確定申告には白色申告と青色申告の2種類あるが、白色申告は「経理作業が苦手な人」や「確定申告が必要なサラリーマン」におすすめだ。白色申告のやり方やメリット、青色申告との違いを解説する。

白色申告(確定申告)に関するQ&A

白色申告,確定申告,メリット
(画像=PIXTA)
Q


確定申告はどんな手続き?

確定申告とは、1年間で得た所得(収入から経費や控除額を差し引いた額)と、その所得にかかる税額を計算して税務署へ報告する手続きのことを指す。

確定申告とは、1年間で得た所得(収入から経費や控除額を差し引いた額)と、その所得にかかる税額を計算して税務署へ報告する手続きのことを指す。


Q


白色の確定申告とは?

白色の確定申告とは、青色申告の申請をしていない人が行う申告方法である。青色申告のように所得税法で定められた制度ではないため、便宜上白色申告と定義している。青色申告に比べて簡易的な帳簿付けや書類提出で済む代わりに、青色申告特別控除や赤字の繰越控除などの制度は利用できない。

白色の確定申告とは、青色申告の申請をしていない人が行う申告方法である。青色申告のように所得税法で定められた制度ではないため、便宜上白色申告と定義している。青色申告に比べて簡易的な帳簿付けや書類提出で済む代わりに、青色申告特別控除や赤字の繰越控除などの制度は利用できない。

白色申告のやり方

白色申告は、青色申告のように税務署へ事前通知を行う必要はない。翌年の3月15日までに確定申告書と収支内訳書を作成し提出する流れだ。ここでは白色申告の具体的なやり方のまとめを解説する。

●1年間の収入・支出・経費・所得を帳簿に記録する

白色申告の記帳は、事業を行った1年間の収入・支出・経費・所得に関する情報を記録する。ただし簡易帳簿による単式簿記でよいため、青色申告ほど複雑な記帳にはならない。

単式と複式の簡単な違いや一例は次のとおりだ。

<単式簿記>
1つの勘定科目を使って「目的」のみを記帳する。

 日付  勘定科目  金額  摘要
 2020年8月23日  仕入れ  50,000円  商品用

<複式簿記>
2つの勘定科目を使って「目的」と「お金が動いた結果」の2つを記帳する。

 日付  借方勘定科目  借方金額  貸方勘定科目  貸方金額  摘要
 2020年8月23日  仕入れ  50,000円  現金  50,000円  商品用

簡易帳簿を作成するには、入出金や取引した日付、取引の内容などの「日々の取引記録」を残しておかなければならない。

具体的には、以下5つの書類に記録して保存しておく。

 白色申告で使用する帳簿  概要
 現金出納帳  入出金を記録し帳簿と現金残高が一致するか確認するための帳簿
 売掛帳  取引先ごとに売掛金に関する取引状況を記録する帳簿
 買掛帳  取引先ごとに買掛金に関する取引情報を記録する帳簿
 経費帳  仕入れ以外の経費を勘定科目ごとに分けて記録する帳簿
 固定資産台帳  固定資産の名称・購入日・使用開始日・取得価額などを記録する帳簿

帳簿の提出義務はないが、事業年度の確定申告提出期限日の翌日から7年間の保存義務が生じる。確定申告が終わった後も、なくさないように保管しておこう。

●決算を行う

白色申告の決算作業は、年度末に1度行う。1年間の取引や在庫、固定資産の利用状況を見ながら、「棚卸表の作成」と「減価償却費の計算」をする。

 決算用の書類  概要
 棚卸表の作成  棚卸資産の数や金額を記録する一覧表
 減価償却費の計算  減価償却費1年分を計算する

決算で作成した棚卸表は、領収書や請求書などと同じく5年間の保存義務がある。大切に保管しておこう。

●収支内訳書と確定申告書を作成する

帳簿付けと決算作業が終了した後は、その記録を基に収支内訳書と確定申告書を作成する。収支内訳書とは、その名前のとおり1年間の収支をまとめ、所得を計算するための書類だ。

収支内訳書
収支内訳書
(出典:国税庁|確定申告書、青色申告決算書、収支内訳書等)

