副業をしているサラリーマンや個人事業主は確定申告の必要があるが、条件次第では不要になるケースが存在する。逆に不要ではあるものの、確定申告したほうが税金の還付が受けられておトクになるパターンにも注目したい。確定申告する人はどのような人なのかを解説する。

確定申告に関するQ&A

確定申告,必要,不要
(画像=PIXTA)
Q


そもそも確定申告はどんな手続きなの?

確定申告とは、1月1日から12月31日までの1年間得た所得(収入から経費や控除を差し引いた金額)の税額・還付金を計算し、税務署に申告する手続きのことである。所得税や消費税、贈与税、相続税などが対象になる。ちなみに、法人税の確定申告は、「事業年度開始日から事業年度終了日」という期間になるため、必ずしも1月1日から12月31日とはならない。

確定申告とは、1月1日から12月31日までの1年間得た所得(収入から経費や控除を差し引いた金額)の税額・還付金を計算し、税務署に申告する手続きのことである。所得税や消費税、贈与税、相続税などが対象になる。ちなみに、法人税の確定申告は、「事業年度開始日から事業年度終了日」という期間になるため、必ずしも1月1日から12月31日とはならない。


Q


確定申告をする人はどんな人?

個人事業主(フリーランス)や法人の経営者、副業をしているサラリーマンが当てはまる。厳密に言えば「所得を得て納税の義務が発生した人全員」だが、サラリーマンや公務員など企業に申告を代行してもらえる人や、一定の条件を満たした人は申告義務が免除される。

個人事業主(フリーランス)や法人の経営者、副業をしているサラリーマンが当てはまる。厳密に言えば「所得を得て納税の義務が発生した人全員」だが、サラリーマンや公務員など企業に申告を代行してもらえる人や、一定の条件を満たした人は申告義務が免除される。


Q


サラリーマンになってから確定申告の経験がないけど大丈夫なの?

問題はない。なぜなら企業側が「年末調整」という形で、税務署に従業員分の税額を申告しているからだ。所得税の納税も、源泉徴収という形で従業員の給与から差し引いて、企業が毎月支払っている(一部例外あり)。

問題はない。なぜなら企業側が「年末調整」という形で、税務署に従業員分の税額を申告しているからだ。所得税の納税も、源泉徴収という形で従業員の給与から差し引いて、企業が毎月支払っている(一部例外あり)。


Q


収入と所得の違いは?

収入は「控除や経費を引く前の金額」、所得は「控除や経費を計算した後の金額」である。税金の計算では所得を用いるため、計算時には注意が必要だ。ちなみに「年収」は「1年間の収入」で、控除や経費を引く前の金額である。

収入は「控除や経費を引く前の金額」、所得は「控除や経費を計算した後の金額」である。税金の計算では所得を用いるため、計算時には注意が必要だ。ちなみに「年収」は「1年間の収入」で、控除や経費を引く前の金額である。

確定申告が必要な人とは?

「給与収入が2000万円を超えたサラリーマン」や「株取引で一定の条件を満たした人」、「個人事業主」などは、確定申告が必要だ。

●給与収入が2000万円超や2ヵ所以上から発生しているサラリーマン

サラリーマンのうち、給与所得に関する確定申告義務が生じるパターンは、主に2つある。

1つ目は、企業から支払われる給与収入が2000万円以上のサラリーマンである。とはいえ、国税庁の「令和元年分民間給与実態統計調査」によると、給与所得者の総数約5255万人のうち給与が2000万円を超えたのは約27万5000人と0.5%にすぎず、ほとんどの人は当てはまらない。

2つ目は、2ヵ所以上から給与収入を得ているサラリーマンだ。なぜなら、年末調整を受けられるのは「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出した企業からの給与(主たる給与)のみで、その他の企業からの給与(従たる給与)は年末調整できないからである。ただし、従たる給与の所得額が20万円以下の場合は申告不要なので、副業したい人は覚えておこう。

●株取引で一定の条件を満たした人

株取引で譲渡所得を得た人も確定申告が必要になる。条件は次のとおりだ。

・主たる給与がある状態で譲渡所得を20万円以上得たとき
・主たる給与がない状態で48万円以上(基礎控除の額)の譲渡所得を得たとき
・上場株式等に係る譲渡損失の損益通算および繰越控除を適用するとき

