「アセット・アロケーション」と「アセット・ロケーション」とは何か
そして、「運用益非課税」や「所得控除」などのメリットを利用すると、例えば全く同じ商品に投資していても投資家の実質的なリターンは変化する。資産の置き場所=ロケーションによって、投資家の実質リターンは変化するのだ。
投資資金を「米国株に◯%、欧州株に◯%、新興国株に◯%、欧州債券に◯%」と配分することを「アセット・アロケーション」という。(asset=資産、 allocation=配分を決めること、割り充てること)
これに対し似ているものの、文字が少ない「アセット・_ロケーション」という言葉がある。asset=資産、location=置き場所という意味である。
例えば一般の証券口座等にはない「運用益非課税」メリットをiDeCoやNISAなどで利用すると、実質的に投資家のリターンが向上する。ならばまずメリットをとれる「置き場所」をどこにするのかを考えることで、運用の効率化が図れるということだ。「得する場所(ロケーション)を選ぶ」と考えると理解しやすいだろう。米国ではアセット・アロケーションよりも前に、「アセット・ロケーション」を決定する方が先だと聞く。
つみたてNISAとiDeCoの共用投信も
つみたてNISAの開始をにらんで、投信の名前と費用が変わる事例があった。あるインデックス型投信の事例では信託報酬が、0.2052%(税抜き0.19%)であったものを引き下げ、0.1728%(税抜き0.16%)とした。同ファンドの運用手法等については、一切変更は無い。中身が変わらないので、投資家にとって信託報酬の引き下げは朗報だ。
もともとDC(確定拠出年金)向けの投信として、iDeCoにラインナップされたこの投信では、つみたてNISAにも対応できるように名称変更もされた。「××DC…」という名称が付いていた投信であったが、変更後は「××DCつみたてNISA…」と名称が変わったわけだ。
iDeCoもつみたてNISAも毎月積立てによる資産形成を目的としているので、「低コストインデックス運用」を目指すならば、双方共用できるような商品設計は商品提供側の効率化を図る良い方策だ。
効率が良い資金の置き場所はどこ?
つみたてNISAとiDeCoはこれからの資産形成で共に「積立て型」である。前述の通り、全く同じ商品構成であれば、「所得控除」メリットが大きいiDeCoを活用することが「アセット・ロケーション」の観点ではおそらく正解だ。
既存の運用の預け替えや、ボーナス時のまとまった資金の運用ならば、従来NISAの方が適しているだろう。
投資家の資産背景、リスク許容度、今後の資金計画などの様々な状況によって、正解は変化すると思うが、「iDeCo」+従来型の「一般NISA」がベストミックスではないかと個人的に考える。
安東隆司(あんどう・りゅうじ)
RIA JAPAN
おカネ学株式会社代表取締役。CFP®ファイナンシャル・プランナー、元プライベート・バンカー。日米欧の銀行・証券・信託銀行に26年勤務後、独立。お客様サイドに立った助言を実践するためには高い手数料は弊害と考え、証券関連の手数料を受け取らない内閣総理大臣登録の「投資助言業」を経営。著書に『
iDeCo おしえてあげる 1時間でわかる版
』