確定申告は、個人事業主にとって1年に1度の頭を悩ます問題である。毎年行っている手続きではあるが、1年間の売り上げと経費や、さまざまな控除を計算し、納めるべき税金を申告することは、決して簡単ではないからだ。今回は、2021年に行う確定申告について、注意点などを詳しく説明する。
確定申告2020年にまつわるQ&A
確定申告とは何か?
確定申告とは、主に個人事業主が税の申告を行う方法である。1年間の売上金額から必要経費を差し引いて課税所得額を算定し、税務署に申告する。課税所得からは、基礎控除、配偶者控除など、各種控除額を差し引くことができる。
確定申告とは、主に個人事業主が税の申告を行う方法である。1年間の売上金額から必要経費を差し引いて課税所得額を算定し、税務署に申告する。課税所得からは、基礎控除、配偶者控除など、各種控除額を差し引くことができる。
確定申告の時期は?
確定申告の時期は、2月16日から3月15日までである。この期間に、前年の1月1日から12月31日までの課税所得の金額を申告しなければならない。
確定申告の時期は、2月16日から3月15日までである。この期間に、前年の1月1日から12月31日までの課税所得の金額を申告しなければならない。
確定申告の方法は?
確定申告の方法は、主に3つある。確定申告書に必要事項を記載し、管轄の税務署に直接提出する方法、同じく確定申告書に必要事項を記載したうえで郵送する方法、さらに、インターネットで必要事項を入力して送る方法である。
確定申告の方法は、主に3つある。確定申告書に必要事項を記載し、管轄の税務署に直接提出する方法、同じく確定申告書に必要事項を記載したうえで郵送する方法、さらに、インターネットで必要事項を入力して送る方法である。
確定申告とは?
●確定申告とは何か?
会社員、個人事業主など、職種を問わず、その人の所得金額に、所得税などの税金がかかる。ただし、会社員の場合は、会社の担当者が給与収入を把握しているから、源泉徴収という方法で、毎月の課税額を計算し、年末調整で過払いの税金を精算することになっている。
一方、個人事業主の税の申告は、個人個人に1年間の売り上げや必要経費を自ら申告してもらう方法を取っている。これが確定申告である。
詳しく説明すると、個人事業主自らが、税務署に対して、1年間(1月1日から12月31日まで)の売上金額から必要経費(仕事をするうえで必要な経費)を差し引き、さらに各種控除額(基礎控除、配偶者控除など)を差し引いたうえで、課税される所得額を申告する。課税所得額がわかれば、その個人事業主が納める所得税がわかるという仕組みである。
●確定申告が必要な人は?
確定申告が必要な人は、基本的に会社員以外の個人事業主である。会社員は、先ほど説明したように、会社の担当者が給与収入を基に税金の計算を行うので、自ら確定申告を行う必要はない。
ただし、会社員の中でも、1年間の給与収入が2000万円を超える人は、確定申告を行う必要がある。また、2ヵ所以上の会社から給料をもらっている人や、副業などの収入があり、その金額が20万円を超えている人も、確定申告をしなければならない。
●確定申告の期限・時期は?
確定申告の期間は、基本的に毎年2月16日から3月15日までの1ヵ月間である。この期間に、前年の1月1日から12月31日までの売上金額から必要経費を差し引き、さらに各種控除額を差し引いたうえで、課税される所得額を申告しなければならない。
期限の3月15日が土曜・日曜・祝日の場合は、翌日まで延長される。なお、2020年分の場合は、2020年の1月1日から12月31日までの所得について、2021年2月16日(火)から3月15日(月)までに確定申告する必要がある。
確定申告を行った後で、金額の間違いなどに気付いた場合は、申告の期限内であれば、修正した申告書を再提出できる。この場合、期限内に後で提出されたものが、正しい申告書として取り扱われる。
ただし、申告期限を過ぎてしまうと、「期限後申告」として取り扱われてしまい、無申告加算税や延滞税が課せられる場合がある。よって、確定申告準備を早めに行い、期限内に提出することが大事だ。
白色申告と青色申告
確定申告には、白色申告と青色申告の2種類がある。それぞれの特徴は、次のとおりである。
●白色申告とは何か?
白色申告は、事業の収入・支出について、単純に計算する「単式簿記」という方法で帳簿をつければよい。特に届け出る必要はなく、日々の帳簿付けも比較的簡単で、手間がかからない方法である。
●青色申告とは何か?
