テレワークの普及で、自宅にいながら仕事ができる環境が整っている。副業を解禁する動きも見られる中、副業によって収入が増えると心配になるのが確定申告である。会社に内緒で副業をしていても、会社での必要手続きによってバレる可能性もある。今回は、副業をしている人の確定申告について、いくらから確定申告が必要になるか、副業の所得の種類、確定申告の手順などについて解説する。

中村太郎
中村太郎
中村太郎税理士事務所所長・税理士。1974年生まれ。和歌山大学経済学部卒業。税理士、行政書士、経営支援アドバイザー、経営革新等支援機関。税理士として300社を超える企業の経営支援に携わった経験を持つ。税務のみならず、節税コンサルティングや融資・補助金などの資金調達も得意としている。中小企業の独立・起業相談や、税務・財務・経理・融資・補助金等についての堅実・迅速なサポートに定評がある。

副業の確定申告に関するQ&A

副業,確定,申告
(画像=PIXTA)
Q


副業をしていると確定申告は必ずしなければならない?

副業で稼いだ所得は、原則的には確定申告をしなければならない。勤務先から支払われた給与は、源泉徴収と年末調整によってすでに所得税の納付が済んでいるが、副業の収入はそうではないからだ。ただし、年末調整を受けた人であれば、副業の所得が一定額以下の場合に限り、確定申告をしなくてよいというルールがある。

副業で稼いだ所得は、原則的には確定申告をしなければならない。勤務先から支払われた給与は、源泉徴収と年末調整によってすでに所得税の納付が済んでいるが、副業の収入はそうではないからだ。ただし、年末調整を受けた人であれば、副業の所得が一定額以下の場合に限り、確定申告をしなくてよいというルールがある。


Q


年末調整を受けた人はいくらから副業の確定申告が必要?

具体的にいくらから確定申告が必要になるかは
・給与を1ヵ所から受けている人
・給与を2ヵ所以上から受けている人
で分けて考える必要がある。

1ヵ所から受けている人は、給与所得以外の所得が20万円を超える場合に確定申告が必要となる。2ヵ所以上から受けている人は、従たる給与の収入金額と、給与所得以外の所得の合計が20万円を超える場合に確定申告が必要となる。

なお、副業の所得がいくらになるかを計算するには、まずその副業が何の所得にあたるかを判定しなければならない。

具体的にいくらから確定申告が必要になるかは
・給与を1ヵ所から受けている人
・給与を2ヵ所以上から受けている人
で分けて考える必要がある。

1ヵ所から受けている人は、給与所得以外の所得が20万円を超える場合に確定申告が必要となる。2ヵ所以上から受けている人は、従たる給与の収入金額と、給与所得以外の所得の合計が20万円を超える場合に確定申告が必要となる。

なお、副業の所得がいくらになるかを計算するには、まずその副業が何の所得にあたるかを判定しなければならない。


Q


副業の所得の種類とは?

副業の所得を計算するためには、副業の所得の種類を判定する必要がある。所得は、種類によって計算方法が異なるからだ。副業が何の所得にあたるかは、内容による。アルバイトなら給与所得、不動産賃貸業なら不動産所得、株のトレードであれば譲渡所得、委託や請負で報酬をもらっている場合は事業所得や雑所得となる。

副業の所得を計算するためには、副業の所得の種類を判定する必要がある。所得は、種類によって計算方法が異なるからだ。副業が何の所得にあたるかは、内容による。アルバイトなら給与所得、不動産賃貸業なら不動産所得、株のトレードであれば譲渡所得、委託や請負で報酬をもらっている場合は事業所得や雑所得となる。


Q


副業の確定申告をすると会社にバレるのか

個人の住民税の徴収方法には、個人で納付する「普通徴収」と、勤め先が給与から天引きして納付する「特別徴収」があり、会社員などは基本的に「特別徴収」となる。「特別徴収」が適用されている場合、毎年5月頃、市町村から会社に、前年の所得から計算した個人の住民税額が通知される。