帳簿に記帳した収入(給与収入や売上など)・支出・棚卸の情報・減価償却費などを転載し、その年の所得を計算する。

収支内訳書を作成したら、最後に確定申告書を作成する。参考として、「確定申告書B」の書類を紹介する。

確定申告書B
確定申告書B2
(出典:国税庁|確定申告書、青色申告決算書、収支内訳書等)

帳簿や収支内訳書の作成をしっかり進めておけば、後は書面に従って必要な部分を埋めるだけで問題ない。

具体的な作成の手順は、国税庁が提供している「確定申告の手引」で確認できる。e-Taxやクラウド会計ソフトで作成する際に表示されるマニュアルに従って入力すれば、簡単に作成可能だ。税務署に出向いたり、電話窓口へ問い合わせたりしてもよい。

●税務署に提出・納税を行う

収支内訳書と確定申告書を作成した後は、税務署へ提出して納税を行うのみだ。主な納税方法は次のとおりだ。

・金融機関や税務署の窓口で現金納付
・預貯金からの振替納税
・e-Taxでの納付
・クレジットカードでの納付
・コンビニエンスストアでQRコードを利用して納付

ちなみにクレジットカードで納付すると、通常の買い物と同じくポイント還元が受けられる。資金繰りとしてポイントを活用するのもありだ。

●もし申告漏れが発覚した場合

確定申告を法定期限内に行わない、もしくは申告額が少なかった場合は、加算税という形で追徴課税のペナルティが課される。

ペナルティとなる追徴課税には無申告加算税や過少申告加算税、延滞税などがあり、本来支払う税金にプラスして支払わなければならない。

意図的な隠蔽や偽造による所得隠しが発覚したときは、最も税率が高い重加算税となったり、刑罰が科されたりなど、重大なペナルティとなる。確定申告は必ず行おう。

白色での確定申告のメリット・デメリット

白色申告で確定申告を行うと、次のようなメリットがある。

・帳簿付けが簡単で、経理作業が苦手な人や時間がない人でも対応しやすい
・提出書類が少なく、記載ミスや申告漏れを防ぎやすい
・事前の申請が不要なため労力がかからない

確定申告や経理作業の負担が少ない点こそ、白色申告の大きなメリットだ。とはいえ、法改正により以前より恩恵は少なくなっている。

2013年12月までは、前々年もしくは前年分の事業所得等の金額が300万円を超える場合のみ、記帳・帳簿の義務があった。しかし、2014年1月より白色申告でも保存が義務化された。「所得が少なければ帳簿付けが不要になる」という最大のメリットがなくなってしまったのだ。

ただ、それでも日々の経理作業にかかる労力や時間が少ないのは、白色申告の特徴と言えるだろう。

デメリットは、経理作業が楽になる以外のメリットがない点である。青色申告のような特別控除制度や節税関係の優遇は受けられない。

一方、青色申告は、申請の手間がかかる代わりに「青色申告特別控除」と呼ばれる所得控除や、「赤字の繰越損失」による黒字相殺など、白色申告では利用できないさまざまな制度を適用できる。特徴を以下でまとめた。

(メリット)
・最大65万円の控除を利用できる
・過去3年間分の赤字を所得控除として利用できる
・家族や親族への給与を経費計上できる

(デメリット)
・事前に「青色申告承認申請書」を提出しなければ適用できない
・複式簿記による記帳が手間になる
・提出する書類が白色申告より多い

白色での確定申告に向いている人・すべき人は?

白色申告に向いている人・すべき人は、主に経理作業が苦手な人やサラリーマンだ。詳細を見ていこう。

●経理作業が苦手な人

経理作業が苦手だったり、複式簿記による記帳が面倒だと感じたりする人は、白色申告が向いている。控除額は低くなり税額が上がるものの、記載ミスや意図しない所得隠しが防ぎやすくなるだろう。

●年度途中で退職した人

年度途中で退職して同年に再就職しなかった人は年末調整が受けられないため、確定申告が必要だ。このケースだと、源泉徴収として余分に支払っていた税金について、還付金が受け取れるかもしれない。また退職金を受け取る人で「退職所得の受給に関する申告書」を提出していないときも、確定申告で税金が返ってくる可能性がある。

