本記事は、山中 伸枝氏の著書『中小企業のための「企業型DC・iDeCo+」のはじめ方』(同文舘出版株式会社)の中から一部を抜粋・編集しています

最低でも15%の節税になる

iDeCo 節税
(画像=PIXTA)

iDeCoは任意で加入する私的年金ですから、その掛金は、個人のお財布から拠出します。これは「全額所得控除」となり、所得税のかからないお金となります。所得税は超過累進課税なので、その税制メリットは本人の課税所得によりますが、最低税率が5%であることから、掛金に対して少なくとも5%の節税が可能です。

また、住民税も全額所得控除となりますから、こちらは掛金に対して10%の節税が可能です。自分の将来のために貯蓄をすると節税ができる、これがiDeCoです。

老後の備えとして、多くの方が利用する保険会社の「個人年金保険」とiDeCoを比較してみましょう。

iDeCo 節税メリット
(画像=中小企業のための「企業型DC・iDeCo+」のはじめ方)

ご存じのように、個人年金保険も保険料が生命保険料控除となる税制優遇があります。

例えば、個人年金保険に月1万円、iDeCoで月1万円の積立をしたとしましょう。いずれも老後の備えとしての積立です。

会社員の場合、年末調整の際に保険会社が発行する「生命保険料控除証明書」を会社に提出すると還付が受けられます。個人年金保険の場合、控除の対象となる金額には上限が設けられています。年間12万円の保険料の支払いに対し、控除が認められる金額は4万円です(下記の生命保険料控除表を参照)。

iDeCo 生命保険控除表
(画像=中小企業のための「企業型DC・iDeCo+」のはじめ方)

仮に課税所得300万円(年収約500万円)の人であれば、所得税率は10%ですから、年末調整での還付は4,000円となります(生命保険料控除額4万円×対象税率10%=4,000円が節税効果)。

iDeCo 所得税率表
(画像=中小企業のための「企業型DC・iDeCo+」のはじめ方)

生命保険料控除は住民税にも適用されます。こちらは支払保険料12万円に対し、やはり上限があり、2万8,000円の控除です。住民税率は10%ですから、翌年の支払うべき住民税が2,800円安くなります。

では、iDeCoの場合はどうでしょうか?

生命保険料控除と異なり、iDeCoの掛金は全額が所得控除になります。年間12万円の掛金であれば、12万円の控除が受けられるという意味です。

したがって、課税所得300万円の人がiDeCoで年間12万円を積み立てると、年末調整で1万2,000円還付が受けられるのです。

また、住民税についても全額が所得控除となりますから、ここでも12万円に対し10%、つまり1万2,000円、翌年の住民税が安くなります。

つまり、老後のための積立を個人年金保険ですると、年間12万円の保険料に対する税金のメリットは6,800円ですが、iDeCoであれば2万4,000円であるということです。

iDeCoの場合、この税金のメリットが掛金拠出を継続する限り続きます。

iDeCo メリット
(画像=中小企業のための「企業型DC・iDeCo+」のはじめ方)

iDeCoの税金還付手続き

会社員の場合、掛金は口座振替(個人払込)か給与天引き(事業主払込)かの二択となります。会社が給与天引きをしている場合は給与天引き、していない場合は加入者指定の口座振替となり、どちらの方法になるかはiDeCo加入の際、会社に確認します。また、この徴収方法によって税の取り扱い方法が異なります。

口座振替の場合は、年末調整の際に国が発行する「小規模企業共済等掛金控除証明書」を会社に提出することで、所得税の還付を受けます。また、住民税は翌年の支払い額で調整されます。これは生命保険控除と同様の処理ですので、戸惑うことはないでしょう。

一方、給与天引きの場合は、会社が毎月の給与天引きの際に税金処理を行なう(掛金分収入を減らして源泉処理を行なう)ため、年末調整は不要です。「小規模企業共済等掛金控除の証明書」も発行されません。

いずれにしても、優遇される税金の金額は変わりません。

企業型確定拠出年金の「iDeCo」的な部分

企業型確定拠出年金は、会社が従業員に対し掛金を拠出します。その金額は給与と異なり、所得税も社会保険料のかからないお金であることは前述しました。

同時に、企業型確定拠出年金は、従業員が自らのお財布から掛金を拠出できる仕組みがあります。それが「マッチング拠出」「iDeCo併用」「給与減額型方式の選択制」の3種類です。

それぞれの詳細は第5章にてご説明しますが、従業員が拠出する掛金ももちろん、税制優遇を受けることができます。

iDeCo 企業型確定拠出年金
(画像=中小企業のための「企業型DC・iDeCo+」のはじめ方)

マッチング拠出とiDeCo併用は、iDeCoと同様に「掛金全額が所得控除」となります。税金の還付の手続きはiDeCoと同様で、掛金を口座振替で徴収すれば年末調整で還付、給与天引きで徴収すれば毎月の給与で源泉処理をして完了となります。

ただし、給与減額方式の選択制というのは、税金も社会保険料も引かれる前の額面給与から確定拠出年金の掛金を切り出して拠出するので、「還付」ではなく、そもそも税金も社会保険料もかからないお金となります。 つまり、企業が拠出する事業主掛金と同様の取り扱いとなるのが特徴です。

中小企業のための「企業型DC・iDeCo+」のはじめ方
山中 伸枝(やまなか・のぶえ)
株式会社アセット・アドバンテージ代表取締役、心とお財布を幸せにする専門家、ファイナンシャルプランナー(CFP®)、FP 相談ねっと代表、一般社団法人公的保険アドバイザー協会理事 1993 年米国オハイオ州立大学ビジネス学部卒業後、メーカーに勤務。これからはひとりひとりが、自らの知識と信念で自分の人生を切り開いていく時代と痛感し、ファイナンシャルプランナー(FP)として 2002 年に独立。現在、年金と資産運用、特に確定拠出年金や NISA の講演、ライフプランの相談で全国を飛び回りながら、ウェブやマネー誌などで情報発信するなど、お金のアドバイザーとして精力的に活動している。金融庁サイト 有識者コラムや「東洋経済オンライン」での連載、日経プラス 10、日経 CNBC、全日空機内番組へのメディア出演など。 著書に『50 歳を過ぎたらやってはいけないお金の話』(東洋経済新報社)、『書けばわかる!節約・預金だけではもったいない わたしにピッタリなお金の増やし方』『ど素人が始める iDeCo(個人型確定拠出年金)の本』(翔泳社)、共著に『いっきにわかる ! つみたてNISA&iDeCo 令和スタート版 』(洋泉社 MOOK)など多数。

山中伸枝オフィシャルサイト https://www.nobueyamanaka.com/

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