退職した年の確定申告が必要かどうかは「退職した後どのように行動したか」による。また、退職時にある手続きをしていないのなら確定申告をしたほうが得だ。ここでは退職した年の確定申告に関して、パターンを挙げながら解説する。
退職後の確定申告に関するQ&A
最初に退職後の確定申告についての3つの問いに答える。
そもそも確定申告って何?
確定申告とは、1月1日から12月31日までの1年間に生じたさまざまな所得をとりまとめ、所得に対してかかる税金を計算し、税務署を通じて国に所得額や税額を書面で報告する手続きのことだ。申告する税目は所得税と復興特別所得税である。所得が生じた年の翌年3月15日までに申告・納税しなくてはならない。
確定申告とは、1月1日から12月31日までの1年間に生じたさまざまな所得をとりまとめ、所得に対してかかる税金を計算し、税務署を通じて国に所得額や税額を書面で報告する手続きのことだ。申告する税目は所得税と復興特別所得税である。所得が生じた年の翌年3月15日までに申告・納税しなくてはならない。
退職後は確定申告が必要? それはどんなとき?
退職後に確定申告しなくてもよいことがある。退職した年のうちに転職し、新たな勤務先で年末調整を受け、かつ前の職場を辞めるときに「退職所得の受給に関する申告書」を提出したときだ。しかし退職後、別の会社に就職せずに年を越したときや「退職所得の受給に関する申告書」を提出せずに辞めたときは確定申告を行う必要がある。
退職後に確定申告しなくてもよいことがある。退職した年のうちに転職し、新たな勤務先で年末調整を受け、かつ前の職場を辞めるときに「退職所得の受給に関する申告書」を提出したときだ。しかし退職後、別の会社に就職せずに年を越したときや「退職所得の受給に関する申告書」を提出せずに辞めたときは確定申告を行う必要がある。
失業保険も確定申告しないといけない?
失業保険は所得税がかからないので確定申告は不要だ。ただし、年の途中で会社を辞めた後、失業保険を受給しつつ国民健康保険や国民年金などを支払っていたのなら確定申告をしたほうがいい。住民税や国民健康保険料は確定申告をした所得額を基に計算されるので、次年度の公的負担が軽くなる可能性がある。
失業保険は所得税がかからないので確定申告は不要だ。ただし、年の途中で会社を辞めた後、失業保険を受給しつつ国民健康保険や国民年金などを支払っていたのなら確定申告をしたほうがいい。住民税や国民健康保険料は確定申告をした所得額を基に計算されるので、次年度の公的負担が軽くなる可能性がある。
退職した年に確定申告が必要な人とは
●年の途中で退職して転職しなかった人
年の途中で退職し、そのまま無職で年末を迎えるのなら確定申告をしたほうがいい。退職前に源泉徴収された税金が一部還付になる可能性があるからだ。もし退職後に支払った国民健康保険や国民年金保険料があるなら、併せて申告すると還付額が増える。
●退職後、フリーランスになった人
退職後、フリーランスとなり事業所得や雑所得を得ていた人は確定申告をする必要がある。特に青色申告の承認申請を行った人は、申告・納税期限である翌年3月15日までの確定申告が必須だ。
青色申告の特典として65万円・55万円・10万円の特別控除があるが、期限後申告になると一律10万円の控除になってしまう。
●退職時に申告書を会社に提出しなかった人
退職時に「退職所得の受給に関する申告書」を提出しない人は確定申告すれば退職金に課税される税金が一部戻って来る可能性がある。というのも、この申告書を出していれば低い課税額で済むのだが、出さないで退職すると退職所得控除が適用されず、高い税金が天引きされてしまうからだ。
退職しても確定申告がいらない人
- 退職した年に転職した人
- 退職後にアルバイト・パートをしている人
年の途中で転職して年末を迎えれば、新たな職場で年末調整が受けられる。この年末調整では前の職場での給与所得や各種控除を含めて計算してもらえるのだ。
ただし、退職時に「退職所得の受給に関する申告書」を提出せずに退職したのなら、退職所得だけでなく年末調整後の給与所得も含めて確定申告をする必要がある。
退職後に確定申告すべきものとは
- 退職前の給与所得
- 退職後の各種所得
- 退職時の退職所得(ただし「退職所得の受給に関する申告書」を提出しているなら確定申告は不要)
- 退職前からの副業所得
- 各種所得控除・税額控除
繰り返しになるが、いかなる形であれ確定申告をするなら年末調整済の給与所得やほかの所得もすべて一緒に申告しよう。
こんな収入は申告不要
所得にはいろいろあるが、以下の手当てや収入は確定申告をしなくてもいい。所得税が非課税になるからだ。
- 失業手当
- 新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金(新型コロナ休業給付金)
- 一律10万円の特別定額給付金
- 子育て世帯への臨時特別給付金
ただし、個人事業主に支給される持続化給付金や補助金といったお金は所得税の課税対象となる。受け取ったお金で課税・非課税が気になるものは事前に調べたほうがいい。
申告方法をパターン別に解説
●申告パターン1:退職したまま無職の人
退職したまま無職の人は退職した会社の給与所得の源泉徴収票を使って確定申告をする。退職した会社で源泉徴収された社会保険料のほか、退職後から年末までに支払った国民健康保険や国民年金、生命保険料など控除すべきものがあるのならすべて一緒に申告する。
もし退職前に得ていた収入が会社からの給料だけなら還付になるはずだ。逆に、退職前に何らかの副業をしていた場合、納税になることもある。なお繰り返しになるが、失業手当といった非課税所得は申告不要だ。
