サラリーマンの多くは会社での年末調整で、税計算が完結するが、状況によっては確定申告をしないといけないときがある。どのようなときに申告が必要になるのだろうか。今回はサラリーマンが意識しておきたい確定申告の内容と注意点について解説する。
サラリーマンの確定申告に関するQ&A
最初にサラリーマンの確定申告に関する4つの質問に答える。
確定申告って何?
確定申告とは1月1日から12月31日までの1年間の所得金額と所得税の額を計算し、申告・納税をする手続きだ。所得が発生した年の翌年3月15日までに行わなくてはならない。申告・納税先は原則、自分の住所地を管轄する税務署になる。なお、給与や報酬から所得税が源泉徴収されていると、還付されることがある。
確定申告とは1月1日から12月31日までの1年間の所得金額と所得税の額を計算し、申告・納税をする手続きだ。所得が発生した年の翌年3月15日までに行わなくてはならない。申告・納税先は原則、自分の住所地を管轄する税務署になる。なお、給与や報酬から所得税が源泉徴収されていると、還付されることがある。
サラリーマンで確定申告しなくてはいけないのはどういう人?
勤務先からの給与以外の所得が20万円を超えると確定申告しなくてはならなくなる。不動産投資や株式投資などで稼いでいる人、アフィリエイトや週末ライター・プログラマーで稼いでいる人などが該当する。このほか、自宅を売却して利益が出た人も確定申告が必要だ。
勤務先からの給与以外の所得が20万円を超えると確定申告しなくてはならなくなる。不動産投資や株式投資などで稼いでいる人、アフィリエイトや週末ライター・プログラマーで稼いでいる人などが該当する。このほか、自宅を売却して利益が出た人も確定申告が必要だ。
サラリーマンで確定申告したほうがいいのはどういう人?
義務はないが確定申告をしたほうがいいサラリーマンは、年間の医療費が10万円を超える人やふるさと納税をした人、赤十字や認定NPOに寄付をした人、自然災害で自宅に被害があった人だ。このほか、副業の株式投資で発生した損失を繰越したい人も確定申告をしたほうがいい。
義務はないが確定申告をしたほうがいいサラリーマンは、年間の医療費が10万円を超える人やふるさと納税をした人、赤十字や認定NPOに寄付をした人、自然災害で自宅に被害があった人だ。このほか、副業の株式投資で発生した損失を繰越したい人も確定申告をしたほうがいい。
サラリーマンも確定申告をするときがある
サラリーマンも確定申告が必要なときがある。年末調整だけでは正しい所得額や税額を国(税務署)に伝えられないときだ。そもそも年末調整と確定申告はどのように違うのだろうか。それぞれの位置づけは次のとおりだ。
年末調整は正社員やアルバイト・パートといった給与所得者に代わって勤務先が行う「1年間の所得と税額の精算」である。日本は申告納税制度を採用しているので、本来サラリーマンでも確定申告をするべきなのだ。しかし税務署の徴税コストと手間の問題から、会社に従業員の源泉徴収と年末調整の義務を課している。そのため、多くのサラリーマンは確定申告とは縁がない。
とは言っても、年末調整で扱わない項目もある。自社で支払う給与所得以外の所得や医療費控除、雑損控除といったものだ。これらは確定申告をしないと正しい所得額と納税額を計算できない。そのため、一部サラリーマンは確定申告を行うことになる。
サラリーマンで確定申告しないといけない人
- 副業の所得が20万円を超える人
- 給与年収2000万円超の人
- 勤務先が源泉徴収していない人
- 株式投資やFX、暗号資産の投資をしている人
- 不動産投資等で青色申告をしている人
- 財産を売却して利益が出た人
なお、副業所得20万円以下なら確定申告は不要だが、あくまでも所得税に関してだけだ。住民税は確定申告しなくてはいけない。
申告しないといけない人の確定申告ルール
申告しないといけない人は、納税しなくてはならない人だ。この納税の確定申告は所得が生じた年の翌年2月16日から3月15日までとなる。後述するが、確定申告書は、紙の申告書かオンライン上の入力画面に所得や税額、その他必要事項を書きこむ。
納税は、税務署や金融機関の窓口で現金で納付するほか、次のような方法がある。
振替納税
電子納税
コンビニ納付
クレジットカード納付
振替納税と電子納税は預貯金口座から納税額を振り替える方法だ。振替納税は自動振替だが、事前手続きが必要となる。
電子納税はe-Tax経由での納税のことで、事前手続きが必要なものとそうでないものがある。
コンビニ納付とクレジットカード納付は事前手続きが不要だ。コンビニ納付は自宅で発行したQRコードで納税する方法で、納税額が30万円以下なら利用できる。クレジットカード納付は専用画面から決済可能で、納税額1000万円以下なら利用できる。ただし、納付税額に応じた決済手数料がかかる。
サラリーマンで確定申告したほうがいい人
- 株やFXの譲渡損を繰り越したい人
- 医療費控除がある人
- ふるさと納税した人
- 災害で家財道具に被害を受けた人
- 赤十字や認定NPOに寄附した人
- 住宅ローン控除1年目の人
このほか、年末調整で提出し忘れた所得控除があるなら確定申告をしたほうがいい。
申告したほうがいい人の確定申告ルール
申告したほうがいい人とは、税金が還付される人だ。還付のための確定申告を「還付申告」という。これは納税のときの確定申告と異なり、年明け1月1日から5年間、申告ができる。