ただし株取引の場合、次の口座を使った取引のときは確定申告しなくてもよい。

・源泉徴収ありの特定口座を利用して取引を行っていたとき
・NISA口座を利用して非課税で取引を行っていたとき

源泉徴収なしの特定口座や、一般口座での取引の場合は申告が必要になるので注意したい。

株取引にかかる税金は「申告分離課税」が適用されるため、所得税率とは別枠で計算を行う。もし株式の売買益ではなく、「配当所得(株の配当金など)」を得た場合は、確定申告をするかどうかを納税者自身が選択するケースがある点も心に留めておこう。

●個人事業主(フリーランス)や法人

個人事業主(フリーランス)や法人の事業で所得が出たときは、確定申告が必要になる。具体的には「事業収入-経費-各種控除」が黒字となったときだ。

逆に基礎控除などの各種控除で所得が0円になれば、確定申告の必要はない。ただし後述する赤字経営が続いているときや、契約先から源泉徴収されているときは、確定申告したほうがよいケースもある。

●その他

ここまで紹介した人以外にも、次に当てはまる人は確定申告が必要になる。

・副業の不動産所得(家賃収入など)や投資益、貸し付けなどで20万円以上の所得を得た人
・不動産売買で譲渡所得を得た人
・400万円超の公的年金を受け取っている人
・災害減免法によって源泉徴収税額の徴収猶予や還付を受けた人
・課税対象となる保険金を受け取った人
など

一般的なサラリーマンでも副業や投資が身近になってきたからこそ、「自分は確定申告が必要かどうか」を確認し、納税漏れがないようにしたい。

具体的に確定申告が不要な人とは?

確定申告が不要な人は、確定申告を代行してもらっていたり、所得が基礎控除以下だったりする人だ。

●年末調整を受けているサラリーマン

年末調整を受けているサラリーマンは、企業側が所得税の計算や納税を行うため、自分で確定申告する必要はない。還付金があるときも、勤務先が口座への振り込みも対応してくれる

所得税額がいくらか気になるときは、勤務先が発行する源泉徴収票をチェックしよう。

●公的年金が400万円以下の人

400万円超の公的年金等の収入があるときは確定申告が必要だが、400万円以下、源泉徴収の対象、公的年金等以外の所得が20万円以下という3条件がそろっている場合は不要になる。

●所得が基礎控除(48万円)以下の人

所得税の対象になる所得が基礎控除の48万円以下だったときは、確定申告の必要がない。あくまで所得で計算するため、もし収入が48万円以上でも「経費を差し引いた所得額が48万円以下」なら不要だ。

またサラリーマンの副業で従たる給与に当てはまる場合は、基礎控除を差し引いた後の所得が20万円以下なら、所得があっても確定申告が免除になる点も覚えておこう。

<個人事業主>
・売上(収入)45万円-基礎控除48万円=課税所得0円で確定申告なし
・売上(収入)120万円-経費80万円-基礎控除48万円=課税所得0円で確定申告なし

<副業サラリーマン>
・売上(収入)100万円-経費40万円-基礎控除48万円=課税所得12万円だが、20万円以下なので確定申告なし

確定申告をしたほうがお得な人とは?

確定申告の義務が免除されているものの、確定申告をすれば還付金が受け取れるケースがある。

●年間の医療費が10万円を超えた人

1年間に支払った医療費が10万円を超えると、医療費控除を受けられる分だけ税金が安くなる。計算式は次のとおりだ。

医療費控除額=(支払った医療費-給付金・保険金など)-10万円or所得総額の5%のどちらか少ないほう

最高控除額は200万円だ。「生計を一にする配偶者やその他親族」の医療費も対象になるため、家族や親戚の分もまとめて申告することをおすすめする。

また、セルフメディケーション税制の対象になる薬の購入費が1万2000円を超えたときは、超えた部分のうち8万8000円まで控除できる。ただし医療費控除かセルフメディケーション税制のどちらかしか選べないので注意したい。

>国税庁|セルフメディケーション税制について

●寄付やふるさと納税を行った人

以下の法人・団体へ寄付したときは特定寄付金として扱われ、一定の寄付額を雑損控除として所得控除できる。

・国や地方公共団体
・公益社団法人・公益財団法人およびその他公益を目的とする事業を行う法人・団体
・独立行政法人や自動車安全センター、日本赤十字社
・社会福祉法人
など

