個人事業主の確定申告の方法には、青色申告と白色申告の2種類がある。青色申告には、節税につながるさまざまな特典があると聞いたことがある人もいるだろう。今回は、青色申告のメリットやデメリット、2020年分の確定申告からの変更点などを紹介する。

青色申告に関するQ&A

確定申告,青色申告,メリット
(画像=PIXTA)
Q


そもそも確定申告、青色申告とは?

確定申告は、1月1日から12月31日までの1年間の所得額から所得税額を計算して、翌年の確定申告期間に申告や納税を行う手続きだ。個人事業主が確定申告をする場合、青色申告と白色申告の2種類がある。青色申告には、白色申告にはないさまざまなメリットがある。

確定申告は、1月1日から12月31日までの1年間の所得額から所得税額を計算して、翌年の確定申告期間に申告や納税を行う手続きだ。個人事業主が確定申告をする場合、青色申告と白色申告の2種類がある。青色申告には、白色申告にはないさまざまなメリットがある。


Q


青色申告のメリットとデメリットは?

青色申告では、最大65万円の青色申告特別控除が適用でき、一定の要件を満たす親族に支払った給与を経費扱いにできる。純損失の繰越しや繰戻しができる点もメリットだ。一方、青色申告は事前に申請手続きが必要で、記帳や帳簿の作成が白色申告に比べて難しい点がデメリットと言える。

青色申告では、最大65万円の青色申告特別控除が適用でき、一定の要件を満たす親族に支払った給与を経費扱いにできる。純損失の繰越しや繰戻しができる点もメリットだ。一方、青色申告は事前に申請手続きが必要で、記帳や帳簿の作成が白色申告に比べて難しい点がデメリットと言える。


Q


青色申告と白色申告の違いは?

青色申告は、事前に税務署に申請して承認を得なければならない。白色申告は届出が不要だ。また、帳簿の付け方にも違いがあり、白色申告は単式簿記、青色申告で65万円や55万円の特別控除を受けるためには複式簿記で帳簿を付ける。

青色申告は、事前に税務署に申請して承認を得なければならない。白色申告は届出が不要だ。また、帳簿の付け方にも違いがあり、白色申告は単式簿記、青色申告で65万円や55万円の特別控除を受けるためには複式簿記で帳簿を付ける。

確定申告の方法は青色申告と白色申告の2種類

個人事業主が確定申告をする場合、申告方法には青色申告と白色申告の2種類がある。両者は、帳簿付けの仕方や事前申請の有無などさまざまな点で異なる。

青色申告と白色申告の違いは後ほど詳しく述べるが、まずは確定申告が必要になるのはどんなケースなのか、青色申告を選択できるのはどんな人なのか、確定申告の基礎について確認しておこう。

・確定申告が必要になる人とは?

個人事業主やフリーランスの場合、所得額から所得控除額を引き、所得税率を掛けて配当控除額を引いたときに残額があれば、基本的に確定申告が必要になる。

会社員は、年末調整で課税関係が完了すれば確定申告は不要である。ただし、年間の給与収入額が2000万円を超えるなど、一定のケースでは会社員でも確定申告をしなければならない。

・青色申告を選択できる人とは?

青色申告で確定申告ができるのは、不動産所得や事業所得、山林所得のいずれかの所得がある人だけである。これらの所得がない人、例えば給与所得しかない会社員は、青色申告をすることはできない。

青色申告のメリット

青色申告には、白色申告にはないさまざまなメリットがある。以下では、青色申告のメリットについて紹介する。

・青色申告特別控除を適用できる

所得税を計算する際、税率を掛ける前の所得額から青色申告特別控除として最大65万円を差し引ける。税率を掛ける前の金額が減ることになり、税負担が軽減できる。

・青色事業専従者給与を必要経費にできる

配偶者などの親族に支払った給与のうち、一定の条件を満たす給与は青色事業専従者給与として必要経費にできる。対象となるのは生計をともにしている15歳以上の親族だ。給与を経費として計上できれば、税率を掛ける前の金額が減って結果的に節税につながる。

・貸倒引当金を計上できる

貸倒引当金とは、取引先の企業が倒産して資金の回収ができなくなり、貸倒れとなった場合に備えて事前に引当金として計上するものである。青色申告者の場合、一定額の貸倒引当金を計上して必要経費として扱うことが認められている。