副業の確定申告をした人は、このとき会社の年末調整で把握している所得を上回る住民税額が通知されてしまう。そのため、給与計算の担当者などに、会社の給与以外に収入があることを推測される可能性がある。

個人の住民税の徴収方法には、個人で納付する「普通徴収」と、勤め先が給与から天引きして納付する「特別徴収」があり、会社員などは基本的に「特別徴収」となる。「特別徴収」が適用されている場合、毎年5月頃、市町村から会社に、前年の所得から計算した個人の住民税額が通知される。

副業の確定申告をした人は、このとき会社の年末調整で把握している所得を上回る住民税額が通知されてしまう。そのため、給与計算の担当者などに、会社の給与以外に収入があることを推測される可能性がある。

副業があるときの確定申告の手順

副業があるときの確定申告の基本的な手順は、次のとおりである。

1:副業の所得を計算する
2:会社から源泉徴収票を受け取る
3:確定申告の必要性を判断する
4:確定申告書を作成する
5:確定申告書を提出する
6:納税する

●手順1:副業の所得を計算する

まずは1年間の副業の所得を計算する。所得には、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、譲渡所得、一時所得、雑所得、山林所得、退職所得の10種類の区分がある。それぞれ所得の算定方法が異なるため、副業がどの所得にあたるかは正しく判定しなければならない。副業がどの所得にあたるかは、「副業の所得の種類とは」で解説する。

●手順2:会社から源泉徴収票をもらう

2020年分の副業の確定申告をするには「令和2年分 給与所得の源泉徴収票」を受け取る必要がある。源泉徴収税票は、翌年1月31日までに交付されることになっている(所得税法第226条第1項)。

●手順3:確定申告の必要性を判断する

確定申告が必要になるのは、以下の場合である。

・給与を1ヵ所からもらっている人
→給与所得以外の所得(※)が20万円を超える場合

・給与を2ヵ所以上からもらっている人
→従たる給与の収入金額と、給与所得以外の所得(※)の合計が20万円を超える場合

(※)総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計から、給与所得と退職所得を控除した額」をいう。確定申告書の提出等によって適用される特例は考慮しない(所得税法基本通達121-6)。

「1ヵ所」というのは、同一の時点において2ヵ所以上から受けていない場合をいう。2ヵ所以上から給与を受け取っていても、すべてが年末調整の対象となるときは「1ヵ所」として扱う(所得税法基本通達121-4)。

よって年の途中で退職・再就職した人が、新しい職場で前の会社の給与も合わせて年末調整を受けた場合は「1ヵ所」でよい。給与を2ヵ所以上からもらっているときは、従たる給与については収入金額、つまり給与所得控除額を差し引く前の額で20万円の判定をする(源泉徴収票の「支払金」)。従たる給与とは、年末調整を受けなかった勤め先から支払われる給与である。

なお、すべての給与の収入額の合計から、所得控除(雑損控除、医療費控除、寄附金控除、基礎控除を除く)を差し引いた残りの金額が150万円以下、かつ給与所得以外の所得が20万円以下である場合は確定申告をしなくてよい(所得税法第121条第1項)。

●手順4:確定申告書を作成する

確定申告書を作成する方法は、手書きで作成する方法、パソコンやスマートフォンなどから国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」などを使って作成する方法がある。

●手順5:確定申告書を提出する

税務署の窓口に確定申告書類を持参する方法、税務署宛に郵送する方法、e-Taxを使って電子申告する方法がある。

<不動産所得・事業所得がある人の注意点>

2020年分以降の確定申告で青色申告特別控除65万円を適用するには、電子申告をするか電子帳簿保存法に基づく電子帳簿保存を行う必要がある。

2020年から電子帳簿保存を始めるには、原則として2020年9月30日までに承認申請が必要だった。今から2020年分の確定申告で65万円の控除を受けたいなら、電子申告をする必要がある。

●手順6:納税する

窓口納付、振替納税、クレジットカード納付、コンビニ納付、電子納税がある。

副業の所得の種類とは

●アルバイトやパート

・所得の種類:給与所得

副業として、夜や週末にアルバイトやパートで働いている場合は、給与所得となる。雇い主と労働契約・雇用契約等を交わし、給与明細や給与所得の源泉徴収票(※)を受け取るのでわかりやすいだろう。