計算式は次のとおりだ。

寄付金控除=「その年の特定寄付金の合計」もしくは「その年の総所得金額等の40%」の低いほう-2000円

ふるさと納税を行った場合も、「寄付額2000円を超える金額×所得税の税率」の金額だけ所得控除できる。控除の上限額は納税者の給与収入額や家族構成によって変わるので、目を通しておこう。

なお、ふるさと納税のワンストップ特例制度を利用している場合は、確定申告をしなくても所得税の還付や寄付金控除が受けられる。

>総務省|ふるさと納税ポータルサイト

●住宅ローンを組んだ人

住宅ローンを組んで自分や家族のための住居を購入・リフォームしたときは、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)が受けられるため、確定申告によって税金を安くできる。しかも一度確定申告してしまえば、翌年度以降は年末調整で対応可能だ。

ただし適用には一定の条件が必要になるため、国税庁のホームページなどで調べてから申告しよう。

●事業で赤字が続いている人

個人事業主で赤字が出ている場合は、確定申告することで還付金を受け取れるかもしれない。

青色申告事業者は「赤字の繰越損失」によって、事業赤字を最長3年間繰り越せる。具体的に言うと、赤字分の金額を翌年度以降の黒字と相殺(控除として差し引き)することが可能だ。

・2020年:50万円の赤字で所得税0円
・2021年:120万円の黒字の場合、前年度の赤字50万円を差し引いて70万円にできる

ただし白色申告事業者は、赤字の繰越損失はできないため注意したい。

●年末調整を受ける前に退職した人

サラリーマンの中には年度途中で退職する人もいるが、そうした人は確定申告をしたほうがよい場合がある。なぜなら年末調整がされないため、そのままでは税務署に正しい納税額が伝わらないからだ。

特に退職してから年末までに新しい仕事に就かない場合は、前職で源泉徴収されていた分だけ還付金を受け取れる可能性がある。

また、退職金が出ていてなおかつ「退職所得の受給に関する申告書」を提出していないときは、確定申告によって払いすぎた税金が返ってくるかもしれない。

ちなみに転職した場合は、前職分の源泉徴収票を転職先に提出することで、前職の所得を含めて年末調整してくれる。

●副収入での所得が20万円以下の人

「サラリーマンの副業で20万円以下の所得の場合、確定申告の必要がない」と解説したが、20万円以下でも取引先が源泉徴収を行っていたときは、確定申告で還付金が返ってくる。

源泉徴収されるものとして、原稿料や講演料、士業関係に支払う依頼料などが挙げられる。詳細は国税庁のホームページで確認しよう。

>国税庁|No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは

住民税の確定申告は所得0円でも必要

所得0円の場合、所得税の確定申告は必要ないものの、「住民税の申告」を行わなければならない。

本来、確定申告や年末調整を行うと、市区町村の役所にも連絡が行く。その内容を基に次年度の住民税が計算される。つまり税務署で確定申告していないと、役所が所得や納税の実態を把握できなくなる。

所得税が0円でも住民税がかかったり、各種非課税・優遇制度が適用できなくなったりするため、住民税の申告は忘れないようにしよう。

確定申告はいつ行えばよいのか

個人事業主や副業で所得を得ている人の確定申告は、2月16日~3月15日の間に行う。2020年分は4月15日まで受け付けるなど例外があるが、原則は3月15日と覚えておこう。所得税以外の税申告時期については以下のとおりだ。

 申告する税の種類  申告期限(原則)
 消費税  翌年の3月31日まで
 贈与税  2月1日~3月15日
 相続税  相続開始を知った日から10ヵ月以内

なお法人税や法人地方税、法人の消費税等など法人が支払うべき税金は、事業年度終了から2ヵ月以内が原則になる。

確定申告の仕組み

確定申告は以下の表の流れで進んでいく。仕組みを理解し、スムーズに手続きを行おう。ここでは個人事業主や副業サラリーマンの例を見ていく。

 確定申告の仕組み・流れ  概要
 ①帳簿付け  日々の取引内容・金額を記録
 ②必要書類の作成  損益計算書(収支内訳表)や貸借対照表などの作成
 ③確定申告書の作成  必要書類や帳簿を基に作成
 ④確定申告書の提出 ・所轄の税務署へ直接提出または郵送
・e-Taxなどで電子申請
 ⑤税金の納税または還付金受け取り  振替納税やe-Tax、クレジットカード、金融機関、税務署窓口などで納税

