相続税の申告で一番の難題になるのが「土地の評価」だ。土地は現預金と違ってすぐに金額が分からない。「評価が必要」と言うが、そもそも評価とは何か。どんな流れでどう行うのかも一般人には分かりにくい。今回は宅地を中心に土地の評価について解説する。
中央大学法学部法律学科卒業後、㈱ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て2012年税理士登録。「ZUU online」「マネーの達人」「朝日新聞『相続会議』」などWEBで税務・会計・お金に関する記事を多数執筆。著書「海外資産の税金のキホン(税務経理協会、共著)」。
相続税の土地評価に関するQ&A
最初に相続税の土地評価に関する3つの質問に答えよう。
現金より土地の方が相続税は安い」のはなぜ?
相続税は相続開始時(死亡時)の相続財産の時価を基準に計算する。この時価は相続税法に関する通達に決められた方法で評価した金額となる。現金はそのままの金額が時価だが、土地は相続税評価を行うと低くなることが多いのだ。結果、相続税額が低くなる。
相続税は相続開始時(死亡時)の相続財産の時価を基準に計算する。この時価は相続税法に関する通達に決められた方法で評価した金額となる。現金はそのままの金額が時価だが、土地は相続税評価を行うと低くなることが多いのだ。結果、相続税額が低くなる。
土地はどうやって評価するの?
土地は地目ごとに評価する。土地の中でもっとも多い宅地は路線価方式か倍率方式で評価する。路線価方式で評価するのは市街地のように路線価エリアにある土地で道路に接しているものだ。倍率方式はそれ以外の土地に用いる。なお、農地や雑種地なども評価が必要だが、その計算はかなり難しい。
土地は地目ごとに評価する。土地の中でもっとも多い宅地は路線価方式か倍率方式で評価する。路線価方式で評価するのは市街地のように路線価エリアにある土地で道路に接しているものだ。倍率方式はそれ以外の土地に用いる。なお、農地や雑種地なども評価が必要だが、その計算はかなり難しい。
土地の評価を下げることはできるの?
自宅や自社ビル、工場などの敷地(宅地)は評価額を下げられる。要件を満たすなら小規模宅地等の特例で評価額を半分か2割程度に抑えることもできるのだ。また路線価エリアの土地なら抱えている事情に応じた補正率を用いて評価を下げられる。この他、賃貸用物件の敷地も評価額を下げやすい。
自宅や自社ビル、工場などの敷地(宅地)は評価額を下げられる。要件を満たすなら小規模宅地等の特例で評価額を半分か2割程度に抑えることもできるのだ。また路線価エリアの土地なら抱えている事情に応じた補正率を用いて評価を下げられる。この他、賃貸用物件の敷地も評価額を下げやすい。
現金よりも土地の方が相続税は安い理由
「相続税対策をするなら土地を買おう」とよく言われる。「土地を買えば相続税が安くなる」ということだが、どういうカラクリなのだろうか。
●相続税を決める「時価」は評価するもの
相続税は相続開始時(死亡時)における相続財産の時価を基準に計算する。相続財産の時価が高ければ相続税は高くなる。逆に時価が低ければ相続税も安くなる。つまり相続税は時価次第なのだが、この時価は売買価格や市場価格と同じになるとは限らない。不特定多数の者の間で取引されるものばかりではないからだ。そのため、相続税の時価は評価が必要になる。
●評価の方法は財産評価通達が決めている
時価の評価方法は相続税法の財産評価基本通達で決められている。この通達は相続税法にある時価の解釈の仕方を示すものだ。「一般動産や船舶は調達価額か取得価額」「原材料は仕入価格」といった具合に決めている。土地も同様だ。土地でもっとも多い宅地(敷地)は路線価方式か倍率方式で評価すると決められている。
●現金1億円で土地を買うと「時価評価」が下がる
「土地を買えば節税できる」が言うところの土地は更地のことではない。大抵はアパートや戸建ての敷地を指している。そして通常、敷地(宅地)の相続税評価額は購入時の価格より低くなる。現金1億円は相続税評価額も1億円だが、敷地は7000万円や8000万円になったりする。だから「土地を買えば相続税対策になる」のだ。
土地評価の流れを宅地で確認しよう
では、相続税での土地評価の流れを見よう。ここでは土地でもっとも多い宅地の評価で確認する。
1.地目が宅地であることを確認する
2.路線価方式・倍率方式のどちらかで評価する
路線価方式は市街化区域など路線価のあるエリアでの宅地の評価方法だ。倍率方式を用いるのはそれ以外の宅地である。それぞれの方式での評価の流れは以下のとおりだ。それぞれの評価の計算式は後述する。
(1)路線価方式
利用区分(自用地、貸宅地など)を現況から確定
↓
固定資産税課税明細や登記簿、あるいは実測で地積を確定
↓
路線価を路線価図から確定
↓
地区区分を路線価図から確定
↓
各種補正率(調整率)の確定
↓
宅地の評価
(2)倍率方式
固定資産税評価額を都税事務所・市町村の役所にて土地課税台帳か土地補充課税台帳で確認する
↓
国税庁の評価倍率表で評価倍率を確認する
地目とは何か
ここで地目の意味を見ていこう。
●地目は土地の用途を表す
地目とは土地の用途区分を言う。宅地の他、田、畑、山林、原野、牧場、池沼、鉱泉地、雑種地がある。
●地目を知るなら登記簿を見よう
地目は不動産登記法に定められている登記事項の一つだ。確認するなら不動産の登記簿を確認しよう。
●現況が登記と違うなら現況で評価