青色申告は、帳簿について、単式簿記か、経費の各項目(勘定科目)に分けて金額を記載する複式簿記のいずれかを選ぶ。複式簿記は、発生した経費を項目に分けなければならないため、単式簿記よりも煩雑だ。ただし、複式簿記を選択すれば、最大65万円の特別控除を受けることができ、税の負担が大幅に軽減できる。
複式簿記を選択し、青色申告を行った場合は、事業で発生した赤字を3年間にわたり、繰越すことができる。赤字の金額を3年間に分散することで、それぞれの年の課税所得額を減らすことができ、所得税を減らす効果があるのだ。さらに、貸倒引当金を一括処理できるなどのメリットもあり、青色申告を選択すれば、経営的にも税についても、かなりの恩恵が受けられる。
青色申告で確定申告を行うには、前もって納税を行う税務署長宛に、「青色申告承認申請書」を提出しなければならない。提出期限は次のとおりだ。
・1月1日から1月15日までに個人事業を開始した場合、その年の3月15日まで
・1月16日以降に個人事業を開始した場合、開始日から2ヵ月以内
・白色申告から青色申告に変更する場合、青色申告したい年度の3月15日まで
白色申告は、かつて帳簿を付ける義務がなく、青色申告に比べて負担がかなり低かったが、2014年1月から、白色申告にも記帳と帳簿の保存が義務化された。これによって、白色申告だから負担が軽いとは言い難くなった。
現在では、便利な会計ソフトがあったり、国税庁のホームページを利用して簡単に帳簿が作成できたりするので、青色申告で確定申告を行う人が増加している。
確定申告の流れ
ここでは、確定申告の流れを簡単に説明する。まず、必要書類・環境を整えることから始めなければならない。
必要書類は、確定申告書、収支内訳書、青色申告決算書(青色申告の場合)などだ。確定申告書の作成に必要なものとして、印鑑(認印でも可)、口座情報、帳簿、領収書、レシートなどがある。必要に応じて、医療費控除の明細書、社会保険料控除証明書、寄附金受領証明書、社会保険料控除証明書なども準備しておこう。
以上が準備する書類だが、提出時に必要なものとして、マイナンバーカード、ICカードリーダーライター(e-Taxで送る場合)などがある。
次に、帳簿の整理だ。帳簿とは、売上金額などの収入と交通費、通信費などの必要経費といった現金の流れを記録したものだ。事業者には、毎日の取引を帳簿に記録し、帳簿と領収書などの書類を一定期間保管する義務がある。
この帳簿を基にして、収支内訳書に1年間の売上金額や必要経費を記入し、内訳書を完成させる。なお、帳簿の様式に規定はない。手書きでもExcelでも構わないが、確定申告ソフトを利用すれば、手間がかからず便利である。
以上の準備が整ったら、実際に確定申告書を作成する。作成方法は、申告書に数値を手書きする、会計ソフトを使って作成する、税理士に依頼する、国税庁のホームページにある「確定申告書等作成コーナー」を利用するなどがある。
もっとも簡単で、経費がかからない方法は、「確定申告書等作成コーナー」での申告だ。初心者は難しく思うかもしれないが、数値を入力するだけで自動的に計算してくれるので、慣れるとかなり楽だと感じる人が多いと思う。
確定申告書ができれば、必要書類を税務署に提出する。提出方法は、持参する、郵送する、e-Taxを使って電子で送るなどがある。
最後に、税金の納付を行う。所得税は3月15日、消費税は3月31日が納付期限だ。なお、期限の日が土日、祝日の場合は、翌日が期限の日となる。
所得控除とは?