後述するが、退職時に「退職所得の受給に関する申告書」の提出をしていなかったなら、退職所得も併せて確定申告したほうがいい。
●申告パターン2:退職した後フリーランスになった人
退職後にフリーランスとして独立し、個人事業主になった人は次の所得を申告する必要がある。
その年の1月1日から退職する日までに退職した会社からもらっていた給与所得
退職後、独立してから年末までに稼いだ事業所得または雑所得
事業所得や雑所得は「総所得金額-必要経費の額」で計算する。ただし事業所得については、開業時に青色申告の承認申請書を提出し、65万円・55万円・10万円いずれかの特別控除を申請していれば、計算した事業所得の額からさらに特別控除の額を差し引くことができる。このほか、申告パターン1と同様、ほかの所得控除があるなら一緒に申告しよう。
このパターンで還付になるか納税になるかは状況次第だ。所得控除の額が多かったり、開業後1年目の事業所得が赤字だったりすれば還付になるだろう。ただし、開業後すぐに黒字化し、特別控除の額や所得控除の額を差し引いても多額の所得額が残るのなら納税になる可能性が高い。
なお、このパターンでも退職時に退職所得に関する申告書を提出していないのなら、併せて退職所得を申告したほうがいい。
●申告パターン3:退職時に申告書を提出しなかった人
退職時に「退職所得の受給に関する申告書」を提出していなかった人は、退職所得の確定申告をしたほうがいい。一律20.42%の税率で所得税と復興特別所得税が源泉徴収されているが、本来適用されるべき退職所得控除を受けていないため、高い税金を納めた状態になっているからだ。確定申告をすれば一部還付される。
退職所得は給与所得や事業所得、雑所得といったほかの所得と分けて課税される。つまり「課税される退職所得×税率=退職所得に対する所得税・復興特別所得税」となるわけだ。
課税される退職所得は「(退職金の額-退職所得控除)×1/2」で計算する。退職所得控除の額は勤続年数によって次のように分かれる。いずれも1年未満の端数は、たとえ1日でも1年に切り上げる。
勤続年数が20年以下:40万円×勤続年数(計算結果が80万円以下なら「80万円」が控除額)
勤続年数が20年超:70万円×(勤続年数-20年)+800万円
この計算によって算出された退職所得の額で適用される税率と控除額は次のように決まる。
課税される退職所得の額 | 税率 | 控除額 |
1000円以上194万9000円以下 | 5% | 0円 |
195万円以上329万9000円以下 | 10% | 9万7500円 |
330万円以上694万9000円以下 | 20% | 42万7500円 |
695万円以上899万9000円以下 | 23% | 63万6000円 |
900万円以上1799万9000円以下 | 33% | 153万6000円 |
1800万円以上3999万9000円以下 | 40% | 279万6000円 |
4000万円以上 | 45% | 479万6000円 |
※税率と控除額は2020年分
例えば、退職金3000万円、勤続年数35年6ヵ月の場合、次のように計算する。
課税される退職所得の額:〔3000万円-(70万円×(36年-20年)+800万円)〕×1/2=540万円
退職所得に対する所得税・復興特別所得税の額:540万円×20%-42万7500円=65万2500円
なお、退職所得を確定申告するのなら、年末調整の有無に関係なく、すべて所得や所得控除を確定申告する。
納税のときの確定申告
納税のときの確定申告は次の2点に注意しよう。
●申告・納税の期間は2月16日から3月15日まで
納税となるときの確定申告の期間は原則、所得が発生した年の翌年2月16日から3月15日までだ。納税もこの期間内に行う。納税は、税務署や金融機関で現金納付するほか、振替納税・電子納税・コンビニ納付・クレジットカード納付がある。
●申告・納税が遅れるとペナルティ
申告や納税が期日である3月15日に間に合わないとペナルティが科される。無申告加算税と延滞税だ。
無申告加算税は申告が法定申告期限である3月15日より遅れたときにかかる。原則、納税額の50万円以下は15%、50万円超の部分は20%の税率で課税される。ただし申告遅れが1ヵ月以内だったり、税務署から指摘される前に自主申告したりすると軽減される。無申告が悪質だと見られると無申告加算税の代わりに重加算税が科され、税率は一律40%となる。
延滞税は納税が法定納期限である3月15日よりも遅れたときにかかる。納期限の翌日から完納までの日数に応じた割合を納付すべき税額に乗じた金額が課税される。割合は2020年12月現在、納期限の翌日から2ヵ月以内の部分につき年2.6%、2ヵ月を超えた部分につき年8.9%となっている。
還付のときの確定申告
還付のときの確定申告を「還付申告」と言う。還付申告では次の2点に注意したい。
●5年間申告できる
還付申告は所得が発生した年の翌年1月1日から5年間行える。納税の確定申告のような「翌年2月16日から3月15日まで」という期間に縛られないのだ。そのため、年明けすぐに申告できるし、2年前に申告し忘れたものを申告し、還付を受けることもできる。
●遅いと住民税や国民健康保険料で損をすることも
還付申告は5年間有効だが、遅く申告すると損をする。還付申告の内容が6月から徴収開始となる住民税に反映されないからだ。また、住民税の所得額を基礎に計算される国民健康保険料や保育料も高くなる可能性がある。
住民税も所得税と同様、5年間は還付(減額)申告ができる。ただし市区町村の担当窓口に足を運んで手続きをしなくてはならない。また、住宅ローン控除など納税通知書が送付された後では申告できないものもある。負担を減らし、所得税も住民税も節税したいのなら、3月15日までに済ませたほうがいい。