青色申告は事業所得や不動産所得のみかつ申請が必要なので、必然的に白色申告になる。

●利益が出ていない赤字事業者

青色申告控除の恩恵は非常に大きいものの、あくまで控除なので、利益が出ていないとあまり意味がない。極端に言うと、利益0円や赤字の事業所は課税される所得が元々0円であるため、白色10万円控除も青色65万円控除も実質変わらないのだ。

事業の開始当初で利益が出づらかったり赤字を想定していたりするときは、白色申告のほうが手間もかからずに済むだろう。

●医療費控除などの所得控除を受ける人

医療費控除や寄付金控除、住宅ローン控除などは、条件を満たしていても企業側では年末調整に反映しない。これらの控除を受けたいサラリーマンは、自分で確定申告を行おう。控除額を申請するだけなら、白色申告で十分だ。

●年収2000万円以上など確定申告が必要なサラリーマン

一定の条件を満たしたサラリーマンは、自分で確定申告する必要があると法律で決まっている。次の条件に当てはまる場合だ。

・給与収入が2000万円を超えている場合
・2ヵ所以上から給与収入を得ている場合
・副業で20万円以上の所得がある場合
・一時所得や譲渡所得などが発生した場合
など

ほとんどのサラリーマンは青色申告の条件を満たしていないと考えると、白色での確定申告が一般的になるだろう。

確定申告書Aと確定申告書Bはどっちを使うべき?

一般的にサラリーマンは確定申告書A、個人事業主(フリーランス)は確定申告書Bという分け方になる。確定申告書AとBの違いは次のとおりだ。

確定申告書A:給与所得や公的年金、総合課税の配当所得、一時所得のみ記載欄がある 確定申告書B:事業所得や不動産所得を含むすべての所得の記載欄がある

確定申告書Aの書式は以下のとおりだ。

確定申告書A
(出典・加工:確定申告書、青色申告決算書、収支内訳書等)

確定申告書Aは事業所得などに対応できないため、個人事業主は利用できない。逆に給与収入しかないサラリーマンは、確定申告書Aのほうが作成も楽になるだろう。

帳簿の付け方や提出書類に違いは?

白色申告と青色申告では、普段の帳簿付けの方法や税務署に提出する書類に違いがある。まず、青色申告は収支内訳書ではなく、「青色申告決算書」を確定申告書と一緒に提出しなければならない。青色申告決算書は、「損益計算書」と「貸借対照表」のことである。

 青色申告決算書  概要
 損益計算書  1年間の収益と費用まとめた書類
 貸借対照表  決算日時点の財政状態(資産・負債・純資産)を表す書類

後述するが、55万円以上の青色申告特別控除を受けたい場合は、青色申告決算書を両方作成し税務署に提出する。10万円控除の場合は、損益計算書のみでよい。

続いて帳簿付けの違いだが、結論から言えば青色申告は、「正規の簿記の原則」に則った複式簿記で記帳する。

55万円以上の控除を受けたいときは、以下2つの帳簿付けと帳簿の保存が必須だ。

 主要簿  概要
 総勘定元帳  すべての取引を勘定科目ごとに記録した帳簿
 仕訳帳  ある取引について勘定科目を使って

主要簿のほかに、主要簿を補助する役割の「補助簿」も作成する。現金出納帳・売掛帳・買掛帳・固定資産台帳などが当てはまる。

途中で青色の確定申告に切り替えるには?

青色申告へ切り替えるには、青色申告書による申告をしようとする年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を税務署に提出する。

ただし青色申告できるのは、事業所得・不動産所得・山林所得のいずれかの所得のみだ。特にサラリーマンの副業で事業所得として認められるのは、「継続性がある事業」、「相応の人数を雇った事業である」などと判断される必要がある。

個人事業主に青色申告をおすすめする理由

サラリーマンの副業の場合は白色申告で対応できることも多いが、もし個人事業主になりたいと思ったときは青色での確定申告をおすすめする。その理由や青色申告のメリットを見ていこう。

●最大65万円の控除が受けられる

青色申告最大の恩恵は、最大65万円の控除が受けられる点だ。控除額は申告方法や提出方法によって、65万円・55万円・10万円の3種類に分けられる。

 青色申告の方法  控除額
 複式簿記・書面による青色申告  55万円
 複式簿記・e-Taxによる青色申告  65万円
 その他簡易簿記による青色申告  10万円