本来、土地の用途を変えたなら1か月以内に変更登記をしなくてはならない。しかし登記が変わっていないのはよくあることだ。実際の用途と登記上の用途が一致しないなら、相続開始時の現況に合わせて評価する。
土地評価の方法1:路線価方式
ここで宅地の評価方法の一つである路線価方式を見ていこう。
●路線価とは何か
路線価とは道路に面している標準的な宅地1㎡あたりの価額を言う。路線価図では千円単位で表示される。毎年1月1日時点で評価される。売買実例価格や公示地価、不動産鑑定士による鑑定評価額などを元に決められる。
●路線価方式で評価するときの計算式
基本的な計算式は「路線価×補正率×地積」だ。ただしこれは面している道路が一つだけの宅地にしか使えない。実際の宅地は2つや3つの道路に面しているものも多い。そのような宅地については正面道路を決めた上で側方道路や後方道路の路線価の影響も加味して評価計算する。なお、正面道路は宅地に面する距離が最も長い道路となる。
●土地の事情に応じて補正率を入れる
土地の形状は一律ではない。接道部分がやたらと狭い宅地もあれば奥行がやたらと長い宅地もある。また、いびつな形をした宅地や一部が崖になっている宅地もある。路線価評価においては、こういった土地の事情に合わせて補正率を入れ、より適正に価値を見積もることとされている。
土地評価の方法2:倍率方式
路線価エリアにある宅地以外の評価である倍率方式も見てみよう。
●倍率方式とは何か
倍率方式は路線価が定められていないエリアの宅地の評価方法だ。田舎の土地にある自宅の敷地に多い。
●倍率方式の計算式
倍率方式では「固定資産税評価額×倍率」で評価計算する。固定資産税評価額は相続開始日(亡くなった日)の属する年度のものを使う。例えば、2020年1月に亡くなったのなら、使う固定資産税評価額は2020年度のものだ。この場合、固定資産税の評価額が明らかになるのは毎年4月初旬なので、しばらく待つ必要がある。
土地の面積はどうやって知るのか
路線価方式で必要になるのが地積、つまり土地の面積だ。これは次のいずれかによることになる。
- 登記簿か固定資産評価明細に書かれている地積
- 実際に地積を測量する
手間がかからないのは1だが、登記上の地積は間違っていることがある。明治時代に作られた公図が元になっているからだ。「縄伸び」「縄縮み」などと当時の地主が意図的に面積を広く、あるいは狭く登記したことが背景にある。しかし相続税法は正確な評価を求めている。まったく疑いの余地がないなら1でよいが、不安に感じるなら実際に測量した方がいいだろう。
補正率とは何か
路線価でもう一つ、必要になる要素が「補正率」だ。
●補正率の意味
補正率とは、路線価には表れない土地の事情を時価評価に反映するための割合だ。路線価は年初時点でのその地域全体の実情を反映しているが、土地の個別事情までは含まれない。しかし実際にはさまざまな土地がある。この事情を反映し、正確に土地の価値を見積もるために補正率を使うのだ。
●補正率の種類
補正率には次のようなものがある。
- 奥行価格補正率:道路からの奥行距離が長く(短く)利用しにくい
- 不整形地補正率:形がいびつで宅地全体を利用しにくい
- 間口狭小補正率:道路に接する間口が狭く利用しにくい
- 奥行長大補正率:間口に比べて奥行距離が長すぎて利用しにくい
- がけ地補正率:がけ地があり使えない部分がある
この他、台風や地震などで被災した地域には一時的に調整率という形で補正率が入ることがある。補正率は国税庁が公表している。
土地評価があるなら税理士に依頼した方がよい理由
宅地に限らず土地が相続財産にあるなら税理士に相続税の申告を依頼した方がいい。次のような理由があるからだ。
●正確な評価が難しい
自宅の敷地しかなく、その敷地が整った形状なら自分でどうにか評価もできるだろう。しかしそのようなケースは稀だ。アパートの敷地だったり、面している道路が私道だったり、複雑な形状の宅地だったりすると評価は難しくなる。さらに宅地以外の土地の評価は一般人には極めて難しい。
●節税の条件が難しい
自宅の敷地やアパートの敷地、自社ビルの敷地は小規模宅地等の特例で評価額を下げることができる。計算はシンプルだが条件が非常に細かい。近年の税制改正で一部変更になっているので、専門家でないと間違えやすい。
●税務調査対策になる
相続税の申告は税務調査の対象になりやすい。そして税務調査が入るとかなりの確率で修正申告をせざるを得ず、過少申告加算税や延滞税などで余計に税金を払う破目になる。税理士に頼めば、正確な申告をするだけでなく書面添付制度を活用して税務調査ができるだけ回避できるような状況を整えてくれる。「払う税理士が報酬もったいない」と思うかもしれないが、調査による時間とお金のロスを考えると割に合うコストだと言える。
相続税の申告を税理士に頼むときの相場
気になるのは税理士に相続税の申告を頼むときの相場だ。一般的には「遺産総額×0.5%~1%」だとされている。ただしこれはあくまで目安に過ぎない。「相続人の数が多い」「相続財産の状況が複雑」「評価に手間がかかる」「相続税の申告期限まであまり時間がない」といった状況だと別途費用がかかることがある。
「税理士に頼みたいが報酬が心配」と感じるなら、いくつか候補を探し、それぞれ一度相談してみよう。必要な報酬を試算してくれるはずだ。
なお、土地を含め相続財産の状況が複雑、あるいは宅地だけでなく農地や雑種地も相続しなくてはならないといった状況なら、相続を専門に扱う税理士に依頼するとよいだろう。