・純損失の繰越しと繰戻しができる

純損失の繰越しとは、事業で出た赤字を翌年以降最大3年間繰り越せる制度である。翌年以降に黒字だった場合、前年から繰り越した損失と当年の利益を相殺でき、結果的に所得額が減って税負担が軽くなる。

純損失の繰戻しとは、その年に生じた損失額を前年に繰戻し、前年の所得と相殺できる制度である。前年が黒字だった場合、前年の所得と相殺することで所得税の還付を受けられる。

・減価償却の特例を適用できる

通常、固定資産の取得価額を経費に計上する場合、何年間かに分けて費用計上する。この考え方を「減価償却」といい、耐用年数に応じて減価償却費を計上していく。そのため、取得価額をある年にまとめて経費計上することは原則としてできない。

しかし青色申告者の場合、少額減価償却資産の特例によって30万円未満であればその年に一括して費用計上できる。利益が大きかった年にまとめて費用計上できれば節税につながる。

青色申告のデメリット

青色申告には多くのメリットがある一方で、以下のようなデメリットもある。

・事前の届出が必要で手続きに手間がかかる

青色申告で確定申告をするためには、事前に開業届と青色申告承認申請書を税務署に提出しなければならない。白色申告ならこのような手続きは不要だ。手続きに手間がかかる点が青色申告のデメリットと言える。

・白色申告に比べて帳簿付けが難しい

青色申告のメリットの一つとして、青色申告特別控除を受けられる点を挙げた。控除額の種類は65万円、55万円、10万円の3種類だが、節税効果が大きい65万円や55万円の特別控除を受けるには複式簿記で記帳しなければならない。白色申告で求められる記帳方法は単式簿記であり、それに比べて複式簿記は帳簿付けが難しい点がデメリットである。

青色申告の申請手続き

確定申告を青色申告で行うためには、事前に申請手続きが必要になる。

・開業届の提出

開業届とは、新たに事業を開始したときなどに提出する書類である。青色申告で確定申告をするためには、開業届を提出していなければならない。用紙は国税庁ホームページからダウンロードでき、事業の開始日から1ヵ月以内に税務署に提出する。

・青色申告承認申請書の提出

青色申告承認申請書とは、青色申告の承認を受けるために税務署に提出する書類である。開業届と同様、用紙は国税庁ホームページからダウンロードできる。

青色申告承認申請書は、確定申告をする年の3月15日までに税務署に提出しなければならない。提出期限を過ぎると、その年の確定申告は青色申告ではなく白色申告になるので注意が必要だ。ただし、その年の1月16日以降に新たに事業を開始した場合、事業開始日から2ヵ月以内に提出すればよい。

青色申告で必要な帳簿の種類と保存期間

確定申告を青色申告でするためには、決められた帳簿を作成して一定期間保存しなければならない。帳簿の種類や保存期間を正しく理解し、青色申告者としての義務を守ることが大切である。

・必要な帳簿の種類

複式簿記で記帳する場合、以下の7つの帳簿が必要になる。

● 総勘定元帳
● 仕訳帳
● 現金出納帳
● 売掛帳
● 買掛帳
● 経費帳
● 固定資産台帳

一方、単式簿記で帳簿付けをする場合は、これらのうち総勘定元帳と仕訳帳を除く5つの帳簿を作成すればよい。

・帳簿の保存期間

青色申告者に対しては、以下のとおり帳簿および書類の保存義務が課せられている。作成した帳簿は、保存期間が経過するまで大切に保管しなければならない。

確定申告を青色申告で行う場合の申告方法

確定申告の手続き期間は決まっているため、青色申告で確定申告をする場合も申告期間内に手続きを終えなければならない。以下では、提出方法や必要書類も含めて、青色申告の申告方法を紹介する。

・申告期間

1月1日から12月31日までの1年間の所得額をもとに所得税額を計算し、翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告を行う。ただし、2月16日や3月15日が土日祝日にあたる場合は、その次の平日が確定申告期間の初日または最終日となる(2020年分は緊急事態宣言の発令により4月15日まで延長)。

