◎「個人年金制度」という選択肢


こういった中、今急速に伸びているのが生命保険会社の個人年金保険です。この商品は中途解約では元本を割る可能性がありますが、満期には約束された利率での運用益が得られます。また、生命保険という性格から、被保険者が死亡すれば最低限、支払った保険料金が死亡保険金として支払われるということもその人気の一つだと思います。

個人年金の各社の保有契約・保有金額動向を見ますと、平成7年度から減少傾向にありました。しかし、平成15年に保険の銀行窓販が解禁されて以降は、毎年過去最高を更新していっています。
なお、定額個人年金と変額個人年金の合計保有額約100兆円であり、その割合は8対2ので圧倒的に定額年金が勝っているというのが実状のようです。日本の年金制度に国民が不安を持っていることは確かで、しかしながらその資金の確保は安定的に準備をしたいという気持ちの表れではないでしょうか。

なお、実は富裕層においても思いは同じで、その大きな財産の運用や保全のために、この個人年金保険は有効かつ合理的な金融商品になっています。
例えば、個人年金と言えども生命保険ですから、相続時の生命保険金の相続人1人当たり500万円の控除の適用があります。そして、殆ど被保険者の健康を問題とせずに加入が可能ですので、高齢になってからや健康面で一般の保険に加入できない多くの富裕層が相続対策に利用しています。


◎主な個人年金制度の仕組みとポイント


以下、主な個人年金保険について仕組みと加入時のポイントについて述べていきます。

・定額型個人年金保険
一般的な個人年金保険です。比較的安全な公社債で運用されることが多く、予定利率が決まっていて、契約時の利率が満期まで保障されます。保険会社によって満期期間は違ってきますが3年、5年、7年、10年と満期期間も選択できます。10年満期が比較的多いのではないでしょうか。なお、途中解約は殆どの生命保険がそうであるように元本を割り込む可能性もあります。

債券で運用しているということから、中途解約の場合契約時の利率と解約時の市場金利により解約返戻金は変動します(これを市場価格調整と言います)。その為、早い機会に払込保険料を上回る可能性もあります。従来は投資信託が人気がありましたが、欧州不安等々により安全な個人年金保険に加入される人が増えてきています。
また、資産運用や相続対策に用いられます。

・外貨建て個人年金保険
外貨を用いた定額型個人年金です。公社債での運用という面では一般の定額型個人年金と同じなのですが、外国債券を用いるということで、為替によりその運用も変動します。
ただし、日本の市場金利がかなり低くなっていることから、一般の定額型個人年金の運用利率と比べ高利率となっています。多く用いられているのが米ドル建て、豪ドル建て、ユーロ建てといったところでしょうか。

このタイプの年金保険も債券を用いた運用をしていますから、中途解約においては市場価格調整されます。為替の動向によっては短期に支払保険料金の額を上回る可能性があります。満期期間も一般の個人年金保険と殆ど同様で、外貨ベースでは運用利率は保障されているのが殆どです。銀行に外貨預金として保有しているより、運用利率やペイオフ(外貨預金はペイオフの対象になりません)対策としても有効だと思われます。
加えて円安ヘッジということで中小の貿易会社のオーナーがこの外貨建て年金保険に加入されるケースがあります。

また、某外資系保険会社の外貨建年金商品に、投資信託のような毎年(または毎月)分配型の商品があります。投資信託と違うのは運用利回りと、満期後の元本が保障されているということです。内容をざっくりと説明しますと、例えば2億円を10年間満期のこの年金商品で運用した場合、翌年から毎年約700万円〜800万円の分配金を受け取ることができ、かつ10年後に2億円が戻ってくるという商品です。

当然外貨ですから為替により円での受取額は上下します。

・変額型個人年金保険
これは定額型個人年金が一般勘定という比較的安全に運用されているのに対して、特別勘定(株式やコモデティ等々比較的値動きの荒い金融商品での運用)で運用される年金商品です。その運用金融商品比率は加入者で選択できます。ハイリスクハイリターンに設定することもローリスクローリターンに設定(それでも定額型個人年金よりはるかにリスクはあります)することも可能です。
途中でその組み合わせ比率の変更も可能ですが、変更回数に制限が設けられているのが一般的です。保険会社により死亡時や満期時には支払保険料金を最低限保証されている商品もあります。まさに投資信託に一番近い保険商品で、比較的リスクの高い個人年金保険と言ってもよいでしょう。

当然のことながら生命保険のいろいろな優遇制度も適用されますからリスクを取れるということでしたらこういった年金保険も選択肢になります。バブル時期においてはかなり人気を持っていたのですが、それ以降株式の下落とともに保有や新規契約高も減少し、今では全個人年金保険の20%近くになってきています。

以上、今回の記事をお届けしました。
上記の内容は、保険会社によって異なっても来ますので、詳細は保険会社や顧問税理士に確認してください。

次回の記事では、保険や保険会社の仕組についての解説をお届け予定です。

参考: 加入して満足していませんか?変額個人年金のリスク再検証!

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富裕層のための保険講座vol1『3大オーナーの生命保険と税金』
富裕層のための保険講座vol2『主な生命保険とその特徴』
富裕層のための保険講座vol3『法人における保険加入の方法とメリット』
富裕層のための保険講座vol4『事業と家族を守るために富裕層の加入すべき保険の考え方』
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富裕層のための保険講座vol6「個人年金保険の種類と活用方法」
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BY NAD

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