所得控除とは、売上額から必要経費を差し引いた金額から、さらに一定の金額を差し引く制度だ。売上額から必要経費を差し引き、さらに所得控除を差し引いた金額が、課税対象の所得額と呼ばれている。
所得税は、この課税対象の所得額に対して課税されるため、この金額が多ければ多いほど、税金が高くなる仕組みになっている。そこで、納税者の事情に合わせて、課税対象所得額を減らし、所得税を低くして、税を軽くする方法が取られているのである。
所得控除には、基礎控除、配偶者控除、医療費控除などがあり、適用される条件やその金額は、該当する納税者の個々の事情によって異なってくる。
例えば、基礎控除は、納税者本人の控除である。控除される金額は、今までは一律38万円であったが、2020年分の申告から、納税者本人の所得金額によって、控除額は以下のようになった。
所得金額 | 基礎控除額 |
2500万円超 | 0円 |
2450万円超 ~ 2500万円以下 | 16万円 |
2400万円超 ~ 2450万円以下 | 32万円 |
2400万円以下 | 48万円 |
医療費控除は、1年間に本人や配偶者、その他家族が負担した一定額を超える医療費を支払った場合に適用される控除である。控除される金額の計算式は、「(実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補てんされる金額)-10万円」となる。ただし、上限は200万円だ。また、計算式の「10万円」の部分については、総所得金額が200万円未満の場合は総所得金額の5%となる。
これまで医療費の領収書を確定申告書に添付または提示する必要があったが、2017年分からは不要となり、代わりに「医療費控除の明細書」を添付しなければならなくなった。 ただし、「医療費通知」があれば、それを添付することもでき、「医療費控除の明細書」の記入を省略できる。
確定申告に必要な書類
確定申告に必要な書類は、確定申告書、収支内訳書、青色申告決算書である。
確定申告書には、A様式とB様式があるが、所得の種類によって、どちらを使うか決まってくる。例えば、会社員、年金生活者、一時所得の人は、A様式、B様式のどちらを使っても構わない。しかし、個人事業主など、事業で所得を得た人は、B様式を使用することになる。
確定申告書は、国税庁のホームページからダウンロードも可能だ。また、各税務署や確定申告会場、市区町村役場の窓口でも入手できる。国税庁Webサイトの「確定申告書等作成コーナー」を使えば、プリントアウトすることなく、確定申告書に直接数値を入力できる。
収支内訳書、青色申告決算書は、確定申告書に添付して提出する書類である。ただし、白色申告の場合は収支内訳書を、青色申告の場合は青色申告決算書を添付することになる。
収支内訳書も青色申告決算書も、確定申告書と同じく、国税庁のホームページや各税務署で入手できる。また、確定申告ソフトや国税庁Webサイトの「確定申告書等作成コーナー」を使って、作成することもできる。
実際に、申告書の作成に必要なものは、印鑑、口座情報、帳簿、領収書・レシートである。印鑑は、確定申告書や収支内訳書、青色申告決算書に押印する際に用いる。実印を押す必要はなく、認印で十分だが、スタンプの印鑑、いわゆる「シャチハタ印」は一般的に不可なので、注意する必要がある。
口座情報とは、払いすぎた税金が還付(払い戻し)される場合に、振込先となる銀行名、支店名、口座番号のことである。名義人は、納税者自身でなければならない。この口座情報を確定申告書に記載する。
帳簿は、日々の業務にかかわる収入、支出を記載したものである。この帳簿を基に、確定申告書、収支内訳書、青色申告決算書を作成する。
また、必要経費は、領収書やレシートがないと経費として認められない。社会保険料や生命保険料の控除を受けるためには、控除証明書が必要となる。なお、医療費控除を受ける際は、明細書が必要だ。
確定申告書、収支内訳書、青色申告決算書を提出する際は、マイナンバーカードまたはマイナンバー通知カード、住民票、ICカードリーダーライターも必要だ。税務署に直接持参する場合は、マイナンバーカードなどマイナンバーがわかるもの、身分証(運転免許証など)を提示する。郵送の場合は、マイナンバーがわかるものをコピーして同封しなければならない。
また、e-Taxを使って確定申告書などを送信する場合は、マイナンバーカードと読みこむためのICカードリーダーライターが必要だ。マイナンバーカードは、申し込みから入手まで1ヵ月程度かかる。ICカードリーダーライターは、家電量販店に2000~3000円で販売されている。
確定申告の方法
ここからは、確定申告の具体的な方法について、順を追って説明する。
最初に、「確定申告書A」あるいは「確定申告書B」を入手する。先ほども説明したように、会社員、アルバイト・パートなど、給与所得、雑所得、配当所得、一時所得だけの人は「確定申告書A」を使用し、所得の種類に関係なく、誰でも使用できるのが「確定申告書B」である。個人事業主は、「確定申告書B」を使用する。
「確定申告書」のほかに、白色申告で確定申告を行う場合は「収支内訳書」を添付する必要があり、青色申告で確定申告を行う場合は、「青色申告決算書」を添付する必要がある。いずれも、各税務署の窓口で入手できるほか、国税庁のホームページからダウンロードすることもできる。
