( 講演する前野氏、写真=ZUU online編集部)

遺族年金はいくらもらえるのか?

妻や子の生活費がいくらかを計算することはできても、自分が死亡した後の「収入」を計算できる人は少ない。前野氏は、父親が会社員という人が自身が亡くなった際に、家族が遺族年金をいくらもらえるのか考える手順を紹介した。夫婦共働きでも、妻の年収が850万円より低いのであれば下記は適用されるので参考にしてみてほしい。

①「子」がいるかどうか

遺族年金の支給額に大きく関わってくるのは「子がいるかどうか」ということである。子がいる場合、国の保障である「遺族基礎年金」が支給されるからだ。

「遺族基礎年金」の支給額は、子2人なら年間約122万円、子1人になると年間約100万円。ただし、支給期間は子が18歳(障害等級1、2級であれば20歳)になるまでとなる。「子」が18歳以上だと、遺族基礎年金は支給されない。

②「子」がいる場合、妻がいるかどうか

会社員であればさらに「遺族厚生年金」も支給される。ただし、妻がいるかどうかで「遺族厚生年金」の支給期間は異なる。

妻がいない場合、「遺族厚生年金」の支給期間は子が18歳になるまでに限られる。一方、妻がいるのであれば、「遺族厚生年金」の支給期間は妻が死去するまで一生続く。さらに、子が18歳になったあとは「中高齢寡婦加算」が加わり、これは妻が65歳になるまで続く。(妻65歳以降は年金が支給される)

ちなみに「遺族厚生年金」の支給額は父親の年収や厚生年金保険の支払い期間によって異なる。前野氏が今まで相談を受けたケースをみると、父親が30代なら年額35万円から40万円台後半になるケースが多いという。月額ではなく年額であることに注意したい。

③「子」がいない場合、妻がいるかどうか

子がいない家庭はどうなるのか。支給されるのは「遺族厚生年金」と「中高齢寡婦加算」のみとなる。ここでポイントとなるのは「遺族厚生年金」と「中高齢寡婦加算」の支給期間は妻の年齢によって異なることだ。妻が若いほど支払われる期間は短くなり、結果として妻が受け取る金額は少なくなるのだ。

具体的にいうと、妻が30歳未満であれば「遺族厚生年金」の支給は父親の死亡後5年間のみとなる。妻は20代と若く、子もいないので、再婚の可能性や再就職の可能性が高いと判断されるのである。「中高齢寡婦加算」は支給されない。

妻が30歳以上になると、「遺族厚生年金」は妻が死亡するまで支給される。さらに妻が40歳以上であれば、65歳になるまでの間、「中高齢寡婦加算」も支給される。

ざっくり言うと、子どもがいない場合、妻に支給される遺族年金は下記のようになる。

妻が30歳未満→5年間、年40万円(200万円)
妻が30~39歳→妻が死去するまで年40万円(約1900万〜約2300万円)
妻が40歳以上→妻が64歳まで年98万円、65歳以降は年40万円(妻40歳から支給なら約3200万円)

※遺族厚生年金=年40万円、中高齢寡婦加算=年58万円、妻87歳で死去と仮定

④子も妻もいない場合。生計をともにする55歳以上の親がいるか

子や妻がいなくても、生計をともにする55歳以上の親がいるのなら「遺族厚生年金」が支給され、親が死去するまで続く。