「相続税は高い」というのは、多くの人々に共通する認識だと思います。
しかもその影響が大きくなる富裕層であれば、その悩みはより切実でしょう。
相続対策にはさまざまなスキームやノウハウがありますが、節税ばかりに目を奪われてしまうと税務署に睨まれてしまうのではないか…ということも含めて悩ましい問題です。
そこで当記事では近い将来に1億円以上の相続を控えている富裕層の方々に向けて、安全かつ合法に取り組める相続対策について解説します。
また、相続対策は早く取り組むほど効果が大きくなるため、今のうちからできることについても解説します。
- 富裕層は適切な対策を行わないと財産の多くが税金で消える可能性がある。
- 不動産、生命保険、特例の適用など合法的なスキームを活用し節税をおこなう。
- 生前贈与や特例を活用するには時間が必要で、早期の計画が節税効果を高める。
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富裕層ほど相続対策が重要になる
ただでさえ税率が高いうえに、相続税は相続財産の規模が大きくなるほど税率が高くなります。
つまり、相続財産の規模が大きい人=富裕層ほど相続対策が重要になります。
おそらく当記事をお読みの方々も、その部分を懸念されているのではないでしょうか。
そこで最初に、相続税の仕組みや相続対策の重要性について解説します。
相続税の仕組みと税率
相続税は、一定以上の財産を保有している人が亡くなった場合、それを相続した人に課税される税金です。
相続税には基礎控除をはじめさまざまな控除があるので、最終的には該当する控除額を差し引いた金額が課税対象となり、その課税対象額に応じて相続税率が決まります。
相続税の税率は、以下のとおりです。
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | - |
1,000万円超から3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
3,000万円超から5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
5,000万円超から1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超から2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
2億円超から3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
3億円超から6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
相続税額の計算方法
前項で紹介した税率を踏まえて、相続税額の計算方法について解説します。
相続税には基礎控除をはじめとしてさまざまな控除があるため、該当する控除額を差し引いたうえで課税対象額を算出し、それに当てはまる税率を掛けて相続税額を求めます。
また、相続人が複数いる場合は最初に相続税の総額を算出し、そのうえで各相続人が納めるべき金額を求めます。
ある相続人の課税対象額が1億円だとすると、適用される税率は40%です。
上述の早見表を用いて計算すると、4,000万円から1,700万円を差し引いて相続税額は2,300万円ということになります。
実質的に相続財産の23%が税金になるため、やはり「相続税は高い」と感じてしまうのではないかと思います。
3代で財産がなくなる?
日本は相続税が高いことから、「相続は3代で財産がなくなる」といわれることがあります。
浪費したわけでもなく相続税の負担だけで財産がなくなってしまうとしたら、看過できない方がほとんどでしょう。
しかし、何もしなければ3代で財産の大半がなくなってしまう可能性はあります。
そこで重要になるのが相続対策です。
相続対策によって相続税は圧縮できる
税率が高く、3代で財産をなくしてしまう可能性すらはらんでいる相続税ですが、これまでに多くの節税スキームが確立されています。
また、税負担を調整するために設けられた控除や特例などもあるため、それらを駆使すれば有効な相続対策を講じることができます。
そのためには、相続税を含む税の知識が欠かせず、それに関連する控除や特例などについても理解しておく必要があります。
相続税は相続財産の「評価額」で決まる
相続税の税率や税額の根拠となるのが、相続財産の評価額です。
この評価額というのは相続財産そのものの金額ではなく、相続財産を「いくらで評価するか」を示す金額です。
