本記事は、山中 伸枝氏の著書『中小企業のための「企業型DC・iDeCo+」のはじめ方』(同文舘出版株式会社)の中から一部を抜粋・編集しています

どんな時に運営管理機関に届け出が必要ですか?

iDeCo メリット
(画像=PIXTA)

氏名の変更、住所や振替口座の変更、掛金額の変更等はもちろん届け出が必要ですが、年金の被保険者区分が変わった時や、転職の際にも届け出が必要です。

例えば自営業だった方が会社員になった場合、第1号被保険者から第2号被保険者へ、会社員だった方が結婚して扶養に入る場合、第2号被保険者から第3号被保険者へ区分が変わりますので、遅滞なく届け出ます。また、転職も同様です。場合によっては掛金上限額が変わることもあります。

掛金を拠出するのが難しい時はどうしたらいいですか?

掛金の拠出が難しい時は、運営管理機関に「運用指図者」への変更を申し出ます。すると、資金を引き出すことはできませんが、掛金の拠出を中断し、運用のみ継続することが可能になります。

とはいえ、iDeCoの最低掛金は月5,000円です。1日あたり167円のお金が出せない状況はiDeCoが問題なのではなく、根本は違うところに問題がある可能性が大きく、ライフプランの立て直しを考えるほうが賢明です。

また、60歳以降に老齢給付金を一括で受け取る際は、退職所得控除が使えますが、運用指図者期間は加入期間に認められませんので、受取時の非課税枠も小さくなります。

加入者が死亡したらどうなりますか?

60歳までの加入期間中に加入者が亡くなると、死亡給付金としてiDeCoの資産が全額遺族に支払われます。その際の遺族は公的年金と同様の扱いですから、内縁関係でも配偶者は受取人として認められますし、あらかじめ受取人を指定しておくこともできます。

受取の手続きは、遺族が運営管理機関に対して行ないます。運営管理機関は申出によりiDeCoの全資産を売却し現金化したうえで遺族に給付しますので、加入者死亡後は運用を継続することはできません。

死亡給付金は死亡退職金として扱われますので、「500万円×法定相続人の数」で求められた金額は相続財産の非課税枠が適用されます。

途中でお金が引き出せるケースは全くないのでしょうか?

死亡以外でお金が引き出せるのは、障害を負った時です。障害年金1級または2級に該当した際は、障害給付が受けられます。障害給付は全額非課税で受取ができます。

しかし、それ以外の理由では、指定の年齢に達するまで自由に引き出すことができません。

震災の際は、限定的に引き出しが認められるケースもありましたが、それでも厳しい条件がつきました。また、貸付制度もありません。

年金保険料の免除を受けている時、iDeCoはできますか?

国民年金の保険料を支払っていない場合、iDeCoはできません。未納はもちろん、免除や学生納付特例も同じです。

例えば海外に居住している人は、国民年金への加入が義務ではありません。しかし人によっては、任意加入をしている場合もあるでしょう。現在、任意加入の方はiDeCoへの加入はできませんが、2022年からはできるようになります。

60歳以降は、どのような手続きになりますか?

60歳になると、iDeCoの加入資格を喪失します。加入資格とは掛金を拠出する資格ですので、その先は最長70歳まで運用指図者として運用のみを継続することができます。60歳で加入資格を喪失すると同時に受給権が与えられます。受給は70歳までの任意のタイミングで、運営管理機関にいつでも申出が可能です。

60歳になれば、資金が引き出せますか?

原則60歳になれば、受給権が発生しますが、60歳までの加入期間が10年に満たない場合、最長65歳まで受取時期が遅れます。その間は運用のみを行なう運用指図者となります。

50歳以降でiDeCoを始めた方は、60歳までに10年の加入期間を満たしませんので、以下の表で受取開始可能年齢を確認してください。

iDeCo 資金引き出し
(画像=中小企業のための「企業型DC・iDeCo+」のはじめ方)

65歳まで加入できるようになるんですか?

現在60歳までが iDeCoの加入年齢ですが(企業型は規約により65歳まで加入可能)、2022年より65歳まで加入が可能になります。加入できるのは公的年金の被保険者ですから、60歳以降厚生年金に継続加入する方は問題なく加入できます。これは2022年に60歳になる人はもちろんですが、2022年より前に60歳になる場合でも、2022年に65歳未満であればiDeCoに再加入し、積立を再開できます。ただし、iDeCoに再加入する前に老齢給付金を引き出してしまうと再加入の権利を失いますので、注意が必要です(企業型確定拠出年金の老齢給付金の受け取り後、iDeCoへの再加入は可能)。

一方、第1号被保険者の場合、65歳までの加入拡大できるのは60歳までの年金加入期間に未納があった場合で60歳以降に任意加入をした時に限ります。すでに480カ月の加入が完了していると国民年金の任意加入被保険者になれないため、iDeCoへの加入もできません。

さらに第3号被保険者は60歳まででそれ以上はありませんから、iDeCoはやはり60歳までが加入対象年齢となります。

iDeCoの節税メリットを教えてください。

「iDeCo公式サイト」では、節税メリットを理解するためのシミュレーションができます。年収、年齢、掛金を入力するとざっくりと税制メリットを教えてくれます。

あるいは、会社員の場合、源泉徴収票を用いて、もう少し具体的に節税メリットを確認することもできます。まず、源泉徴収票から前年度の課税所得を算出します。図1のBからCの金額を引くと、課税所得がわかります。仮に課税所得が300万円であれば、該当する所得税率は10%となります(図2)から、「iDeCoの年間掛金×10%」が節税メリットとなります。また、住民税は課税所得にかかわらず、すべての方が税率10%を負担していますから、「iDeCoの掛金×10%」が節税メリットとなります。

iDeCo 図1
(画像=中小企業のための「企業型DC・iDeCo+」のはじめ方)
iDeCo 図2
(画像=中小企業のための「企業型DC・iDeCo+」のはじめ方)
中小企業のための「企業型DC・iDeCo+」のはじめ方
山中 伸枝(やまなか・のぶえ)
株式会社アセット・アドバンテージ代表取締役、心とお財布を幸せにする専門家、ファイナンシャルプランナー(CFP®)、FP 相談ねっと代表、一般社団法人公的保険アドバイザー協会理事 1993年米国オハイオ州立大学ビジネス学部卒業後、メーカーに勤務。これからはひとりひとりが、自らの知識と信念で自分の人生を切り開いていく時代と痛感し、ファイナンシャルプランナー(FP)として 2002年に独立。現在、年金と資産運用、特に確定拠出年金や NISAの講演、ライフプランの相談で全国を飛び回りながら、ウェブやマネー誌などで情報発信するなど、お金のアドバイザーとして精力的に活動している。金融庁サイト有識者コラムや「東洋経済オンライン」での連載、日経プラス10、日経CNBC、全日空機内番組へのメディア出演など。 著書に『50歳を過ぎたらやってはいけないお金の話』(東洋経済新報社)、『書けばわかる!節約・預金だけではもったいない わたしにピッタリなお金の増やし方』『ど素人が始めるiDeCo(個人型確定拠出年金)の本』(翔泳社)、共著に『いっきにわかる ! つみたてNISA&iDeCo 令和スタート版 』(洋泉社 MOOK)など多数。

山中伸枝オフィシャルサイト https://www.nobueyamanaka.com/

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