・計算方法

収入金額(源泉徴収される前の金額)-給与所得控除額

●クラウドソーシング、アフィリエイト、動画配信など

・所得の種類:雑所得や事業所得

一般的には雑所得、事業として認められるものであれば事業所得となる。農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業そのほかの事業を営んでいる人の事業から生ずる所得とされ、雑所得とは、これ以外の9種類のいずれにもあたらない所得をいう。

事業所得と雑所得を明確に判断する基準はないが、一般的に事業所得であるかどうかは、営利性、有償性があるかどうか、反復継続して遂行する意思や社会的地位から見て客観的に事業として認められる態様かなど、その実態から個別判断を行う。給与所得者が副収入として不定期に得た少額な所得であれば、雑所得とすることが一般的である。

・計算方法

総収入金額-必要経費

(解説)

事業所得と雑所得の計算式は、一応は同じである。しかし、事業所得は青色申告をすることで必要経費に計上できるものが多かったり、青色申告でなくても一定の所得と損益通算ができたりするなど、税制上のメリットが多い。よって、雑所得であるものを事業所得とすると、20万円の判定を誤る可能性がある。

●アパートや賃貸マンションなどの不動産投資

・所得の種類:不動産所得

不動産賃貸業を行っている場合、賃貸収入は不動産所得となる。賃貸収入には、名義書換料、返還を必要としない敷金や保証金、共益費なども含まれる。青色申告をすることも可能である。

・計算方法

総収入金額-必要経費

●上場株式等の売却益

・所得の種類:譲渡所得(上場株式)

上場株式などの売却益があるときのポイントは、自身がどの課税方法を選択しているかにある。上場株式等を証券会社の特定口座(源泉徴収あり)で取引している場合、その売却益には、源泉分離課税が適用される。源泉分離課税とは、源泉徴収だけで納税が完了する課税方法のことで、この場合は、確定申告をする必要はなく、副業の20万円の判定にも含める必要はない。

確定申告の必要がなくても、確定申告をすることで株式の損失を繰り越せたり、申告分離課税を選択している配当金などと損益通算ができたりするといったメリットがある。一方、申告すれば合計所得金額が上がるため、所得控除の適用判定に影響するというデメリットもある。

確定申告の必要がないときは、これらのメリット・デメリットを比較しながら、確定申告をするかどうかを判断することになる。

・計算式

収入金額-必要経費(取得費+委託手数料等)

(解説)

取得費とは、売却した銘柄の取得費である。同じ銘柄の購入歴が複数回あるときは、総平均法などで計算した取得価額を用いる。

●仮想通貨の売却益

・所得の種類:雑所得、事業所得

仮想通貨の売却益は、基本的には雑所得になる。事業所得になるケースは、仮想通貨の取引そのものが事業として認められる形態のときや事業に付随して取引されているときである。

事業として認められるかどうかは、上述のクラウドソーシングなどの解説を参考にしてほしい。なお、売却以外にも、仮想通貨同士の交換をしたときや買い物をしたとき、マイニングをしたときにも所得の計算が必要となる。

・計算式

総収入金額-必要経費

(解説)

必要経費に算入するものは、仮想通貨の取得価額がメインとなる。仮想通貨の取得価額は、総平均法や移動平均法によって計算する。

なお、仮想通貨の分岐によって仮想通貨を得た場合の取得価額は0円となる。

副業をしているときの確定申告のポイント

副業をしているときの確定申告の所得計算のポイントや、必要書類を解説する。

●例:2ヵ所から給与をもらっている場合

<作成書類>
・確定申告書A(第一表・第二表)※Bでもよい

<用意する書類>
・給与所得の源泉徴収票(2ヵ所分)

<所得金額の計算のポイント>
副業が給与所得にあたる場合は、本業の源泉徴収票との合計額を記載する。

<解説>

まず確定申告書第二表の「所得の内訳」に2ヵ所分の給与を勤め先ごとに記載する。所得の種類は「給与」となる。続いて、第一表の「収入金額」と「所得金額」のそれぞれの「給与」の欄に、2ヵ所分の給与の合計額を記入する。