相続財産の評価は、資産を何で持っているのか(現金、不動産、有価証券など)によって異なります。
一般的に不動産は評価額が最も低くなるため、相続対策の観点からは不動産で相続するのが最も有利とされています。
タワーマンションや賃貸住宅などを活用した相続対策スキームが広く知られていますが、これらはいずれも不動産関連です。
富裕層の多くが不動産を軸に相続対策をしているのも、不動産だと評価額を低くしやすいことが関係しています。
相続対策の基本と代表的なスキーム5選
相続税を節税するためには、相続財産の評価方法や、それを踏まえた相続対策スキームを理解する必要があります。
ここでは、相続財産評価の基本から、具体的な相続対策スキームを紹介していきたいと思います。
1.不動産で相続する
先ほど、不動産で相続するのが最も有利であると述べました。
その理由は不動産だと他の資産よりも相続財産としての評価額を低くしやすいからです。
おおむね土地は購入額の約8割、建物は5~6割程度の評価額になるため、相続財産の評価額を減らすことができます。
仮に土地5,000万円、建物5,000万円の不動産を購入したとします。
先ほどの目安(土地は8割、建物は6割)に当てはめて計算してみると、以下のようになります。
・土地:5,000万円 × 80% = 4,000万円
・建物:5,000万円 × 60% = 3,000万円
1億円の価値がある不動産ですが、相続財産としての評価額は7,000万円となり、課税対象額が3,000万円少なくなります。
1億円だと税率は40%ですが、7,000万円だと税率は30%です。
課税対象額だけでなく税率そのものも低くなるので、不動産で相続すること自体が相続対策になることが分かります。
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不動産で相続税対策ができる3つの理由と注意すべき5つのポイント
2.不動産を賃貸にして相続する
相続財産である不動産が賃貸住宅の場合、さらに評価額を低くすることができます。
不動産を賃貸にすると、自己所有の不動産であっても賃貸人の権利が発生するため、所有者の思い通りにならない部分があります。
つまり所有者の権利が一部少なくなるため、その分が評価減になるという考え方です。
賃貸に供されている不動産については、借地権割合と借家権割合を利用して評価減をおこないます。
借地権割合は相続税路線価図に30%から90%の範囲で定められており、借家権割合は一律で30%です。
そして、賃貸住宅のなかで「どれだけ賃貸に供しているか」を示すのが、賃貸割合です。
たとえば、所有しているアパートやマンションの全室が賃貸用なのであれば100%となります。
相続税評価額に対して「1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合」を掛けることで、評価額を求めることができます。
どんな計算であっても「1」より少なくなるため、賃貸住宅は有効な相続対策スキームといえます。
3.小規模宅地等の特例を適用する
被相続人が住んでいた、もしくは事業に使っていた土地などで330平方メートルまでの部分は「小規模宅地等の特例」を適用することで評価額を最大で80%減ずることができます。
これを超える広さの土地であっても同特例の要件を満たしている限り、330平方メートルまでの部分は評価減となるため、該当する場合は高い節税効果が期待できます。
4.生命保険の非課税枠を活用する
被相続人が生命保険に加入し、その人が亡くなったことで相続人が保険金を受け取った場合、「500万円×法定相続人」の金額が非課税になります。
これは保険金にのみ適用される非課税枠なので、死亡保険金を活用した相続対策スキームの1つとして知られています。
また、生命保険の活用には、節税の他にもメリットがあります。
考えられるメリットは、以下の4つです。
1.受取人を指定することにより財産を遺す相手を決められる
2.保険金は迅速に支払われるため相続税や葬祭費用に充当しやすい
3.相続放棄をした人であっても受け取れる
4.代償分割(※)の原資にも活用しやすい
※代償分割:不動産など分割しにくい財産を複数の相続人で相続する場合、不動産を相続した人がその代わりに金銭を他の相続人に支払って公平性を保つ手法のことです。
5.生前贈与を活用して相続財産を少なくする
被相続人となる人(親や祖父母など)が生前のうちから将来の相続人に贈与をすることで相続時の財産を少なくするスキームがあります。
それなら生前のうちに全財産を贈与してしまえば相続税はゼロ…といいたいところですが、残念ながらそうはいきません。
その理由は、贈与税の税率にあります。