そのほかに必要な資料は、給与所得者の場合は「源泉徴収票」、年金を受給している場合は「公的年金等の源泉徴収票」などだ。所得税の確定申告書には、「源泉徴収票」に記載されている金額を「確定申告書第二表」などに記入する必要がある。
2019年度税制改正によって、2019年4月1日以降、所得税の確定申告を行う際には、給与所得の「源泉徴収票」などの書類を添付する必要がなくなった。電子申告するe-Taxでは、すでに「源泉徴収票」の添付は不要だったが、2019年分の所得税の確定申告からは、各税務署の窓口に直接提出するような場合でも、「源泉徴収票」は不要となっている。
また、「源泉徴収票」についての5年の保管義務もなくなった。ただ、税務署に直接提出する場合も、e-Taxによって申告する場合も、入力の内容を確認するために、原則として法定期限から5年間は、税務署から添付書類の提示や提出を求められる場合があるので、保管しておくことが望ましい。
各控除を受ける場合は、「控除証明書」を添付する必要がある。例えば、生命保険料控除証明書、地震保険料控除証明書など、「源泉徴収票」に記載されている以外のところで支払った保険料があれば、「確定申告書」に添付する必要がある。
医療費控除適用を受ける場合は、先ほど説明したように、2017年分から、医療費の領収書を添付する必要がなくなり、「医療費控除の明細書」を添付することになった。ただし、医療費、薬品購入の領収書については、確定申告の期限から5年間保管しておく必要がある。
添付資料ではないが、「確定申告書」を作成する際に不可欠なものが、必要経費を証明する「領収書」だ。確定申告の作業を開始する際に最初に行うことが、必要経費に該当する「領収書」を集め、整理することである。
以上の資料がそろった段階で、「確定申告書」、収支内訳書、青色申告決算書を作成する。作成後は、資料を添付して、各税務署の窓口へ持参もしくは郵送するか、e-Taxを使って、管轄の税務署に送信する。
税務署が受理すれば、基本的には手続きは完了となる。ただし、内容に不備などがあれば、税務署から電話や通知が来て、修正が必要となる。その際、帳簿、領収書などの書類が必要になる場合があるので、すぐに対応できるように準備しておくとよい。
国税庁では現在「国税電子申告・納税システム(e-Tax)」を使った確定申告を推奨している。納税者は税務署に行く手間が省け、税務署にとっても事務処理を軽減できるためである。
2019年1月からは、電子申告(e-Tax)が簡便化され、マイナンバー方式でe-Taxを行う場合、税務署に「電子申告・納税等開始届出書」を提出する必要ない。マイナンバー方式を使う電子証明書は、オンラインによる申請・届出について、本人であることを電子的に証明するもので、マイナンバーカード(個人番号カード)にその情報が格納されているためだ。
現在は、スマートフォンからe-Taxで確定申告ができるようになっているので、さらに納税者にとっては利便性が向上している。
確定申告の注意点
確定申告を行ううえで、最も注意すべき点は、帳簿の整理である。
確定申告に記載する数値は、収入と支出の累積、そして各控除の金額である。収入と支出について、帳簿に毎日記帳していれば、特に問題はない。帳簿をスムーズに記帳するには、領収書、通帳の記帳を基にできれば毎日、少なくとも毎月整理していれば、確定申告前に慌てることはない。
各控除については、控除を証明する資料(領収書、控除証明書など)を保存しておいて、確定申告の際に、確定申告書にそのまま金額を記載すればよい。
必要経費をクレジットカードで支払った場合は、明細書を保存しておく必要がある。最近は紙の明細書ではなく、パソコンやスマートフォンで電子明細として受け取るケースが多い。このような場合は、やや煩雑かもしれないが、できれば毎月ダウンロードして、プリントアウトしておくとよいだろう。
帳簿や領収書などの資料がそろった段階で、事業収入の合計、科目ごとの支出の合計を出す。時には、合計額と帳簿の合計額が合致しないこともあるだろう。そのような場合は、月ごとの合計額を一つ一つチェックして、間違いを探すことになる。場合によっては、領収書の金額を確認する作業も必要になる。
なお、確定申告をすべき人が行わなかった場合は、ペナルティが科される。確定申告をしないままでいると、税務署から指摘があり、期限後申告をしなければならない。その際に、納税額のうち50万円までは15%、50万円を超える部分に対して20%の無申告加算税が課される。ただし、税務署から指摘される前に、納税者自らが期限後申告を行った場合は、無申告加算税は5%になる。
また、所得税を納めるべき人が、期限までに納めなかった場合は、延滞税が課される。延滞税の金額は、年度や状況によって異なるので、詳しくは国税庁のホームページで確認しよう。
結果的に確定申告を全く行わないでいると、無申告加算税と延滞税の両方が課されるだけでなく、還付金を受け取ることもできず、医療費控除なども適用されなくなる。悪質な所得隠しがあった場合は、さらに重いペナルティが科される。無申告で課税逃れと判断されれば、納税額の40%の重加算税が課される。
「納税は国民の義務である」という前提に立てば、このような措置は当然だと言える。確定申告の必要がある人は、期限内にきちんと行うようにしよう。