収入金額は源泉徴収票の「支払金額」の合計、所得金額は源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」の合計となる。合計することで収入金額が850万円を超える人のうち、一定の要件を満たす人は、2020年からは所得金額調整控除が適用される可能性がある。

<所得金額調整控除の適用要件>

給与の収入金額が850万円を超える人のうち、以下のいずれかにあたる人。

・本人が特別障害者にあたる
・23歳未満の扶養親族がいる
・特別障害者である同一生計配偶者か扶養親族がいる

<計算式>

{給与等の収入金額(最大1000万円) -850万円}×10%

●例:特定口座(源泉徴収あり)の上場株式の損失を確定申告する場合

<作成書類>

・確定申告書B(第一表・第二表・第三表)
・株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書
・所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)

<用意する書類>

・給与所得の源泉徴収票
・特定口座年間取引報告書

<所得金額の計算のポイント>

上場株式は分離課税となるため、第三表の作成が必要になる。上述の計算明細書と付表の添付が必要になる。

<解説>

上場株式の売却益は、その取引を特定口座(源泉徴収あり)で行っている場合、確定申告をする必要はない。ただし損失が出たときは、確定申告をすることで翌年以後に繰り越せる。翌年以後、利益が出たときに繰越した損失を控除できるということだ。

損失は、毎年一定の書類を確定申告書に添付して提出することで、最大3年間繰り越せる。 また、申告分離課税を選択した配当所得があれば、確定申告をすることで損益通算することができる。

特定口座(源泉徴収あり)の売却で生じた損失を繰り越すときの確定申告について解説する。

まず上場株式の売却益は、譲渡所得になる。所得の額は、証券会社から1月に送付される「特定口座年間取引報告書」をもとに計算する。分離課税の譲渡所得になるので、第三表の「上場株式等の譲渡」への記載が必要になる。税率は、所得税と住民税を合わせて20.315%となる。

副業は会社にバレるのか

冒頭のQ&Aのとおり、会社員などの住民税の徴収方法は、基本的には特別徴収となる。特別徴収であれば、確定申告後の5月頃に、市町村から会社に住民税額の決定通知書が送られてくる。

このとき、副業の確定申告をした人の決定通知書に記載される住民税額は、副業の所得を含めて計算された住民税額である。住民税は、所得税と同じく個人の所得をもとに計算される税金なので、税務署に確定申告した所得の情報が反映される仕組みになっている。

住民税額のほとんどは「所得割」といって、前年の所得から住民税独自の控除を行い、10%の税率をかけたもので構成される。会社が年末調整のときに計算した所得を上回る所得に対し、概ね10%で住民税額が計算されているため、見る人が見れば、会社の給与以外に収入があることはわかってしまう(控除が異なることのほかに均等割という税金があることから、ぴったり10%とはならない)。

なお、住民税の決定通知書には、会社用と個人用がある。個人用には、主たる給与以外の所得区分が記載されるため、会社が見れば、副業をしていることはほぼわかってしまう。近年はプライバシー保護のため、個人用の通知書を圧着式にしたり保護シールを貼付したりするなどの措置を行う自治体があるので、自治体によってバレる可能性は低い。

まとめ

副業をしている人の確定申告について、いくらから確定申告が必要になるか、副業の所得の種類、確定申告の手順などについて解説した。働き方改革の影響で副業を解禁する動きも見られる中、確定申告をしないで済むよう考えている人は多いだろう。

副業の所得が少額であり、確定申告をしなくてもよいケースにあたる人は、住民税の申告に注意が必要だ。20万円以下のルールは、所得税のものであり、住民税にはこのようなルールが適用されない。したがって、住民税の申告を別途行う必要が出てくる。申告をしなかったことで、後から市町村より税額の変更通知が勤め先に送られてくる可能性もゼロではない。副業を知られたくないという人は目立つので、注意が必要だ。