋

サテライトオフィスの設置では、百貨店大手の高島屋が積極的です。2017年10月から在宅勤務制度を導入し、全国20ヵ所にサテライトオフィスを設置しました。「産経ニュース」の報道によれば、設置の目的として、例えば商品を買い付けるバイヤーなどの従業員が本社や店舗に戻らず、出張先や取引先に近いサテライトオフィスで業務を行うことで、労働時間の短縮につながっています。

4.都心にオフィスを持つデメリットを解決するには

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とはいえ、都心にオフィスを持つのは大企業だからできることで、中小企業にはハードルが高いと思う方もおられるでしょう。かといって、賃貸で入居したのでは毎月家賃がキャッシュアウトするだけで、会社の資産にはなりません。

ビジネスのためにも、従業員の満足度を上げるためにも、都心にオフィスを持つのが理想です。しかし、自社ビルを持つ最大のデメリットは、数億円、数十億円のまとまった資金が必要になることです。もう少し資金を抑えて購入できれば……。その可能性を開くのが、次に紹介する「区分所有オフィス®」です。

5.「区分所有オフィス®」で都心オフィスを手に入れる

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都心に自社ビルを建てようと思っても、都心部はすでに開発されつくしており、再開発以外ではなかなか用地がないのが実情です。再開発でも、大規模なSグレードオフィスの供給が主で、企業規模的にも資金力的にも、ハードルが高いでしょう。特に賃貸オフィスでなく自社オフィスを構えようとした場合、さらに障壁が高くなってしまいます。立地が良くても床面積の狭い「ペンシルビル」では、用途が限られてしまうからです。

そうした場合に、選択肢として検討したいのが区分所有オフィスです。

区分所有オフィスは、オフィスビル一棟を丸ごと保有するのではなく、フロアや区分スペースごとに保有することが可能です。例えば、1棟10階建50億円のビルも、ワンフロアの区分所有なら5億円で購入することができます(価格は物件によって異なります)。

一棟ビルよりも資金面でのハードルが低いにも関わらず、都心の立地を求めやすくなるというメリットがあります。そのため、中小企業であっても、都心の立地がよいエリアに自社保有オフィスを構えることができるのです。

6.自社ビルは「資産」になる

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「賃貸ビルか自社ビルか」という議論は現在まで盛んに交わされているテーマですが、市場がある程度成熟し、企業自体も成長軌道に乗っている企業の多くは、自社ビルを含めた企業不動産を資産防衛手段として活用しているということは留意しておかなくてはなりません。

自社ビルを購入すると毎月の家賃支払いはなくなりますが、土地・建物の購入で現預金が減少したり、借入金を用いる場合であれば支払利息が発生したり、固定資産税の支払いや減価償却費が発生したりと、初期費用が掛かります。しかし、長い目で見れば、固定資産税や支払利息による増加分よりも家賃の支払いのほうが多くなることが多いため、自社ビルのほうがキャッシュアウトは抑えられるのです。

自社ビルを持つと、ローンを完済したあとは「継続使用」「賃貸」「売却」という3つの選択肢を持った資産へと変わります。継続使用の場合は、ローンの支払いがなくなった分、別の区分所有オフィスを購入する余力ができます。新たに購入したオフィスは賃貸に回すことによって家賃収入でローンを支払い、わずかなキャッシュアウトで保有不動産を増やすことも可能です。

テレワークが増える社会の現状を考えれば、1棟の自社ビルを持つよりも、区分所有でサテライトオフィス化するほうが、フットワークの軽い経営が可能になるともいえるでしょう。

こういった点を踏まえると、立地の良さのわりに割安感のある区分所有オフィスを検討してみる価値は大いにあるのではないでしょうか。賃貸オフィスは「費用」ですが、流動性の高い自社ビルは「資産」になるのです。

都心にオフィスを構える第一歩として、区分所有オフィスを検討してみてはいかがでしょうか。以下のサイトでオフィスは「借りる」より「買う」ことの明確なメリット・エビデンスがわかります。

※「区分所有オフィス®」は株式会社ボルテックスの登録商標です

(提供:自社ビルのススメ


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