こちらは贈与税の一般税率です。
基礎控除後の課税価格 | 一般税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | ― |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
先ほど紹介した相続税と比べると、贈与税はさらに税率が高いことが見て取れます。
つまり、単純に生前贈与をしただけだと相続対策どころか逆に税負担が大きくなってしまうことになります。
そこで重要になるのが、生前贈与を活用した相続対策スキームです。
生前贈与を相続対策に活用する方法
ここでは、生前贈与を活用した相続対策スキームを紹介します。
前章では「単純に生前贈与をしただけだと税負担が大きくなる」と述べましたが、ここで紹介する制度やスキームを活用すると、生前贈与によって相続税の節税が可能になります。
1.毎年110万円の非課税枠を活用して生前贈与する
贈与税には、毎年110万円の基礎控除があります。
つまり、毎年110万円までであれば親から子へ贈与をしても贈与税は発生しません。
これを毎年繰り返すことで、単純に10年間で1,100万円を非課税で贈与できることになります。
一般的なスキームとして広く知られているのですが、この方法にはいくつかの注意点があります。
その注意点については、後述します。
2.住宅取得等資金贈与
直系尊属(親や祖父母など自分より前の世代で直通する親族)から子などへ住宅取得や新築、リフォームなどの費用を贈与した場合は、最大1,000万円までが非課税になります。
1,000万円が非課税になるのは省エネや耐震、バリアフリーなどの要件を満たした住宅のみですが、該当しない住宅であっても500万円までが非課税になります。
3.教育資金の一括贈与
直系尊属から30歳未満の子や孫などに学費や習い事、塾などの費用を贈与した場合は、最大で1,500万円が非課税になります。
幼稚園から大学、スポーツ教室やピアノ教室などにも適用できるため、親や祖父母の世代から若い世代への財産移転に活用しやすい制度といえます。
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4.結婚、子育て資金の一括贈与
直系尊属から18歳以上50歳未満の子や孫に対して、結婚や子育てに関連する費用を贈与した場合は、最大1,000万円までが非課税になります。
こちらも教育資金と同様にお金の使い道が広いため、結婚や子育てをする若い世代がいる家庭であれば活用しやすいでしょう。
ただし、「結婚、子育て資金の一括贈与」については令和7年3月31日までです。
延長や同様の制度が始まらない限り、制度終了まであまり時間がありません。
5.おしどり贈与
婚姻期間が20年以上の夫婦で、夫婦間で居住用の不動産もしくはそのための購入資金を贈与する場合は、最大で2,000万円が非課税になります。
正式な制度名は「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」ですが、婚姻期間が20年以上の夫婦が対象のため、おしどり夫婦になぞらえて一般的に「おしどり贈与」と呼ばれています。
また、この「おしどり贈与」と同時に毎年110万円までの基礎控除も併用できるため、実質的には2,110万円までが非課税になります。
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夫婦間の贈与税はどんな場合に発生する?10個の事例で解説
6.相続時精算課税制度
贈与を受けた時には贈与税を納めず、被相続人(贈与をした人)が亡くなった時に相続税として納税をするのが、相続時精算課税制度です。
この制度を適用すると、最大2,500万円まで贈与税は非課税です。
贈与税が非課税になるとはいえ相続時には課税されるため、一見すると節税効果がないように見えますが、特定の条件に該当する場合は節税効果が高くなります。
特に節税効果が大きいと考えられるのは、以下の2つのケースです。
・相続時に今よりも値上がりが予想される財産を贈与する場合
・不動産や有価証券など収入が発生する財産を贈与する場合
これらの財産が被相続人の元にあると相続財産を大きくしてしまい、相続税額を増大させる可能性がありますが、相続時精算課税制度を利用して早期に贈与しておくと相続財産の増大を防ぎ、早い時期から受贈者の利益を大きくすることができます。
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生前贈与が2,500万円まで非課税に!相続時精算課税制度とは?