例えば、売上350万円・費用0円・基礎控除48万円の場合、青色申告65万円控除と白色申告10万円控除それぞれで計算すると、次の結果になる。

<青色申告>
・350万円-65万円-48万円=課税所得237万円
・237万円×所得税率10%-9万7500円=13万9500円

<白色申告>
・350万円-10万円-48万円=課税所得292万円
・292万円×所得税率10%-9万7500円=19万4,500円

あくまで単純計算ではあるが、同じ所得でも納税額に5万5000円の差が生まれている。

所得が195万円未満の場合は税率が10%から5%に下がるため、節税効果をより大きく感じられるだろう。

●赤字分を3年間繰越できる

青色申告では赤字を3年間繰り越せる「赤字の繰越控除」を適用できる。赤字が出た年の赤字分の金額を翌年以降に繰り越し、翌年以降の黒字と相殺して所得額を減らせるという制度だ。

100万円の赤字が出た翌年に300万円の黒字となった場合は、「300万円-100万円=200万円」となり、黒字200万円分で税金を計算する。

●自分の家族への給与を経費にできる

青色申告承認申請書に加えて「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出することで、自分の家族に支払う給与を経費として申請できる。対象は、「事業主と生計を一にしている配偶者および15歳以上の親族」に支払った給与だ。ただし、6ヵ月以上専従しているなどの条件がある。

確定申告書を税務署に提出する方法は?

確定申告を税務署に提出する方法は、「所轄の税務署に持参する」、「郵送する」、「e-Taxを利用する」の3パターンがある。

●所轄の税務署に持参する

収支内訳書(もしくは青色申告決算書)と確定申告書を、直接税務署の窓口に提出する方法である。1番確実な方法だが、確定申告の時期、特に3月は税務署が混み合うことが予想される。留意しておこう。

<税務署の開庁時間>
・月~金曜日の平日
・期間中の決められた日曜日や祝日(2019年分は2月24日と3月1日)
・8:30~17:00

仕事などで開庁時間内に行けない場合は、「時間外収受箱」へ投函するという方法もある。

所轄の税務署を調べたいときは、国税庁の「税務署の所在地などを知りたい方」のページで郵便番号や住所を入力すれば検索可能だ。

●郵送する

所轄の税務署へ確定申告関係の書類を郵送するのも1つの方法だ。時間に関係なく対応できるのがメリットである。確定申告書は「信書」にあたるため、郵便物もしくは信書として郵送しよう。また期限ギリギリの提出だと間に合わない可能性があるので、余裕を持って提出しよう。

●e-Taxを使用する

e-Taxの公式サイトで作成した確定申告書は、そのまま電子データとして提出できる。青色申告の場合は65万円控除が適用できる唯一の方法になる。

ただしマイナンバーカードの発行や事前受付などが必要になるため、あらかじめ準備しておかなければならない。

白色(青色)の確定申告書の帳票はどこで手に入る?

白色(青色)の確定申告書の帳票を手に入れるのは簡単だ。次の3つのうち自分がやりやすい方法で手に入れよう。

●国税庁の公式ホームページ

国税庁ホームページの「確定申告書、青色申告決算書、収支内訳書等」のページで、確定申告に必要な書類をすべてダウンロードできる。パソコンなどの端末からダウンロードしよう。

●税務署

税務署の窓口で確定申告関係の書類を受け取ることも可能だ。税務署では確定申告関係や税務関係の相談も受け付けているので、併せて利用することをおすすめする。

●クラウド会計ソフト

freeeや弥生会計オンラインなどのクラウド会計ソフトは、必要な項目を入力するだけで確定申告に必要なすべての書類の作成から発行までが可能だ。有料プランを利用すれば、アドバイスや作成サポートも受けられるので、おすすめだ。

将来的には青色申告も視野に入れておこう

白色申告は「単式簿記での記帳」や「提出書類の少なさ」から、青色申告より簡単に手続きが進む。そのため、事業を始めたばかりの人や経理作業が苦手な人、サラリーマンにおすすめの申告方法と言える。

とはいえ、作業が楽になる以外の恩恵が少ないのも事実だ。将来、事業が大きくなったときに、青色申告特別控除や赤字の損失繰越などの選択肢がないのは不安要素にもなる。今後事業を展開していく可能性がある場合は、青色申告も視野に入れておこう。