帳簿付けは手書きでも電子データでも問題ない。7年間の保存義務があるので、なくさないようにしておこう。

必要書類や確定申告書の用紙は国税庁のホームページからダウンロード可能だ。もしくはクラウド型会計ソフトについているテンプレートを利用しよう。

確定申告をしなかった場合に課せられるペナルティ

期限内に確定申告をしなかった場合は、「追徴課税」として税のペナルティが発生する。悪質さが認められると刑罰になる可能性もあるため、確定申告は正しく行おう。

ただし、自分で誤りに気づいて修正申告を行えば、ペナルティは軽くなるため、気づいた時点での修正をおすすめする。

●過少申告加算税

申告した課税所得が本来よりも少なかった場合に課されるペナルティが過少申告加算税である。追加で納める税金の10%、50万円を超える部分は15%を支払わなければならない。

●無申告加算税

期限内に確定申告を行わなかった場合に課されるペナルティが無申告加算税である。追加で納める税金の15%、50万円を超える部分は20%を支払わなければならない。

●重加算税

仮装や隠匿など意図的な所得隠しが認められたときに課されるペナルティが重加算税である。過少申告加算税での発覚は35%、無申告加算税での発覚は40%に代えて支払わなければならない。

●延滞税

期限内に税金を納められなかった場合に、実際に納付するまでの日数に応じて課されるペナルティが延滞税である。

原則として納期限翌日の2ヵ月間は「年7.3%」もしくは「延滞税特例基準割合+1%」のいずれか低い割合、2ヵ月以上経つと「年14.6%」もしくは「延滞税特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合になる。

確定申告を効率よく行うためのポイント

日々の記帳や取引データの整理など、多大な労力が発生するのが確定申告の大変な部分である。ここからは少しでも確定申告を効率よく行うためのポイントを紹介する。

●支払いをクレジットカードなどにして明細を管理しやすくする

事業関係の支払いをクレジットカードなど明細で残るものにすると、確定申告書やその他必要書類を作成するときに管理しやすい。具体的なメリットは次のとおりになる。

・日時や金額、購入商品などを記録できる
・クレジットカードのポイントを利用すれば費用削減につながる
・支払日が集約されてキャッシュフロー管理がやりやすい

クレジットカードは「個人用」と「事業用」に分けると、さらに支払い・購入履歴の管理がしやすいのでおすすめだ。

●領収書などは捨てずに保管しておく

経費計上で使用する領収書などは、捨てずに保管しておこう。日付やジャンルに応じて分けておくと、後でわかりやすい。

特に個人事業主は、所得税率や国民健康保険料などの高さから「いかに適切かつうまく節税できるか」が、手元に残る資産に大きな影響を与える。

●クラウド型の会計ソフトを使用する

クラウド型の会計ソフトを使用すれば、項目を入力するだけで帳簿付けから確定申告書の作成まで可能になる。さらに電子データとして過去の取引を保存できたり、日々の請求書を発行できたりと、普段の事業経営をサポートしてくれるのも強みだ。

有料プランを利用すれば、電話やチャットでの相談や無制限のデータ登録などの便利なサービスを受けられる。主なクラウド型会計ソフトは次のとおりだ。

・freee(フリー)
・弥生会計オンライン
・マネーフォワードクラウド

●税理士に依頼する

「経理作業が苦手だ」、「会計ソフトの操作が難しい」と感じる場合は、記帳から確定申告手続きまで税理士に任せてしまうのが最も確実な方法だ。

顧問税理士として契約すれば、適切な節税方法や経営についてのアドバイスも受けられるだろう。事業規模が大きくなるほど、専門家によるサポートの恩恵も大きくなる。

自分は確定申告すべきなのか事前に確認しよう

サラリーマン・事業者ともに「自分(自社事業)は確定申告すべきか」を事前にチェックしておこう。不要な確定申告作業に追われたり、逆に追徴課税となったりするなどのトラブルが防げるはずだ。

今回紹介したケースのように、「申告したほうがおトクになる人」もいる。正しい知識をもって、安心して副業や自分の事業に臨めるようにしてほしい。