相続対策のスキームを実践する際の注意点
当記事で紹介・解説してきた相続対策スキームを実践する際に、注意しておくべき点をまとめました。
実践する際には、これらの注意点もしっかり理解しておくようにしましょう。
1.定期贈与と見なされないようにする工夫が必要
先ほど紹介した毎年110万円の基礎控除を利用した生前贈与スキームです。
これを単純に毎年繰り返してしまうと、税務署から「最初から合計額を贈与するつもりであったものの課税を回避するために毎年少しずつ贈与していた」と見なされるおそれがあります。
これを、定期贈与といいます。
仮に110万円ずつ10年間贈与したとすると、合計は1,100万円です。
これを1回で贈与したと見なされてしまうと、2年目以降の分がすべて課税対象になります。
2年目以降の贈与額合計は990万円なので、税率は40%です。
そこから控除額の125万円を差し引いても、贈与税額は271万円になってしまいます。
節税をしたつもりが逆効果になってしまうので、定期贈与と見なされないようにする工夫が必要です。
考えられる対策は、以下のとおりです。
・贈与契約書の作成(家族間であっても贈与の証拠を残す)
・贈与の時期、金額を毎年変える
・敢えて110万円を少し超える金額を贈与し、納税する(より強い証拠が残る)
・贈与する金銭を入金する口座は受贈者が管理する(贈与の事実を作る)
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贈与税は110万円以下でもかかることがある?生前贈与の注意点を解説
2.相続時精算課税制度を選択すると二度と元に戻せない
先ほど解説した相続時精算課税は選択制です。
何も手続きをしなければ、贈与税は暦年課税が選択されています。
暦年課税には毎年110万円の基礎控除がありますが、相続時精算課税を選択するとこの基礎控除がなくなります。
また、相続時精算課税は一度選択すると二度と元には戻せないため、手続きの際にはどちらが有利かを十分に精査してからおこなってください。
3.特定用途の贈与特例は、それぞれの用途に資金を使わなければならない
住宅取得や結婚・子育て、教育資金といった特定の用途に限定した贈与の特例は、当然ながらそれぞれの用途に使うお金でなければ適用されません。
用途が広い特例でもありますが、それでも用途外のことにお金を使っていたり、お金を使い切らずに残っているといたりすると、贈与税の課税対象になるので、注意しましょう。
4.生前贈与を活用する場合は可能な限り早く取り組むこと
生前贈与を相続対策に活用する場合、できるだけ早く取り組むことをおすすめします。
暦年課税の基礎控除110万円を活用したスキームは実践する年数が長いほど生前贈与できる金額が大きくなり、時間に余裕があるほうがスキームを選択する余地も大きくなります。
また、令和6年(2024年)には相続が発生した時点から7年間までさかのぼって生前贈与された財産を相続財産に加算するとの制度改正がありました。
これまでは3年までだったものが7年になったことを考えると、今後さらに長い期間にまでさかのぼるようになる可能性があります。
この傾向を踏まえると、生前贈与による財産移転はできるだけ早くおこなっておいたほうが得策といえるでしょう。
5.過度で露骨な相続対策は税務署に否認されるおそれがある
本記事で紹介している相続対策スキームはいずれも合法的なものです。
しかし、不動産を活用した節税などを過度におこなうと、「租税回避行為である」として無効になってしまうおそれがあります。
2022年にはマンションを活用した節税に対して、最高裁判所は税務署の主張を認める判決を出しており、司法も極端な節税に「待った」をかけました。
この事例は金額面においてもかなり突出しているので極端な事例といえますが、そうではなくても過度で露骨な相続対策は税務署に否認されるおそれがあることを意識しておくべきでしょう。
まとめ
富裕層こそ相続対策が重要であるとの前提に立ち、相続対策の基本から具体的なスキーム、知っておくべき制度や特例などについて解説しました。
これらはすべて合法的に実践できるものばかりなので、該当する特例がある方は積極的に活用して相続財産の圧縮に役立てたいところです。
ただし、あまりにも過度で露骨な節税については税務署や司法が「待った」をかけるおそれもあるので、不安がある方は税理士に相談をして適切に処理することをおすすめします。
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(提供:ACNコラム)