後述するが、還付申告のやり方は納税のときの確定申告と同じだ。ただし納税と1点だけ異なる。それは還付先口座の記入だ。申告書第一表の右下に還付先口座を記載する欄がある。ここに納税者本人の金融機関の口座の情報を書きこまなくてはならない。
還付されるのは通常、申告後1ヵ月から1ヵ月半後だ。e-Taxの場合、2~3週間で還付される。
確定申告に必要な書類、不要な書類
確定申告書を単独で提出するケースは少ない。通常、何らかの書類を添付する。一方、マイナンバー制度の普及で、一部書類が添付不要になった。
確定申告書に必ず必要なのはマイナンバー関連の書類だ。「マイナンバーカード」または「通知カード+身分証(運転免許証や健康保険証など)」が必要となる。税務署に直接提出するなら原本を持参する。郵送ならマイナンバーカードの両面コピーまたは通知カードと身分証のコピーを申告書に添付する。
なお、e-Tax(電子申告)はマイナンバー関連の書面添付は不要だ。マイナンバー方式もID・パスワード方式も、本人確認を事前あるいは申告時に行うからだ。
一方、以前は当たり前のように添付していた医療費控除の際の医療費のレシート、給与所得者の源泉徴収票は添付不要となった。ただし、手元で5年間保管しなくてはならない。
確定申告の仕方①:紙で申告
確定申告には紙による申告とe-Taxによる申告の2つがある。紙による申告は次のとおりだ。
紙の申告書は直接手書きで記入するか、オンラインで作成する。申告書の用紙は税務署で入手できるほか、国税庁のWebサイトからも入手できる。
【参考】[確定申告書、青色申告決算書、収支内訳書等(国税庁)]https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/yoshiki/01/shinkokusho/02.htm)
オンラインでの作成は国税庁の確定申告書作成コーナーで行う。「国税庁 確定申告書 作成」で検索すると上位に表示されるが、このサイトは年明けにならないと本格始動しない。作成した後は自宅のプリンターで印刷する。
提出は直接窓口で行うか、郵送する。郵送で控えを返送してほしい場合、切手を貼付した返信用封筒を同封する必要がある。
確定申告の仕方②:e-Taxで申告
e-Taxでの申告はパソコンか、スマートフォンのいずれかで行う。ただし、スマートフォンでの申告は給与所得・雑所得・一時所得など一部の所得しか申告できない。そのためパソコンで申告したほうが無難だ。
なお、e-Taxでの申告は「マイナンバーカード方式」か「ID・パスワード方式」のいずれかで行う。マイナンバーカード方式は、ICカードリーダーライターかマイナンバーに対応したスマートフォンが必要だ。一方、ID・パスワード方式にはカードもデバイスも必要ない。ただし事前に税務署でIDとパスワードを発行してもらわなくてはならない。
また、必要書類をPDFで送信するので、PDFの加工ができるアプリかスキャナを準備しておいたほうがいい。
サラリーマンの確定申告の注意点
ここでサラリーマンの確定申告の注意点を4つ確認しよう。
●確定申告しないとペナルティ
確定申告の義務があるのに期限内に行わないと無申告加算税や延滞税がかかるおそれがある。
無申告加算税は法定申告期限である3月15日より遅れて申告した際にかかるペナルティだ。税務署から指摘を受けた後だと納付すべき税額のうち50万円までは15%、50万円超の部分については20%が課税される。
ただし、期限後1ヵ月以内に確定申告すれば無申告加算税はかからない。仮に1ヵ月超になっても指摘される前に自主申告すれば5%に軽減される。だが、無申告の状況が悪質だと見られると、より重い40%の重加算税が代わりに科せられる。
延滞税は納税が法定納期限である3月15日よりも遅れたときにかかるペナルティだ。納期限の翌日から完納までの日数に応じた割合を納付すべき税額に乗じて計算する。税率は、2020年12月現在、納期限の翌日から2ヵ月以内の部分については年2.6%、2ヵ月を超えた部分については年8.9%となっている。
●住民税の納付方法に注意
確定申告書第二表の下の欄に住民税の納付方法を選択する項目がある。「給与から差引き(特別徴収)」か「自分で納付(普通徴収)」だ。会社に副業を知られたくないなら「自分で納付」を選択しよう。そうすれば、副業部分の住民税の決定通知書(納付書)は会社に届かず自宅に直接届く。通知書が届いたら、副業部分の住民税は自分で納めよう。
●所得が増えると翌年度の住民税や保育料も増える
確定申告の結果、所得が増えると3月15日までに納める所得税・復興特別所得税の納税額が増える。しかし問題はそれだけではない。この後6月から徴収される住民税や保育料も増加する。国民健康保険料や保育料といった市区町村の公的サービスにかかる費用は住民税の所得額をベースに計算されるからだ。3月の納税が終わっても、お金を使いすぎないようにしよう。
●還付申告が遅いと住民税で節税できない
還付申告は所得が発生した年の翌年1月1日から5年間行える。つまり、還付申告に限っては、慌てて3月15日に間に合わせなくてもいいのだ。しかし、遅く申告すると損をする。還付申告の内容が6月から徴収開始となる住民税に反映されないからだ。結果、高い住民税を払うことになる。
一応、住民税も所得税と同様、5年間は還付(減額)申告が可能だが、手続きは面倒だ。また、住宅ローン控除など納税通知書が送付された後では申告できないものもある。できれば納税と同様、3月15日までに済ませよう。