なお、青色申告者の場合、期限までに申告をしない年が続くと青色申告の承認自体を取り消されてしまう。

・提出方法

提出方法は、確定申告書や添付書類を税務署に持参する方法や、郵送して提出する方法がある。電子申告であるe-Taxの場合は、確定申告書の入力、作成から提出までを自宅のパソコンで完結できる。ただし、e-Taxを利用するには事前の申請などが必要だ。

・必要書類

青色申告で確定申告をする場合には、以下の2つの書類を提出する。

・確定申告書B
・青色申告決算書

生命保険料控除などの所得控除の適用を受ける場合は、控除証明書などもあわせて提出する。手続きの際は、マイナンバーカードなどの本人確認書類の提示または写しの提出も求められる。

確定申告書Bの記入方法

確定申告書Bの用紙は、国税庁ホームページからダウンロードできる。

・第一表

確定申告書B

第一表には、収入や所得、所得控除の金額を記入し、それらの金額をもとに税額を計算して記入する。

・第二表

確定申告書B

第二表では、所得の内訳や家族への給与の支払い状況などを記入する。

青色申告決算書の記入方法

確定申告で提出する青色申告決算書の用紙は、国税庁ホームページからダウンロードできる。

・1ページ目

青色申告決算書

1ページ目には、売上金額や売上原価、経費などを記入する。貸倒引当金などの各種引当金、準備金や青色申告特別控除の欄も記入したうえで、最終的に所得額を求めて記入する。

・2ページ目

青色申告決算書

2ページ目には、1ページ目で記入した項目についてより詳細な内容を記入していく。売上金額や収入金額を月別に記入し、給料賃金や専従者給与の内訳などを記入する。

・3ページ目

青色申告決算書

3ページ目では、主に減価償却費の計算に関する事項を記入していく。減価償却資産の名称を記入するとともに、決められた耐用年数に応じて減価償却費を計算して記入する。

・4ページ目

青色申告決算書
1ページ目から3ページ目が損益計算書であるのに対して、4ページ目は貸借対照表である。資産の部と負債・資本の部の科目ごとに金額を記入する。

税制改正による変更点

2020年分の所得に関する確定申告から、青色申告に関する制度が一部変更になった。近年では、確定申告に関する規定が税制改正によって変わることが多いので、最新情報を確認してその年のルールに従って手続きしよう。

・控除額の種類が2種類から3種類に変更

2019年分の所得の確定申告までは、青色申告特別控除の種類は65万円と10万円の2種類だった。しかし2020年分の所得からは、特別控除の種類が65万円、55万円、10万円の3種類に変更されている。

・65万円の控除を受けるための条件が追加

65万円の控除を受けるために、これまでは以下の条件を満たす必要があった。

・正規の簿記の原則で記帳(複式簿記)
・申告書に貸借対照表と損益計算書などを添付
・期限内申告

しかし、今後はこれら3つの条件に加えて「e-Taxによる申告または電子帳簿保存」という条件を満たさなければ、65万円の控除は受けられない。従来の3つの条件のみを満たす場合、控除額は55万円になる。

青色申告で確定申告を簡単に行う方法

青色申告で確定申告をするためには、日々記帳を行って帳簿を作成しなければならず、何かと手間がかかる。以下では、手間を少しでも省いて効率的に青色申告を行うための方法を紹介する。

・会計ソフトを使う

会計ソフトを使えば、入力した金額をもとに自動的に集計されて申告書などの書類が作成できる。手作業で帳簿付けをしたり、金額を集計したりするよりも作業負担を減らせるだろう。

・税理士に依頼する

面倒な記帳作業や申告書類の作成作業を、すべて税理士に依頼するという選択肢もある。税理士費用はかかるが、税金の専門家である税理士に任せれば、正確かつミスなく確定申告を終えられる。

確定申告はメリットが多い青色申告がおすすめ

確定申告を青色申告で行うためには、開業届と青色申告承認申請書を提出する必要がある。最大65万円を控除できる青色申告特別控除や貸倒引当金の計上、純損失の繰越しや繰戻しなど、さまざまなメリットがある点が青色申告の大きな魅力だ。税負担をできる限り抑えるためにも、青色申告で確定申告をすることをぜひ検討してみてほしい。